<秋季東北地区高校野球宮城県大会:仙台育英2-0東陵>◇25日◇準々決勝◇石巻市民球場
仙台育英が準々決勝で東陵を下し、2大会ぶりの秋季東北大会出場に王手をかけた。0対0の6回に5番・土屋 璃空外野手(2年)の適時打で試合の均衡を破ると、8回には4番・川尻 結大捕手(2年)のソロ本塁打が飛び出し加点。投げては「背番号1」の左腕・吉川 陽大投手(2年)が9回4安打7奪三振無失点で公式戦初完投初完封勝利を挙げた。
仙台育英は今秋の県大会で初戦、2回戦と続けて井須 大史投手(1年)が先発しており、吉川は今大会初登板。この日は直球と得意球のカットボール、スライダーを駆使し、序盤は内野ゴロを、終盤は三振を量産してテンポよく投げ切った。走者を出しても三塁は踏ませない、圧巻の投球内容だった。
須江航監督は「ほぼ100点のピッチングをしてくれた」と背番号1を絶賛。「ここ数年は新チームが始まるときに『このチームのエースはきっとこの子だろうな』という子がいたけど、今年はエース不在。その中で吉川が好投して、『エースになりそうだな』と思いました。もう一回いい投球が続けばエース誕生、という感じがします」と期待を寄せた。
今夏の県大会は2年生以下の投手がメンバー入りできず、チームも決勝で敗れたため、新チームには近年はいた「甲子園経験投手」がいない。今春主力級の活躍を見せた吉川も例外ではなく、須江監督に「夏のジョーカー的存在」と言わしめながらもチャンスをつかめなかった。悔しさを味わった夏を経て変化したのが、野球の「取り組み」だ。
吉川は夏までを「自分がこれがいいと思っていたことがみんなの思っていることと違ったりしていて、責任感を持つ行動ができていなかった」と振り返る。練習に取り組む姿勢が緩いと感じた須江監督やチームメイトから苦言を呈されることもあったという。
それでも新チームになり心機一転、周囲の声に耳を傾け、朝早く練習入りして率先して準備に取りかかるなど姿勢を改めた。「変わるチャンスをいただいて、『背番号1』を背負ってからは責任感を持とうと思うようになり、この大会に臨んでいます」。期待ゆえの叱咤激励をしてくれた須江監督やチームメイトに成長を示す好投だった。
「夏までの吉川と今の吉川では取り組みが明らかに違う。取り組みがよくなるから結果がよくなる。偶然の結果が出ても過信にしかならないけど、今日の結果は自信にしていい」と須江監督。新エース最有力候補に名乗りを上げた左腕は「優勝を大きな目標として掲げつつ、一戦必勝で、チーム全員で勝つ」と次を見据えた。