4日から開幕した春季東京都大会。一次予選を勝ち抜いた48チームを含めた112校が参加する戦いに、特別な思いを持って出場した都立高校がある。板橋区に校舎を構える大山だ。同校は長く連合チームで出場を続けていたが、23年秋から単独校として出場を果たすと、今春の一次予選初戦で12年ぶりの白星を挙げた。その勢いは止まらず、代表決定戦でも石神井を9対7で下して創部初となる都大会出場を決めたのだ。

 迎えた春季大会初戦は西東京の強豪・国士舘に2対12で大敗。初出場初勝利とはならなかったが、選手たちにとっては大きな一歩となった。

 現在、野球部の部員数減少が深刻な問題となっている。また、東京都で進む私学無償化は公立校にとっては逆風だ。しかし、大山はそんな状況に逆手を打つかのように今春からスポーツ推薦を導入するなど、学校として野球部強化を推し進めている。

 単独校出場から1年半で躍進を遂げた理由はどこにあるのか。着実に成果を挙げている都立校の取り組みに迫った。

“やらされる野球”からの脱却

△馬場監督

 快挙を支えたのはチームを指揮する馬場 拓己監督だ。今年29歳を迎える若き指揮官は、都内の名門・片倉で顧問兼助監督として4年間在籍した。都立高校で40年以上監督を務める宮本 秀樹氏のもとで才を磨き、3年前に大山への転任したことで同校の野球部に就任。当時は連合チームでの出場だったが、「中学生のグラウンドをまわったり、練習が始まる前に河川敷で声掛けをさせてもらったり、そういった積み重ねが少しずつ実っていった」と就任初年度の夏から単独チームとして出場を果たしている。

 春季大会のベンチ入りメンバーは14人と少ない中でも、工夫をこらして練習に取り組んできた。また、片倉をはじめ小山台新宿など都立の実力校が大山で合同練習を行うこともあるという。馬場監督も「強豪と練習する中で、形になっていった。周囲の方々のお力添えがあってこそだと思う」と感謝しながら都大会までたどり着いた。

 そんな指揮官がテーマに掲げているのが「やらされる野球」からの脱却。選手自らが主体的に練習に取り組むことで「自分たちの野球」を体現することを目的としている。正捕手の岡田 聖梧選手(3年)は、馬場監督の指導方針に影響された一人だ。

「最初は中学で野球を辞めて、ほかの部活に入ろうとしていました。それでも馬場先生からの勧誘を受け練習に参加した際、選手が楽しそうにプレーしている姿に魅了されたんです。人数が多いわけではないけれど、もう一度野球をやりたいとそこで思えました。今こうしてプレーできているのも馬場先生のおかげです」

 主将の矢口 祐太選手(3年)も「自分が入った当初は2人だったが、とてもいい雰囲気で練習に取り組んでいた」と入部を決意。試合前練習では背番号1桁の選手が球拾い用のカゴを運ぶ姿も見られた。「学年関係なく、全員が色々な作業を行うので、人間性の部分も確実に伸びている」と、限られた人数ならではの成長を語っていた。

「野球部から学校を盛り上げたい」

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