<令和6年度神奈川県高等学校野球秋季県大会:東海大相模3- 2川和>◇14日◇3回戦◇サーティーフォー相模原球場
夏の甲子園ベスト8の東海大相模は150キロ右腕の福田拓翔投手(2年)、中村龍之介外野手(2年)、金本貫太内野手(2年)など経験者が多く残り、5年ぶりの夏春連続出場が期待される。
県大会3回戦で最初の試練が訪れた。川和の143キロ左腕・濱岡蒼太投手(2年)との対戦に、東海大相模の原俊介監督も苦戦を覚悟していた。打ち崩すことは望めないが、なんとか先制点を取って主導権を握りたい東海大相模は2回裏、金本がレフトへの二塁打。二死三塁から捕手の悪送球で幸先よく1点を先制する。しかし3回裏、一死二塁のチャンスで二塁走者が捕手の牽制でアウトになり、二死から四球で走者が出塁したが、これも投手・濱岡の牽制に誘い出され、アウト。2つの走塁ミスでチャンスを潰した。原俊介監督はこの場面について
「これは私の責任です。作戦で動かしすぎてしまい、ミスを招いてしまった。結果としてな相手に流れを行かせてしまうプレーになった」
直後、4回表、一死一、三塁から野選で同点に追いつかれ、5回表も二死から適時打を打たれて、勝ち越されてしまう。5回裏には一死満塁のチャンスを作りながらも併殺でチャンスを潰し、6回裏には一死二塁の場面で頼みの3番中村を迎えた。川和は中村に備えてショートは二塁ベースの後ろについて、シフト通りに打球が飛び、ショートゴロ。一発のある金本にはライトがフェンスの後ろについて、金本が打った打球もフェンス手前のライトフライとなり、これもシフトがはまった形となった。原監督は「極端なシフトをとっていてさすがでした」と脱帽。川和の平野太一監督は東海大相模打線を抑えるために、春から夏にかけての10試合ぐらいの映像を集めたり、実際に見たりして、弱点、打球方向をインプットし、選手たちに伝えたという。
川和の緻密な戦略、濱岡の快投に、東海大相模は8回表までリードを許す苦しい試合展開だった。それでも逆転できたのはエース福田の投球が大きいだろう。
夏の神奈川大会、甲子園での投球と比べると少し変化があった。夏の福田はどこかスピードを意識している感じがあった。だからリリースポイントが乱れて、140キロ後半が出ていてもコマンドが悪く、球数が多くなり、燃費が悪い投球だった。だが、川和戦で登板した福田はうまく脱力して、安定したリリースポイントで投げるので、再現性が高い投球ができていた。ストレートのスピードは常時139キロ〜145キロと140キロ後半を叩き出す試合と比べれば控えめに感じるが、指先にしっかりと力が伝わっており、伸びのあるストレートで次々と三振を奪う。川和打線は福田対策としてマシンを160キロに設定して練習しており、速球の目慣らしをした状態で臨んだ。それでも空振りを奪う福田のストレートの球質の良さは非凡なものがあった。打者の手元で鋭く切れる120キロ中盤のスライダーのコンビネーションで4回6奪三振無失点の好投。その4回はすべて三者凡退。数分で守りを終えた。福田は「テンポよく投げ込んで、守りの時間を短くすれば、その分、攻撃に集中しやすくなり、逆転できると思いました」と意識してテンポを早めた。
チームの勝利のために、試合の状況を読んだ投球ができるようになったのも大きいだろう。今回の投球には福田自身も手応えを感じている。
「夏までは結構前に飛ばされていたんですけど、ファールにできたり、空振りにできたのが良かった。また直球が低めにもしっかりと決まったことで、変化球も有効に使えてました。リリースの瞬間で100の力を入れるイメージに投げるようになってから疲労もなく投げられています」
追う東海大相模は8回裏には犠飛で追いつき、9回には佐藤淳人内野手(2年)の右中間を破る長打で一塁走者が生還し、サヨナラ勝ちとなった。
甲子園が終わって1ヶ月ほどだが、精神面で進化が見える。春まで福田は甲子園に出たい、150キロを出したい、同世代の投手に負けたくないなどの気持ちが強かった。ただ、甲子園出場してからはその思いがなくなった。
「勝たないと甲子園で投げることができないですし、勝てるためにはどうすればいいか。相手のことや、スピードのこだわりなどが消えて投球に集中できています」
原監督は新チーム始動は遅くなったものの、大舞台の甲子園を3試合できた経験のほうが大きいと語る。逆転勝利を呼び込んだ福田の投球は甲子園まで勝ち進んだ経験が生きていた。