試合レポート

3年生エースの兄の力投に1年生外野手の弟の好守 都立多摩・毛塚兄弟の熱くやり切った夏の戦い【24年夏・西東京大会】

2024.07.14


毛塚陸斗(右)と弟の友絆(左)

<第106回全国高校野球選手権大会西東京大会:明大明治7-3都立多摩>13日◇2回戦◇コトブキヤスタジアム

【トーナメント表】夏の西東京大会 ここまでの結果

都立多摩は、3月までは部員は9人で、かろうじて単独チームで試合をしたものの、交代要員が1人もいない状況で戦った。秋の1次予選では1勝したものの、秋も春も敗れた試合は一方的な試合だった。エースで1番打者の毛塚 陸斗(3年)がチームを引っ張る。

4月には4人の1年生が入部した。その中に、毛塚 陸斗の弟・友絆もいた。この夏、友絆は背番号8を背負い、6番打者で試合に出た。相手の明大明治は、かつては甲子園大会に出場したことのある伝統校。今年の春季都大会は初戦で敗退したものの、郁文館と互角の試合をした。多摩には厳しい試合になること予想された。

今まで多摩のエース・毛塚 陸斗は時おりキレのいいボールを投げるが、長続きはしなかった。けれどもこの夏は違った。丁寧な投球で明大明治打線を抑える。部員が少ないだけに、全体のレベルが高いわけではなく、アウトにできる打球が安打になってしまうこともあったが、必死の守りで、毛塚 陸斗を助けることもあった。「頼もしく守ってくれたので、安心して投げることができました」と毛塚 陸斗は言う。

3回には無死二塁の場面で明大明治の1番・音羽 真優二塁手(2年)の中飛を、弟の友絆が好捕。二塁走者が飛び出し、併殺になった。「練習から頑張っている姿が、格好良かった。憧れです」と友絆は兄・陸斗について語る。友絆は兄・陸斗がいるからこそ多摩に進学した。そして高校生活では最初で最後となる兄弟で出場する公式戦を満喫するように兄弟とも、はつらつとしたプレーをみせた。

明大明治が3-0とリードした5回裏、多摩はこの回先頭の7番の増田 ひみ二塁手(3年)が四球で出塁すると、2人が送って三塁に進み、1番・毛塚 陸斗が右中間を破る三塁打を放って1点を返した。「狙い球のストレートを待っていたら打てました」と陸斗は言う。続く2番・飯塚 一哉遊撃手(2年)も左前安打を放ち、1点差に迫る。

7回裏には一死後1番・毛塚 陸斗が二塁打を放ち、2番・飯塚の犠打が投手の悪送球を誘い、陸斗が還り同点に追いついた。続く新井 凰太捕手(3年)が右前安打を放つと、明大明治は先発した背番号11の藤井 智寛に代えて背番号1の長谷川 獅音がマウンドに上がった。長谷川はエースとあって球威が違う。死球があり満塁になるものの二死。打席には6番打者で弟の毛塚 友絆が立った。友絆は二ゴロに終わり、多摩が逆転することはできなかった。

猛暑の中、投げ続けていた毛塚 陸斗の体力も限界に達していた。8回表には足を吊り、チームメートに支えられ、一度はベンチに下がった。それでも治療の後、またマウンドに上がった。この回4点を失い、試合は敗れたものの、多摩は大健闘であった。

試合後、多摩の道祖土 優太監督は、涙を抑えながら「今日はピッチャーが本当によく頑張ってくれました。これまで練習試合では30―2で負けたこともありました。今日は、これまでみたこともないようなチームになっていました」と語る。弟の友絆は、「悔しいです。でもこんなピッチャーになりたいです」と、兄・陸斗の健闘を称えた。「やり切りました」と語る兄の陸斗は、「努力は裏切らない」という言葉を弟に贈った。3年生が抜けると部員は6人になる。秋からは連合チームで臨むことになるが、また単独チームで戦う日も来るだろう。兄から弟へ、魂のバトンは、しっかりと渡された。

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この記事の執筆者: 大島 裕史

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