試合レポート

川口市立vs西武文理

2019.04.22

“スミ3“で乗り切った川口市立・中島斗唯

川口市立vs西武文理 | 高校野球ドットコム
尻上がりに調子を上げていった中島斗唯(市立川口)

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 初回ワンアウトも取れず既に3失点、さらに無死一、二塁とこの回何点入るか見えず、初回でゲームの大勢が決してもおかしくない展開であった。だが終わってみれば3失点で完投勝利を飾った市立川口中島斗唯(3年)。多少の幸運が味方したとは言え、彼がその潜在能力の片鱗は見せられた試合ではなかろうか。

 市立川口が185cmの長身左腕・中島、西武文理・川島と両エースが先発したこの試合、初回の攻防から一転、最終的に1点を争う展開となった。

 西武文理・川島がうまく立ち上がったのに対し、市立川口・中島は初回からアップアップしていた。

 西武文理は初回、市立川口・中島の立ち上がりを攻め立て、先頭の三宅がセンター前ヒットを放ち出塁すると、続く栗原が四球を選びいきなり無死一、二塁の先制機を迎える。ここで3番・中澤拳(3年)が右中間を破る2点タイムリー三塁打を放ち2点を先制すると、続く山田尚樹(3年)もセンター前タイムリーを放ち西武文理があっという間に3点差をつける。さらに5番・廣木もレフト前へポトリと落ちるヒットを放ち無死一、二塁とするが、続く山田がうまく送れず三振に倒れると、このワンアウトで我に返ったか、市立川口・中島は後続からも連続三振を奪い何とかこの回3失点で切り抜けることに成功する。

 一方3点のビハインドを背負った市立川口もすぐに反撃を開始する。

 2回表、この回先頭の西澤虎太朗(2年)が四球を選び出塁すると、続く古河はセンターフライに倒れるが、センターが目測を誤りヒットとしてしまう。一死後、8番・吉野孝紀(3年)の所で二走・西澤が三盗を仕掛けると、これがキャッチャーの悪送球を呼び市立川口がすぐに1点を返す。

 市立川口は3回表にもこの回先頭の中島がセンター前ヒットを放ち出塁すると、続く黒木達斗(3年)も四球を選び無死一、二塁とする。だが、続く栗林の所でキャッチャーの二塁牽制で二走・中島が挟殺されると栗林も凡退し、二死二塁とチャンスは萎むが、ここで3番・松原秀馬(3年)がレフト越えのタイムリー二塁打を放ち3対2とする。

 一方、2回以降徐々に躍動感が出てきた市立川口・中島は2回、3回の二死二、三塁のピンチを凌ぐと、そこから尻上がりに状態を上げていく。

川口市立vs西武文理 | 高校野球ドットコム
逆転する市立川口

 対する西武文理もエース川島を早々に諦め、4回からは右サイドの磯をマウンドへ送る予定通りの継投へと移る。磯はその期待に応え、打たせて取るピッチングで市立川口打線を抑えるなど試合は膠着し3対2のまま終盤へと進む。

 迎えた7回表、市立川口はこの回先頭の吉野が四球で出塁すると、続く中島がきっちりと送り一死二塁とする。ここで1番・黒木が一塁線を破るタイムリー三塁打を放ち市立川口が同点に追いつく。

 市立川口は8回表にも、この回先頭の品田敬梧(3年)がセンター前ヒットを放ち出塁すると、二死後7番・吉村もライト前ヒットを放ち二死一、二塁としチャンスを広げる。ここで続く吉野がレフト前タイムリーを放ち、ついに川口市立が試合をひっくり返すことに成功する。

 粘る西武文理も8回裏、二死から7番・近藤、磯の連打で二死一、三塁と同点機を迎えるが後続が倒れ万事休す。結局市立川口・中島が終わってみれば西武文理打線を初回の3失点のみに抑える完投勝利を飾り川口市立が2回戦へ駒を進めた。

 まずは西武文理だが、初回3点を取った後、その後のチャンスでの犠打失敗が大きかった。ここで、さらに1点でも追加していたら、相手は厳しかったであろう。市立川口・中島の立ち直りもなかったかもしれない。投手陣の継投はある程度の目途が立ち、上位打線は活発であるだけに、下位打線の底上げは夏の上位進出へ至上命題であろう。

 一方の市立川口が、初回に3点を失っても決して慌てなかった。中盤以降立ち直った中島だが、左腕にありがちな立ち上がりの悪さは今後へ向け猛省するべきだが、その角度を活かした投球と指にかかったボールは140kmを計測するという潜在能力は持っている。まだ素材タイプであるが、バックの本当の信頼を得るために安定感を増す事が今大会の今後の戦いはもちろん夏に向けてのキーワードとなるであろう。

(記事:南 英博

 

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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