<春季愛知県優勝大会:渥美農5―4愛知>◇12日◇1回戦◇豊橋市民球場

 昨秋は一次トーナメントで愛工大名電を下している愛知。今春は東邦と同じブロックとなり競り負けたものの、2位トーナメントでは松蔭に完封勝ちで県大会進出を果たした。渥美農は東三河地区の一次リーグは5勝と1位通過で県大会進出を決めたが、リーグ1位校の4校で争った決勝トーナメントでは豊橋中央にコールド負け。力のある相手に対して、どう臆せずに戦っていけるのかということが課題にもなった。

 お互いに、試合を重ねていきながらチーム力を上げていきたいところでもある。一昨年の夏の愛知大会でも当たっており、その時は愛知が、接戦を制している。渥美農は、その時のメンバーも最上級生となっている。先輩の悔しさをリベンジしたい渥美農と返り討ちしたい愛知。互角の戦いが予想される試合である。

 渥美農加藤 翔投手(3年)、愛知は舩戸 亜久里投手(3年)が先発。ともに背番号は11を背負っているが、主戦投手と変わらない存在ということで、大事な初戦を任された。初回の渥美農は二死二三塁から満塁と好機を作るが、ここは舩戸投手が踏ん張る。その裏に愛知も安打を放つが、加藤投手が力で抑えた。

 渥美農打線は、各打者の思い切りがよく、よくバットを振り込んでいるなという印象だった。それが表れたのは中盤だ。3回は4番中村 駿選手(3年)の中越二塁打で先制する。そして、4回からは愛知のマウンドは1番をつけた高島 完汰投手(3年)となったが、渥美農の打線はそこをしっかりと捉えた。

 二死二三塁の場面で3番松井 耀司主将(3年)が右中間へ二塁打して2者を還す。さらに4番中村が申告敬遠となり、続く高橋 旭捕手(3年)が左中間へ二塁打してさらに2人を還して5対0と点差が広がる。流れは渥美農ペースとなった。

 それでも愛知は、「何とか食い下がっていこう」という姿勢を崩さなかった。

 それが功を奏して5回に、相手失策もあり、3点を返す。さらに、7回にも四球を選び当たっている山田 裕真捕手(3年)の安打などで二死一三塁となり、4番濵井 和義選手(3年)の中前タイムリー打で1点差まで追い上げた。

 愛知としては、6回からリリーフとていた左腕・福住 拓郎投手(3年)が3イニングを一人の走者も出させないパーフェクトリリーフをしていた。打線も追い上げていただけに、試合の流れとしてはむしろ愛知に傾きかかっているのではないかとも思わせる展開だった。

 ただ、渥美農の加藤投手も「スライダーを合わされていっているような感じがしたので、ストレート中心の組み立てに変えた」というように、投球構成を変えていきながら、あと1点を与えない粘りの投球で何とか1点を守り切った。自身は試合後には「93点です」と微妙な自己採点をしていた。そのマイナス7点に関しては、「5回の3点の取られ方がよくなかったので、その分のマイナスです」と笑っていた。とは言いながらも、高橋捕手とよく話しながら、投球構成を変えていくあたりの冷静さもあった。

 渥美農の岩本 拓郎監督は、「ウチは本当に野球の好きな子が多くて、よく練習するんですよ。バットも徹底して振っていますから、打線も積極的に打って行けているのだと思います。好きな野球をみんなが一生懸命にやっています」と目を細める。岩本監督としては、2本柱のもう一人で1番をつけている三浦 大知投手(3年)を使わないで勝てたことも大きかったようだ。

 愛知の飛田 陵佑監督は、「前半リードされていながら、よく追いかけたとは思いますが、届きませんでした。序盤の2回、3回と先頭打者を出していて、一死二塁まで進められていたのですけれども、あと一本が出ませんでした。このあたりは今後の課題です。相手は繋がりましたが、ウチは単発だったということです。その差が出てしまいましたと振り返る。また夏に向け「1年生も20人以上入ってきて、全部員で今のところは76人です。全員で競い合って、さらにレベルを上げていって、接戦をものにできるようにしていきたい」と、前向きな姿勢を示していた。