Column

人工芝でのプレー

2013.08.30

人工芝はメンテナンスしやすいが身体には負担がかかりやすい

こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

夏の甲子園大会も幕を閉じ、これから秋季大会に向けて選手の皆さんは日々練習に励んでいることと思います。地方大会中はさまざまな球場が使用されましたが、その中には天然芝ではなく人工芝グランドを利用した機会もあったのではないでしょうか。
グランドのサーフェス(表面)によっては、足や腰に負担がかかるものもあります。

今回は人工芝グランドとケガの関係についてお話をしたいと思います。

昔はほとんどのグランドが天然芝を使用していましたが、プロ野球が行われる球場などは人工芝を使用するところが多くなってきました。人工芝を採用する理由としては、メンテナンスにかかる費用が天然芝に比べて安く、手間も少ないことがそのメリットとしてあげられます。一方で人工芝は天然芝のサーフェスに比べ、下がコンクリートで固められているためクッション性が低く、プレーをする選手に負担がかかりやすいことが考えられます。ここでそれぞれのグランドの特徴を整理しておきましょう。

【人工芝の特徴】
・人工芝の下はコンクリートで固められているため、クッション性が低い
・打球がよく跳ねる(下がコンクリートなので)
・ボールの転がりが減速しにくい
・ダイビングキャッチなどで滑り込むと摩擦で皮膚を傷めやすい
・維持費が天然芝に比べて安く、手間が少ない

【天然芝の特徴】
・天然芝の下は土なので、人工芝に比べてクッション性が高い
・打球が跳ねにくい(ただしイレギュラーすることがある)
・ボールの転がりが減速する
・芝に滑り込んでも摩擦が少ないのでやけどをすることがない(ただし擦過傷は起こる)
・維持費が人工芝に比べて高く、水やり・草刈り等手間がかかる

こうした特徴を踏まえ、人工芝でプレーするときの心構えや注意点、起こりやすいケガなどについて考えてみたいと思います。


人工芝の特徴を理解し、クールダウンを入念に行おう

人工芝はコンクリートの土台に貼り付けられたサーフェスなので、天然芝に比べて疲労がたまりやすいと考えていいでしょう。長時間プレーをしていると、ジャンプやランニング時にかかる物理的ストレスが、荷重関節(体重のかかる関節のこと=足関節、膝関節、腰椎など)に大きな負担となります。練習や試合前には必ずウォームアップを行うと思いますが、人工芝でのプレー後はクールダウンを念入りに行うことが大切です。

【足・足関節周辺部】
足底筋の疲労をとるために青竹踏みやゴルフボール等でのセルフマッサージ、アキレス腱周辺部やふくらはぎの筋肉にはふくらはぎのストレッチが有効です。

【膝周辺部】
ふくらはぎの疲労に加え、太ももの前側(大腿四頭筋)、太ももの後側(ハムストリングス)ともに柔軟性が低下することによって、膝にも大きな負担がかかってきます。太もも周辺部のストレッチを入念に行いましょう。

【腰椎部】
以前に腰を痛めたり、不安のある選手にとっては人工芝でのプレーはかなり大きな負担がかかると考えられます。特に腰椎の前弯(ぜんわん・骨の並びが前に大きく反っている状態)が大きい選手が人工芝でジャンプを繰り返すと、腰椎に大きなストレスがかかって腰が痛くなることも考えられます。腰背部のストレッチを入念に行うことはもちろんですが、あらかじめ人工芝でプレーすることがわかっている場合などは、足底にインソールを入れてクッション性を高める等の対策をとることも大切です。

人工芝でのスライディングは摩擦熱が起こり、天然芝に比べると広範囲な擦過傷となりやすい傾向があります。またコンクリートに人工芝を貼り付けている状態ですので、芝の切れ目にスパイクが引っかかって転倒する、足関節を捻挫するといったケースも見られます。プレー後に痛みをともなう場合はRICE処置を行うようにしましょう。また人工芝でのプレーは特に下肢への負担が大きいので、プレー後にストレッチを行う、帰宅後には湯船につかってしっかりと体を温める等、疲労回復を心がけてくださいね。

【人工芝でのプレー】
●人工芝はコンクリートの上に貼り付けたサーフェス。クッション性が低い。
●スライディング等は摩擦熱で皮膚をやけどしやすい
●足関節・膝関節・腰椎等、荷重関節に負担がかかりやすい
●人工芝でのプレー後はクールダウンを入念に行うこと
●疲労がたまりやすいのでRICE処置ストレッチ等できることを行う

(文=西村 典子

次回、第76回公開は09月15日を予定しております。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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