明石vs社
松原史弥投手(明石)
アンダースロー右腕・躍動!63年ぶりの近畿大会へ‼
近畿大会出場を懸けた3位決定戦は公立校同士の対戦。3試合連続の延長戦となった明石が、10回表に勝ち越し点を挙げ。社を振り切った。明石は1949年以来63年ぶりの近畿大会出場となる。
取って取られて、取られて取ってのゲーム展開。共に9回までに決め手がなく、気がつけば延長戦に突入していた。
10回表、投球数が150に近づいた社先発の谷口大空(3年)から、先頭の2番櫻井拳人(3年)がヒットを放った。3番栗林章平(2年)が送り、4番福山大貴(3年)がヒットで繋ぐ。
打席は5番舩山和馬(3年)。1ストライクからの5球目をライトへ打ち上げた。犠牲フライにするには、飛距離は十分で、櫻井が生還。これが決勝点になった。
投げては、4回からリリーフしたアンダーハンド右腕の松原史弥(3年)が好投。独特の浮きあがり気味の球が有効で、終盤にあったピンチも気持ちの強さで凌いだ。
「先発した山内(圭哉=2年)の球が、相手打線に合い始めていたので、早めの継投になったが、よく投げてくれた」と角野友昭監督。
特に象徴的だったのは、9回1死2塁で社が代打に近本光司(3年)を送った場面。準決勝でケガをしてこの日はベンチスタートだったが、近本は社で中軸を任される好打者だ。
谷口大空投手(社)
打順は下位で、守る明石サイドは敬遠も含め様々な選択肢がある場面。
タイムを取って伝令を送った角野監督は、「勝負」とナインに告げた。打たれてサヨナラゲームになっても良いので、思い切って勝負しなさいという意思を伝え聞き、キャッチャーの福山は松原にこう告げた。
「四球になっても良い。腕をしっかりと振って投げてこい」。
松原が投じた第1球。近本のバットが出てセカンドゴロになった。見た目は進塁打で走者を進められた形。一打サヨナラのピンチには変わりないが、腕をしっかりと振った松原にとっては最高の結果となった。
結局7番川居直人(3年)をレフトフライに打ち取り、延長に持ち込んだ明石。
勝ち越してもらった後の10回は、三者凡退に打ち取り、まるで優勝したかのようにナインは抱き合った。
「アンダースローにしたのは、この冬場。最初はコントロールが思うようにいかず、やめようかとも思ったが、教えて下さるコーチの方を信頼していたので」と話した松原。今の投球術を掴めたのは最近だという。
地面スレスレの位置から投げ込まれる独特の球は、打者陣にとっては滅多に練習できるものではない。キャッチャーの福山は松原の球を「揺れる」と表現する。
近畿大会で対戦する他府県の強豪も恐らく、面くらうだろう。
さて、この3位決定戦。今年の兵庫は近畿大会開催県で出場権を懸けた戦いであるが、普段ならば準決勝で負けた後のゲームで、夏へ向けてどんな意識で臨むかが大事な場になる。
準決勝のあと1日あった練習時間。勝った明石は、しっかりと切り替えて充実した練習ができていたという。
夏ならばあり得ない3位決定戦という場を勝った明石。一方で敗れた社は県大会で2度敗れた唯一のチームになる。
準決勝以降を勝ちきる難しさ。体力的にもここからが一番厳しい。これから夏まで2カ月あまり、この“2敗”という事実をどう感じて取り組んでいけるか。
スターティングメンバー
【明石】
4川原健吾、9櫻井拳人、7栗林隼平、2福山大貴、5舩山和馬、8池田圭吾、3久保周平、 1山内圭哉、6浦崎剛志
【社】
8吉田康祐 、6 田中大貴、9中島大志、5 藤井秀斗、7永尾典之、3小端智哉、4川居直人 、2恩庄遼斗 1谷口大空、
(文=松倉雄太)