行きつく形のバットがあるはず
そんな吉納、当時の練習方針のおかげもあり、東邦時代から木製バットを買う機会があったが、最初は「素材にはあまり興味を持っておらず、最初に買った素材が基本だと思って選び続けている」という耐久性に優れたメープルを採用している。
では何を基準にして、バット選びをしたのか。
「グリップエンドの形にはこだわりました。タイカップなどあらゆる形があると思うんですが、自分は指がかかっている感覚が好きなので、通常の形状のバット選ぶのが条件です。
高校野球だと、ある程度グリップエンドの形状は同じになると思うんですけど、木製バットはいろんな形状があります。ただ自分が行きつく形のバットがあるはずなので、自分で握ってみてどういうのが良いか。そこを決めたうえで、どのバランスが良いのか。飛ばせるバットじゃなくて、扱えるバットを選んでいます。
もし飛ばなくても、扱えるならコンタクトも飛距離も磨くことができると考えているので、振った感触も大事にしながら選んでいますし、そうした方が良いかなって思っています」
そうやって選んだ吉納の木製バットは、ミズノでオーダーした1本。元巨人の二岡智宏モデルをベースに加工を施した85cm、880gの1本だ。
「初めて使ったのが二岡さんのモデルだったのはありますけど、金属バットに近いようなバランスや、グリップエンドに指がかかった感じが好きなんです」というところから二岡モデルを愛用。そのうえで「ヘッドが立てられるように操作できる重さにしたかった」ということで、880gまで調整をしてもらったそうだ。きちんと自分の特性を考えたうえで、オーダーをしている。
ちなみに、もう一本、オーダーをしようか検討しているとのことで、「色んな人のバットを振ってみて『いいな』って思ったので、作ってみようか考えている」と、ヘッドをくり抜く「ダイナ加工」をした85.5cmのバットを作る予定とのことだ。
吉納が使っているミズノでは、ヘッドのくり抜き加工である「ダイナ加工」が2種類あり、およそ10gだけ減らす「ハーフ」、約20gほど減らす「フル」と段階がある。そのなかでも、吉納は10g程度減らす「ハーフ」加工を検討しているとのことだ。もしかすると、リーグ戦の終盤は、二刀流で戦う姿が見られるかもしれない。
最後のリーグ戦を戦っている吉納。もちろん、自身の進路もかかっている大事な時期だが、本人が考えているのは、春の忘れ物を獲りに行くことだ。
「春はリーグ戦を制しましたが、選手権では準優勝で終わり、日本一になれなかった。そのなかで秋はリーグ連覇、そして日本一を目指してチームは動いているので、それを達成できるように、1つ1つの勝利に自分が貢献できたらいいです。だから個人的には、勝利に貢献できる活躍をしたいです」
チームの掲げる目標を達成するには、吉納の1本がどこかで必要になるだろう。その時に結果を残し続けていけば、必然的に評価も高まるだろう。プレッシャーはあるだろうが、東邦時代には甲子園、早稲田大では日本代表と数多くの経験を積んでいる。きっと乗り越えられるはずだ。
本人いわく、「元々、物怖じしないので、そういう場面も落ち着いて楽しめている」という。スターにふさわしい強心臓と、信念をもって積み重ねてきた練習量によって作り上げられた吉納のバッティングに、これからも注目し続けたい。
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