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センバツ優勝候補だった、中京大中京の今と覚悟

2020.04.19

センバツ優勝候補だった、中京大中京の今と覚悟 | 高校野球ドットコム
昨秋、明治神宮右大会を優勝した中京大中京

 緊急事態宣言が発出されて、いよいよ私たちの生活でいつもの日常が激変してしまった。自粛要請に従って、学校から生徒たちの姿が消えてしまった。もちろん、高校野球の強豪校とて同じである。

 昨秋には東海地区大会を制して、その後の全国の地区大会優勝校が集合した明治神宮大会でも優勝した中京大中京。前哨戦とも言える神宮大会で優勝したことで、この春のセンバツ大会では優勝候補の一角に上げられていた。そして、選手たちも印出太一主将は、「自分たちの目標は甲子園で優勝することです」と、言ってはばからないくらいに自信をもって春を待ち望んでいたはずだ。

 3月11日にセンバツ中止決定が発表されるまでは、当然のことながら選手たちはセンバツがあるつもりで開幕を目標に調整していた。2月29日の紅白戦では、注目のエース高橋宏斗君と、もう一人の投の柱として高橋源一郎監督が期待を寄せていた左腕の松島元希君も、期待以上の好調ぶりを示していた。さらには、新2年生の畔柳享丞君も、いい仕上がりぶりを披露していた。

 しかし、残念ながら甲子園出のセンバツ開催はなくなってしまった。
 「もちろん、中止決定が下された時は残念でしたし、選手たちも悔しかったと思います。私としても、何をどう伝えたらいいのか正直、悩みました。一つひとつ言葉を選んで伝えなくてはいけないと思いました」
 と、高橋源一郎監督に電話で答えてくれた。

 練習は3月11日以降も、切り替えて練習は短時間ではあるものの継続していたという。その時も、選手たちの意識の低下はなく、夏を見据えた新たな目標は掲げられたという。

 その後も15時に切り上げという形ではあるが、何とかグラウンドで練習することは出来ていた。しかし、4月3日に練習は止まり、学校も4月6日に時差入学式を行ったのみだった。そして、入部が決まっていた新入生たちは7~9日まで、時差で登校して、高橋監督と顔合わせはすることだけは出来たという。

 「それだけでも、少しは中京大中京の野球部員になったんだという意識にはなってくれたと思いますし、心構えは伝えられたとは思っています」

 中京大中京は毎年、新入生だけを集めて4月に2泊3日の合宿を知多半島で行い、そこで、今村陽一部長が、いわゆる”中京魂”を教え込んでいき、名門中京大中京野球部という看板を背負っていくのだという意識が育てられていくという。ただ、今年はそれも行うことが出来ない。

 高橋監督自身も、「週一回くらい、職員室に行って資料を整理したり用事をすませて、あとは在宅でやれることをやるだけ」ということのようだ。

 「もちろん、夏の大会はあるつもりで向っていきたいと思います。だけど、こんな状況ですから、最悪の事態も考えておかないといけないとも思います。その時に、選手たちに何をどんな言葉でどう伝えていくのがいいのか。そのことも考えておかないといけません。気持ちのしっかりした子たちですけれども、だけどやっぱりまだ高校生ですから」
 と、高橋監督自身も苦悩している。

「どういう形でもいいから、このチームで試合をさせてあげたい」
 最後に振り絞るようにそう伝えてくれた言葉に、思いが込められていた。

(取材=手束仁

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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