試合レポート

嘉手納vs首里

2014.03.29

頼れる4番の一発で嘉手納が熱戦を制す

嘉手納vs首里 | 高校野球ドットコム

延長10回、3ランホームランを放つ嘉手納・大城 璃功

 シードの嘉手納と、一回戦で実力校である中部商に7対1と快勝した首里の戦いは、予想通り1点を争う好ゲームで延長へと突入。

 その直後だった。大きな当たりがレフトを襲うと打球はグングン伸び、柵の向こうの芝生席で跳ねる。それを確認しながら二塁ベースへ向かうその背中が頼もしく、かつ大きく見えた。

 新3年生、新2年生ともに、一年生中央大会で好成績を収めている首里は、近年では一番バランスが取れていると言ってもいいだろう。
 初戦の中部商戦では、4番佐久田英尚(さくだ・ひでたか)が、5打数3安打3打点。
 5番の仲宗根雄馬も4打数2安打1打点と、元気な中軸をはじめ11安打を集めて7点を奪えば、一年生中央大会準優勝投手の中真慶大(なかま・けいた)が7安打に抑えて完投するなど快勝でコマを進めてきた。

 対する嘉手納は、知花由樹大城璃功(おおしろ・りく)の破壊力抜群の二人と、當山富芳(とうやま・とみよし)桃原瑠希(とうばる・りゅうき)の左右両輪を代表するように、沖縄尚学美里工が選抜で留守の今大会の中では1、2を争うほど、投打のバランスが良い。そんな両者の試合はやはり、一進一退の攻防となっていった。

試合は初回、一死一、二塁で大城璃功が打席に入るとレフトへ運び嘉手納が1点を先制。
 首里も3回、二死三塁から仲宗根雄馬がレフトとセンターの間に落とすタイムリーで同点とした。

 グランド整備が終わった6回表、嘉手納はそれまで攻略に手こずっていた中真慶大に対し、大城璃功上地泰雅(うえち・たいが)、古謝 帝(こじゃ・てい)、古謝竜己(こじゃ・たつき)と圧巻の四者連続ヒットで2点を加える。
 なおも、一死一、三塁とピンチが続いたが、首里西岡侑亮(にしおか・ゆうすけ)をマウンドに送り後続を経つ。 そして、この試合の行方を左右する7回裏が両者を待ち構えていた。


嘉手納vs首里 | 高校野球ドットコム

タイムリーを放つ首里・仲宗根 雄馬

 2点を追い掛ける首里は7回裏、四球とヒットで一、二塁とすると、3番中真 樹(なかま・たつき)がセンター前へタイムリー。ここで嘉手納は先発の當山富芳を諦め、桃原瑠希をマウンドに送るが、四球で満塁とすると、3回に同点打を放っている仲宗根雄馬が4球目をスクイズ。

 三塁走者が生還し、かつ打者走者までも一塁に生きてなお無死満塁。
「(内野陣には)同点にしても良いからと言っていました。あそこは、さらにスクイズしてくるのかなとも思いました 」と、嘉手納の大蔵宗元監督が懸念した場面だったが、首里ベンチは強気の勝負を選択。

 しかしキャッチャーのファールフライに倒れると、桃原瑠希のエンジンに拍車がかかり、サードファールフライ、最後はライトライナーと、最大のピンチで迎えた3人に対し9球で1点も失うことなく首里の逆転を防いだ。

 そして試合は延長へ突入。
 冒頭で触れたように、4番大城璃功が「 高めから入ってくる甘いスライダー 」をフルスイングし、熱戦に終止符を打つ3ランホームランをレフトスタンドへ放り込むと、最後は桃原瑠希首里の反撃を抑えてベスト16へ進出した。

 敗れた首里だが3回まで6奪三振と力強いピッチングを見せた中真慶大と、6回途中からリリーフして9回まで死球とエラーのみに抑えた西岡侑亮、二度の同点を決めた仲宗根雄馬ら光る選手が多く、この悔しさが最後の夏への快進撃へと繋がることを予感させるチーム力を改めて示してくれた。

 2008年の春以来、主要三大会でのベスト4入りから長らく遠ざかっている古豪の完全復活は、決して遠くない。

(写真・文=當山 雅通)

 

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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