<令和7年度近畿学生野球連盟 Ⅰ部春季リーグ戦 第2節1回戦:和歌山大3-2奈良学園大>◇11日◇大阪シティ信用金庫スタジアム

 今春の甲子園で初出場ながら1勝を挙げた沖縄のエナジックスポーツ。彼らの代名詞となったのが「ノーサイン野球」だ。

 攻撃中に監督がサインを出すのではなく、選手同士でアイコンタクトをして多彩な攻撃を仕掛ける。斬新な戦いぶりは高校野球ファンの間でも話題になった。

 エナジックスポーツと同様にノーサイン野球を実践している大学が関西にある。それが昨年の全日本大学野球選手権にも出場した和歌山大だ。

 両チームの教科書となっているのが当時の中野泰造監督が率いていた東亜大。1991年に創部した山口県の地方大学を三度の日本一に導いた手法である。

 野球観を共にする和歌山大の大原 弘監督はエナジックスポーツのノーサイン野球を見て、「沖縄にこれが入ったのか」と衝撃を受けたそうだ。

 特に印象に残った場面というのが秋季九州大会準々決勝の壱岐(長崎)戦。壱岐の投手が二段モーションで投げている姿を見て、「ホームスチールができる」と直感した。

 すると、4回裏に三塁走者の平良 章伍内野手(3年)がホームスチールを成功させる。この一連のプレーを見て、「かなり鍛えられている」と大原監督は感じたそうだ。

「僕らも常にそういうところを見ていて、『この秒数だったら、いける』というのがあるんです。調べてみたら、その投手は前の試合で8、9回を投げているんですけど、両方とも三者凡退だったんですよ。セットポジションの入りとかそういう情報はないはずなんですけど、何球か見ていけるとなったのは凄いなと思いました」

 さらに甲子園で大原監督が感心したプレーが1回戦の至学館戦で先制点を挙げた場面。2回裏に一死満塁から8番・久高 颯投手(3年)がライト線への犠飛を放ったが、この場面で三塁走者、二塁走者だけでなく、一塁走者も二塁に進塁していた。

 大原監督は中野氏と会った時にこのプレーについて話をしたことがあるという。仮にこの場面で至学館の外野手が二塁でアウトを狙いに行った場合、二塁走者は三塁でスライディングせずにもう1点取りに行くという走塁を徹底しているそうだ。「ここまでやっているのか」と驚かされた大原監督はこのプレーの見逃し配信をミーティングに活用。選手の前で監督自ら解説した。

「他でもノーサイン野球をやっているところはありますが、浅いんですよ。監督がサインを出さないのがノーサインみたいな。でもあそこは鍛えられています」と称賛を惜しまなかった大原監督。同じ感覚で野球をやっている大学野球の指揮官を感嘆させるほど完成度の高いノーサイン野球をエナジックスポーツは披露していた。