試合レポート

宮崎工vs小林

2010.07.22

2010年07月22日 サンマリンスタジアム宮崎

宮崎工vs小林

2010年夏の大会 第92回宮崎大会 3回戦

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浜田(宮崎工)

変則左腕の進化

 南国宮崎の温度計は、朝8時の時点で30度をクリア。車中の計測では最高気温が33度を計測していたが、その表示以上に圧倒的な日差しの強さが入場制限下で行なわれた球場の熱気を押し上げていく。

 一番のお目当ては、今春センバツで18イニング1失点と存在感を発揮した宮崎工の左腕エース・浜田智博だ。みなさんもよく覚えていることと思う。183センチの長身で、小さなテイクバックからリーチを活かした独特のしなりで全国をあっと言わせた、あの変則左腕である。カーブ、スライダー、チェンジアップなど全方位で勝負できる変化球を駆使するが、何よりテイクバックに端を発する独特のヒジ稼動によって、球の出どころがまるで掴めないという点が最大の魅力だ。

 しかも、センバツでは振りの強さ、球のキレが際立ち、甲子園のネット裏に陣取ったスカウトの多くが、思わず身を乗り出すという場面も見られた。そんな浜田に春の九州大会以来お目にかかれるというのだから、広大なサンマリンスタジアム宮崎の敷地を駆ける筆者の足取りも加速度を増す。自然、汗は噴き出し、これによって、体感温度はさらに上昇していったのである。

プロ球団のスカウトが見た場合、センバツまでの浜田は“好みが割れやすい”タイプの投手だった。理由は変則だからという一語に尽きる。ただ、あれだけ特異な投球メカニズムであれだけ腕を振ことができる投手は、浜田しかいない。そこをどう評価するか、だ。
第一印象は意外なものだった。
以前のような“いびつ”さが失せているのだ。言い方を変えれば、不自然さが失せ、より自然なフォームに変貌したとなるだろうか。腕の振りの柔らかさが増し、かつスムーズになっている。しかも、下半身に粘りが増し、以前よりも体重が軸足にしっかりと残った感もある。

 試合後に話を聞いてみると、たしかに微修正を加えたと浜田。
「右肩の開きを意識的に押さえ、右肩を打者方向に正対しながら前方にシフトさせる。さらに、軸足に残りすぎていた体重を、下半身全体を使ってスムーズに移動させる。そうすることで軸に乗った体重は右ヒザに乗り、指先のかかりも良くなる。つまり球に力が伝わることで、より良い球が投げられるはずなんです」

 修正の結果だろうか。制球力は以前に増してアップしている。一方で、球のキレ自体は、春先のそれではない。もともと重量感のある球を投げ込んでくるタイプではないが、さらに“軽さ”さえ感じるのである。この日の初回に1、2番に浴びた連打は、まさにそんな球だった。

 5月の22日以降、すべての対外試合が禁止される中で、実戦での調整、試投ができなかった浜田。試行錯誤のまま夏を迎え、その状態は今現在も変わらない。完成には、もう少しの実戦マウンドが必要か。

それでも中盤からは外角のストレートでカウントを稼ぎ、スライダーで仕留めるという必殺のパターンを確立し、ふらついていたリズムを立て直してくるあたりは、さすがに全国区の左腕だ。結果、小林打線を4安打に抑え、9奪三振、1四球。早いカウントから打たせて捕るという持ち味も充分に見せつけた。

 センバツの後、浜田の心境に変化があったからこそのフォーム修正なのだろう。夏の宮崎を制すること。甲子園にカムバックすること。これらの強い意志に加え、浜田は未来の自分というものを模索し始めたのではないだろうか。

 筆者の個人的希望をいえば、浜田は浜田らしく、浜田にしか体現できない変則フォームを貫いてほしいと思っていた。ただ、エースにはエースなりの持論があっていい。現段階での一長一短の変化も、浜田にとっては“進化”なのである。そう、こちらの一喜一憂など、完全に無視してもらって構わない。

(文=加来 慶祐


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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