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「ブルペンでは指導しない」元プロ日体大コーチの投球練習に対する考え方 vol.3

2021.02.14

 2月も中旬を迎え、高校野球界でも対外試合解禁に向け、実践的な練習が増えてきている時期だろう。

 今回はそんなオフシーズンに是非行いたいトレーニングや基本練習を、アマチュア球界で定評のある指導者に伺っていった。中学、高校球児に皆さんには是非参考にして欲しい。

 第3回目となる今回も日本体育大学の辻孟彦投手コーチにお話を伺っていく。プロ野球選手時代の経験、大学院体育科学研究科での知識を活かして、松本航(西武)、東妻勇輔(ロッテ)、吉田大喜(ヤクルト)、森博人(中日2位)といった投手をプロに輩出した辻コーチ。今回は「キャッチボール」をテーマにお話をいただき、またブルペンでの考え方についても語っていただいた。

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松本航、東妻勇輔ら3年間で4人の大卒プロ投手を輩出した投手王国・日体大が実践する投手トレーニング vol1

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「長距離走は必要?」元プロ日体大コーチが語る投手の基礎体力の重要性と練習メニュー vol.2

投手にとって一番の練習はキャッチボール

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日本体育大・辻孟彦コーチ

 辻コーチは、投手にとって一番の練習はキャッチボールだと断言する。
フォームの修正、改善においては、すべてキャッチボールの中で試行錯誤してくのがベストだと考え、反対にブルペンではフォームの課題は意識しないことを選手たちには伝えている。

「改善したい課題に対しては、すべてキャッチボールで意識するように選手には伝えています。実際にキャッチボールを撮影することもあり、キャッチボールが一番の練習です。
反対にブルペンは今できることをやるだけなので、練習では無く本番と思ってもらうようにしています。なので、僕もブルペンではフォームを指導しないようにしています。今できる全力を出し切るイメージです」

 また変化球においても、ブルペンだけで無くキャッチボールの中で曲がりやキレを確かることが大事だという。変化球はブルペンの中だけでしか投げない高校生も少なくなくかもしれないが、辻コーチは20、30メートルの距離で強く腕を振るな中で変化球を練習することを選手たちには薦めている。

「18.44m の距離だけでやってしまうと、曲がりや切れを意識し過ぎて腕の振りが緩んでしまう投手が多くいます。ブルペンの距離ならそれでも届きますが、20、30メートルの距離で変化球を投げると腕をしっかり振らないと届かないんです。
ブルペンを本番とするなら、キャッチボールは練習です。練習では投げずに、いきなり本番で変化球を投げている選手は以外と多いと思います。まず基本は腕の振りで、その後にストライクかどうかが大事です。その順番は間違えないようにしてほしいですね」

[page_break:練習に理由を持つことが大事]

練習に理由を持つことが大事

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 またキャッチボールでよく耳にするのが、山なりのボールを投げないようにするべきという言葉だ。特に遠投では斜め上に角度をつけてボールを投じるため、ブルペンでのピッチング動作に繋がらないといった考え方を持つ選手もいるが、辻コーチは遠投や山なりのボールで投げることは決して悪いことではないと力説する。

「僕は遠投力は大事だと思っています。バッティングでも遠くに飛ばす力などは同じですが、これは基礎体力と一緒です。特に中学、高校生の選手はできるだけチャレンジして、自分を伸ばしていてほしいなと思います。山なりのボールに関しても、脱力の意識や力加減を確認するために必要な練習になってきます。

 そもそも基礎体力、土台となるものがあった上で、フォームや技術的なところを学んだ方が後々絶対に高いレベルになってきます。なので技術だけに走りすぎないで、本当に基本的な遠くへ投げる、強いボールを投げるといった部分を考えることは大事だなと思います。それは大学1年生の選手も言ってるので中学、高校生はなおさらそうだと思います」

 反対に強いボールを投げる求めて、中距離での力を込めたキャッチボールを行う選手もよく目にするが、ここでも注意点が必要だ。元々肘が下がっていたり、横回転が課題の選手が其の練習ばかりを行うと逆に悪化する可能性もある。自分の課題に合わせて、メニューを考えることが何よりも重要だと辻コーチは語る。

「試合の時に成長していることが一番の目的で、練習はあくまでその過程でしかありません。結果を出すための過程が練習という意識を持って、練習が全てにならないように気をつけて欲しいなと思います」

 辻コーチが一例として挙げたのが、2年生の矢澤宏太選手だ。
投手と打者の二刀流に挑戦中の矢澤選手だが、投手としては最速149キロの速球が持ち味で来年は投手陣の柱として期待されている。そんな矢澤選手は、最近になり遠投を無くしてるというのだ。そのにも明確な理由がある。

「今まではどんどん遠投もさせていて120メートルくらい投げるのですが、体の開きが早いなど改善点がピンポイントで分かってる状態でした。来年から軸として投げて欲しいと思っているので、今は基礎体力を伸ばす遠投はいらずにフォームを修正する方向にシフトしました。
理由があれば僕はいいと思うんです。全員が遠投しろ、遠投するなというのは違うと思っていて、正しい練習は人それぞれ違うので、そこは勘違いしないようにして欲しいなと思います」

 プロ野球選手時代の経験、大学院体育科学研究科での知識をフルに活用する辻コーチ。プロ野球選手の輩出だけに止まらず、2017年には明治神宮大会優勝を果たすなど、近年の日本体育大には勢いがある。これからどんな選手が頭角を現すのか楽しみだ。

(取材・執筆=栗崎 祐太朗

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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