高校時代はセンターを守っていた時期も チーム事情で他のポジションを守ったのが大きな経験に

そして清宮選手の守備。一塁手でありながらもかなり上手い捕球技術を持った選手でした。和泉実監督はチームを構成する上で、一塁の守備力を重視していました。打撃力が高い選手が守ることが多い一塁ですが、まずは一塁手は捕球技術が大事。そのこだわりは強かったです。

その清宮選手は2年春のみですが、センターを守っていた時期もありました。実際に春の都大会では4番センターでスタメン出場していました。

今まで短い距離のスローイングしか見たことがなかったので、センターを守った清宮選手のシートノックは聖光学院との練習試合で見ましたが、なかなかよかったことを覚えています。センターを任せた理由について和泉監督はこう語ります。

「清宮は一塁手だと思います。一塁の守備は本当に上手いですし、守備と攻撃のバランスを考えたら清宮は一塁。しかし清宮の他に伸びてきている一塁手が2人います。しかし彼らを出すとすれば清宮を他のポジションで起用しなければならない。そこで空いていたのがセンターでした。足はあの体型にしては速いし、肩も強いし、あいつはどのポジションでも守れる器用さがあります。そこでしばらくはセンターを守らせることにしました」

早稲田実業はどの選手でもその守備位置に固定ということはありません。たとえば、今年のドラフト候補に挙がる宇野 真仁朗内野手は現在ショートですが、セカンド、サードを守っていた時期があり、代表入りしてからはファースト。チーム事情で他のポジションを守るのが早稲田実のスタイルです。

もちろん日本ハムで専門的な指導を受けて、一軍で守れるほどの技術を身に着けたことは間違いありません。ただ早稲田実業時代から一塁以外にも守っていた時期もあり、出場のためならば、それを貪欲にこなせる姿勢があったからこそ、プロの世界でも適応できているかもしれません。

今年でプロ7年目。1年生ながら甲子園デビューを飾った2015年から9年も経ちました。当時は清宮選手が世代をリードしていましたが、今やヤクルトの村上宗隆選手(九州学院)がリードする存在です。今の清宮選手はようやく村上選手に対抗できる技術を身に着けました。ペナントシーズンも残りわずか。キャリアハイは22年の18本塁打ですが、それに迫る活躍を見せつつあります。

これから清宮選手の全盛期を迎えてほしいと思います。

*『主筆・河嶋宗一コラム グラカン!』は毎週日曜配信します。