オフシーズンに入り、各チームが春に向けた準備として、トレーニングに注力するようになってきた。一方で、野球教室を開催するところも、年々増えている。野球人口減少がささやかれる野球界。高校野球も例外ではなく、ここ数年は部員数の減少が止まらず、日本高等学校野球連盟の調査では、10年連続で減少中。2024年は3学年で127,031人という結果が出ている。
高校野球の次の100年のため、あらゆる学校で野球教室を通じて、少しでも野球の魅力を子どもたちに伝えようとしている。そのなかでも15日、千葉日大一が主催して開催した野球教室はひと味違う。元プロ野球選手、青松慶侑さんが参加しているのだ。
青松さんは、上宮太子から2004年のドラフトで千葉ロッテから7位指名を受けてNPB入り。2015年には1軍で初本塁打を記録するなど、現役引退する2016年までロッテ一筋でプレーしてきた。つまり、青松さんと千葉日大一の接点は全くない。だが、指揮官・若山大輔監督と知り合い、「ただ野球を教えるのではなく、高校生が次世代の子どもたちに教えるっていうコンセプトがすごいいいな」と思ったところから、「何か手伝えたら」ということで、全国でも珍しい1つの高校が主催して元プロ野球選手を呼ぶ野球教室が実現した。
実際、青松さんが語ったように、当日は千葉日大一の選手たちが子どもたちと一緒になって野球の楽しさを味わっている様子は多く見られた。
グラウンドで開いた野球教室はおよそ3時間。3歳~5年生までの約80人の子どもたちは、1種目あたり20分間バッティングや玉入れなど4種目に参加。選手たちは種目ごとに分かれて子どもたちと交流していた。
選手たちに話を聞くと、「小さい子どもにはマンツーマンで接しました」と考えて動けば、「『次はいけるよ』って励ましの声をかけるようにしてきました」と盛り上げつつ、子どもの目線になって考えて声掛けをする選手もいた。
元々、千葉日大一のグラウンドは小学校の校庭でもある。だから子どもと交流することが時々あるとのこと。実際、付属の小学校出身のマネジャーは、「お兄さんのような身近な存在だった」というほど。それほどの距離感だからこそ、即座に考えて行動ができたといっていい。
若山監督はこの野球教室を通じて、「生徒が成長するきっかけになるかな」ということも願っていたという。だから監督の狙い通りといったところだが、実は青松さんも「結構楽しみなんです」と高校生の成長を期待しているようだ。
「どういう風に子どもに対して接するのか。指導者に言われてから動くんじゃなくて、どうやって選手たちが主体的になって動くのか。そこが結構楽しみになんですけど、前回以上に良かったと思います」
主将である秦幸平外野手(2年)も「野球の楽しさを知ってほしいと思ってやりましたが、2年生が主導になって考えて動けたところは成長できていた」と満足の様子。今回の野球教室は成功に終わったといっていいだろう。
今後もこうした野球教室は開催する予定のようだが、青松さんは野球人口減少の現実について、こう語る。
「野球は無くならないと思いますが、気軽に始めるのが難しい現状だと思います。ただ、その状況は僕らでは解消できないことなので、できることは野球の楽しさを子どもたちに伝える。野球に興味を持ってもらうことだと思います。ですので、こんな形で高校生が子どもたちに野球を教える取り組みが全国でやれたらすごくいいと思いますし、ロールモデルになると思います」
また、1人の社会人としても、野球教室の重要性を語る。
「地域貢献をしている感覚を持ちながら野球をする機会があるってことも、すごくいいことだと思うんです。社会に出れば、目の前の仕事や課題に手一杯になりますけど、その先には社会貢献が繋がっている。だから、そこから見たときに自分の役割は何なのか、考えないといけない。そうした社会を生きていく考え方は、普段の野球では実感を得ることはできない。なので、こうした経験は社会に出たときに良かった、と感じると思うんです」
野球界はもちろんだが、選手たちの成長のためにも、千葉日大一はこれからも野球教室を続けていくだろう。そしていつの日か、青松さんや千葉日大一の選手たちに教わった子どもたちが、野球界を盛り上げてくれることを心待ちにしたい。