<令和7年度 春季高等学校野球大会 南部地区予選:川口青陵9-8慶応志木>◇10日◇1回戦◇川口市営球場

 慶応志木は昨春の地区予選で、強豪・大宮東に完封勝利を挙げ、県大会に出場。さらに夏も4回戦に進出し、勢いを見せている。経験豊富な好左腕・正野 敬二郎(3年)は大宮東に完封勝利を挙げ、今年のチームの中心である。昨春のような躍進を狙ったこの春だったが、地区予選初戦で終えることになった。

 相手は打線に力のある川口青陵。頼みのエース・正野が先発となった。

 正野は昨秋からやや投球モーションが変わった。

「夏以降調子を崩していて、トレーナーに捻転について見てもらってだいぶ良くなった」(正野)

腕の位置もやや下がった印象だが、このあたりフォームは試行錯誤している。

 共に打力のある両校だけに試合は序盤から激しく動く。

 先制したのは慶応志木であった。

 初回、一死から2番・藤田京輔(3年)、3番・勝呂海里(3年)の連打で一死一、二塁とする。ここで4番・永澤昊大(3年)が右中間へ2点タイムリー三塁打を放つと、続く正野の内野ゴロの間にさらに1点を追加し3点を先制する。

 川口青陵も正野に襲いかかり、2回表、この回先頭の尾崎海斗(3年)、続く渡辺皓太(3年)の連打で無死一、二塁とすると、さらに6番・渡辺柚希(3年)の犠打が内野安打となり無死満塁とチャンスが広がる。続く中林朋己(3年)の内野ゴロの間に1点を返すと、8番・荒井大陸(3年)のタイムリーで2点目。さらに9番・鈴木恵太(3年)、1番・佐々木龍之介(2年)の内野ゴロが共に相手のエラーを誘うなど、一挙4点を奪い逆転に成功する。

 1点を追う慶応志木は4回裏、この回先頭の永澤、続く正野の連打などで無死一、三塁とする。6番・矢吹健太郎(3年)の内野ゴロが相手のエラーを誘い4対4の同点に追いつく。

 その後も点の取り合いに。5回表、川口青陵が4番・尾崎のタイムリーで同点とすれば、慶応志木もその裏、3番・勝呂のタイムリーで再度1点を勝ち越す。

 1点を追う川口青陵は6回表、慶応志木の2番手・住友大志(3年)に対し、相手バッテリーミスで同点とすると、7回表にはこの回先頭・尾崎の二塁打を足がかりとし、6番・渡辺柚、7番・中林、9番・鈴木の3長短打などで3点を奪う。

 3点を追う慶応志木もその裏、先頭・松田陽貴(3年)のヒットを足がかりとし、3番・勝呂、4番・永澤、6番・矢吹の3安打で2点を返し、すぐに9対8まで詰め寄る。

 慶応志木は最終回にも、この回の先頭・永澤のセンター越え二塁打を足がかりとし、一死三塁と絶好の同点機を迎えるが、後続が倒れ万事休す。

 両校合わせて29安打の壮絶な打撃戦は川口青陵が1点差で逃げ切った。

 川口青陵はこの日4安打の4番・尾崎を中心に15安打と打線が振れている。

「高めとか内側に入ってくるボールを開いて迎えにいかないように。ベルトや太ももあたりにゾーンを限定して。直球、変化球にかかわらず、目付をした所を振りに行こうと。失点は想定内です。うちは打てないと負けると思ってやっているので」

と、橋本監督は初回の3失点にも動じない。投げては渡辺柚が14安打を浴びるも四死球は2と球数を112球に抑え完投。次は昨秋、敗れた浦和が相手だが、その時尾崎は不在だった。

「そのリベンジも兼ねているので、次も過信することなく一つずつ」

と、尾崎は静かにリベンジに燃える。

 一方の慶応志木も昨夏も経験する上位1〜5番を中心に3長打を含め14安打を放ったが、9回裏1点をもぎ取ることができなかったのは夏への課題か。また、守備面でも失点に絡む失策が多く出てしまっただけにここも修正点であろう。

「守備は課題です。最終回はまだゴロGOの練習をしていなかったので致し方ない」(石塚監督)

と、この2点は受け入れていた。

 課題は投手陣。エース正野が無四球も10安打を浴びた。

「4、5点勝負だと思っていたが、まさかここまで打たれるとは」(石塚監督)

と、これは想定外だったようだ。正野はこの日序盤やや変化球中心で入ってしまったのが、もったいなかった。右打者の内角直球を見せてからの変化球の組み立てになってからは、そこまで失点を許していないだけに夏へ向け再度バッテリーで話し合いが必要かもしれない。本人は

「この代は投手陣次第。直球の球速も含め精度を上げたい」

と、夏への奮起を誓った。