履正社vs高槻
乾駿斗(履正社)
再出発の春 履正社編
選抜大会4強の履正社。春の大阪府予選は1、2回戦に続いて5回コールドで3回戦を突破した。
試合時間わずか1時間15分のコールド劇。11安打で11得点、攻撃4回で打順は三巡りと効率の良い攻めが目立った。初回には、3番石井元(3年)がプッシュバントスクイズ(記録は内野安打)をして先取点を取りにいった。
さらにこの大会、捕手として先発出場する8番乾駿斗(2年)がレフトへ3ラン。結局このイニング6点を奪って、高槻先発の田中宏茂(3年)をノックアウトすることに成功した。
2回には足を絡めて1、2番の2人だけで追加点。3回にはスクイズで8点目、1番海部大斗、2番正木健太郎(3年)の連続タイムリーで差を10点とした。
とにかく貪欲に点を取りにいく。そんな姿勢が要所要所で垣間見える攻撃。甲子園で味わった教訓を胸に、チーム全体が一皮むけてきたようにも思える。
16点を取られた東海大相模の打撃を見てバットをしっかり振ることを痛感したというのが教訓。坂本誠志郎主将(3年)は、「とにかくフルスイングを心掛けよう」とミーティングで話しているという。
海部や石井だけでなく、甲子園で出番のなかった乾など全体でもしっかりとスイングできているからこその3試合連続二桁得点。そこには昨秋までの姿は微塵も感じられなかった。
余談だが、この日の試合後に行われていたメンバー外の紅白戦でも、下級生の生きの良いスイングが目立った。
鈴木佳佑投手(履正社)
3試合全て二桁得点の攻撃陣に比例して、投手陣も3試合連続で無失点。この日は先発の原が3イニング。甲子園でベンチ外だった鈴木佳佑(2年)が1イニング、最後はエース飯塚孝史(3年)が締めて危なげない内容だった。岡田龍生監督はさらに下級生にも楽しみな投手が出てきたことを示唆している。3年生もうかうかとはしていられない状況になってきているようだ。
4強まで進んだ甲子園。大敗も喫した甲子園。ここで得たものは、もの凄く大きい。そしてこれからどう生かしていくかが、そのチームの運命だと言える。再出発の春。直接夏に繋がるものではないが、今の履正社にとって重要度は大きい。
昨夏を経験した選手が多く残った秋の大会と、選抜後の春の大会では、同じ甲子園後でもまったく雰囲気が違って見えた。それは甲子園の喧騒から、現実に戻っての感覚というもの。
「今は(甲子園に)出場できたプライドを持ってやろうと常々みんなに話しています」と解説してくれた坂本主将。さらにこんな話も付け加えてくれた。
「春の大阪を制したチームが3年連続(大阪桐蔭、PL学園、履正社)で夏の甲子園に出場している。春にしっかり勝って夏に繋げたい」
勝つことを意識しながら、色んなことも試験できている印象の履正社。教訓は確実に生きているようである。
(文=松倉雄太)