高陽東vs盈進
サヨナラ勝ちを喜ぶ高陽東ナイン
高陽東がサヨナラ勝ち!盈進の好投手・谷中を攻略
140キロ以上の直球を繰り出す盈進の谷中文哉(2年)を相手に怯むことはなかった。直球に的を絞った鋭いスイングで高陽東は盈進にサヨナラ勝ちした。
雨の影響で試合開始が約150分遅れた上に、時折晴天になったことで蒸し風呂状態になったグラウンド。それでも、高陽東の集中力は最後まで切れなかった。延長12回に先頭の小路健太郎(2年)の右中間への二塁打と相手のバッテリーミスで無死3塁。岩佐純一(1年)が狙ったのは直球だった。二遊間を打球が抜けていくと、自然にガッツポーズが飛び出した。好投手を攻略してのサヨナラ勝ちに、集まってくる選手の表情も笑顔で満開だった。
「絶対に決めるという気持ちで打席に入りました。いろんな練習をしてきたことがいい方向に出ました」
岩佐は笑顔で振り返る。「いろんな練習」とは、まさに谷中対策だった。2回戦終了後から約1週間、高陽東は直球対策に明け暮れた。
「打撃投手に前から投げてもらったり、マシンを前の方に置いたりして目をならしました」と岩佐。サヨナラの場面でも直球の勢いに負けることはなかった。バットを振り抜いた打球がチームを8強に導いた。
得点も長打力から生まれた。4回の原山純(2年)、8回の上野勇仁(2年)とソロを2本放った。「球場の狭さに助けられた。長打のチームではない」と折田裕之監督は苦笑いする。一方で直球に対するアドバイスも実った。「直球の勢いを利用して打ちなさい。力負けしなければ、いつかは攻略できる」。各打者の意識がチーム5本もの長打につながった。実際、スイングスピードの速い打者が多いのも特徴だ。夏場にスイングの量などを増やした成果を本番で発揮している。
投手陣の切り替えも、高陽東にとって1つのポイントだった。先発の岡野翔也(2年)の調子がよくないと見ると3回途中で見切り、2番手に久保秀嗣投手(2年)を送り込んだ。球質の重そうな直球で盈進打線の勢いを止めた。「岡野は球のキレがなくて、もたないと思った。久保は細かく制球できるタイプではない。思い切っていくことだけを指示したのがよかったのでしょう」。指揮官の判断も冴え渡った試合だった。
あと1つ勝てば、チーム4年ぶりの中国大会出場となる。県内屈指の右腕を打ち崩したことを武器にして、高陽東は久々に大きな舞台へ向かっていく。
(文=中牟田 康)