今年の高校日本代表候補合宿で首脳陣、スカウト、メディアから注目が集まったのは、高蔵寺(愛知)の芹澤 大地投手だ。全国舞台、地方大会の経験がなく、露出が少ない投手としてベールに包まれた存在だった。

 ストレートは最速145キロで、平均球速138.31キロだった。不調だった昨年11月の三重県選抜の試合と比べると、ストレートは走っており、5球に1球は唸りを上げるようなストレートを投げている。冬は身体づくりに取り組み、68キロから73キロへ増量したという成果が見えた。

 140キロ中盤でも伸びのある球質は、大学生に負けていないものがある。春の時点での145キロは優秀で、夏には常時140キロ後半を出してもおかしくない。しっかりと指にかかったストレートは高確率で空振りを奪うことができる。

 気になったのはエネルギーの消耗が大きいフォーム。少しでもフォームにブレがあると、回転があまりかかっていない棒球になってしまう。このボールでもある程度、空振りを奪っていたが、強豪校にはしっかりと弾き返される可能性が高い。投げるスタミナは強豪校の投手と比べるとあまりなく、球速のばらつきが多かった。

 今の芹澤は去年のようなノーマークの状態ではなく、徹底マークされる。ピッチングにメリハリをつけることも必要だろう。

 課題だった変化球は少し進歩が見える。120キロ台の縦のスライダー、チェンジアップを投げ込み、空振りを奪う確率も増えてきた。まだ甘い変化もあり、タイムリーを打たれる場面もあったが、直球以外のコンビネーションで抑えることができるようになったのは成長点だといえる。

 中堅校相手には、当たり前のように二ケタ奪三振を積み重ねることはできるだろう。それでもまだ強豪校相手には、1試合通して投げられる投球術、ペース配分はできないだろうと感じた。一瞬の最大出力は右投手を含めても世代上位だが、最終的には、大量失点をしてしまう危うさがある。

 芹澤にとって幸運なのは、飛び抜けた潜在能力を高く評価されて、愛知県選抜、高校日本代表候補を経験できていること。それまでの相手とは格段にレベルが上がった打者たちと対戦したことで、課題が見えたはずだ。2つの選抜チームは愛知、東海地区の高野連の推薦がなければ、選ばれない。愛知高野連の関係者たちも能力を高く評価し、成長してほしい思いがあるのだろう。

 本人は進路について「いろいろ選択肢がある」と明言を避けたが、夏までに心技体がさらに磨かれ、プロでやる覚悟ができれば、もっと変われる投手だと思う。最後までその進化を追いかけ続けていきたい。