試合レポート

市立和歌山vs県立和歌山

2012.07.15

投打にわたって見せたエースの存在感

ゲームセットの瞬間、市和歌山のエース・上賢志郎(3年)はセンター後方にくるりと背を向け、軽くガッツポーズして見せた。
「最後に連打を浴びてどうなるかと思いましたが、完封できたのは良かったです。反省点はありますが、勝ててホッとしています」と、汗をぬぐいながら上は笑顔をこぼした。

1回表、1番の森屋佑亮(2年)を空振り三振に仕留めた後、「今日はいけそうやな」と自らの調子に手ごたえを掴んだはずだった。
だが、2番高井佑希(3年)に2球目をきれいにライトへ運ばれると、3番の岡崎真宏(2年)に犠打を決められ二死二塁。すると、4番の岡本有史(3年)に甘く入ったカーブをライト前へ打たれた。
ライトの好返球で二塁走者は本塁タッチアウトとなり失点は免れたものの、あまりにも劇的な幕開けとなった初回のマウンドは、以降の上のピッチングのカンフル剤になった。

3回以降は、持ち前のストレートが走った。
速球対策をしてきた県和歌山打線は初球から果敢にバットを振ってきたが、「ストレートを狙われても、ストレートで押せないのは逃げているだけ」とプライドで勝負した。
4回から5回にかけては三者連続三振を奪うなど、3回から7回までは1人も走者を出さなかった。

しかし、ずっと三振を奪い続けてきたわけではない。
8回には失策で走者を出してしまい、押せ押せムードの県和歌山ベンチが活気づいてきた。


得点差は2。

ほんの1球で流れが変わる場合もある。代打で登場した西田修平(1年)に対し、冷静に変化球で詰まらせ内野ゴロで併殺に斬って取った。
「今までは、オレがオレがと1人で勝負していたけれど、後ろを信頼して投げられるようになった。みんなで野球を出来るようになったと思います」と真鍋忠嗣監督もエースの成長を認めていた。

打っても、攻撃の突破口を開いた。
2回、先頭打者として打席に立った上は、チーム初安打となるライト前ヒットを放ち、先制のホームも踏んだ。
4番としての仕事もきっちり果たしたが「うちの打線で一番信頼されているのは、(3番の)浜田(健太=3年)。自分はチャンスで打てたらいいと思っています。だから、初回のヒットよりも5回と7回のチャンスでフライを打ち上げてしまったことの方が反省点です」と、謙そんした。

それでも10個の三振を奪い、相手が狙っていても唸るようなストレートで押し切ったピッチングは見る者を圧巻させた。幸先の良いスタートを切ったが、投打で存在感を見せたエースは、最後に表情を引き締めて言った。

「昨夏は、最終的には決勝でバテてしまって(智辯和歌山に)負けてしまった。今年はそういう風には夏を終わらせたくないんです。最後は笑って、夏を終わらせたい」

スターティングメンバー
県立和歌山】  (主将)小畑敦裕
9森屋佑亮 
7高井勇希 
4岡崎真宏 
3岡本有史 
5中谷朋哉 
2岡本竹史
1緒方宏志郎
6東昇生
8岡田侑起

市立和歌山】 
6赤尾巧 
3林悠史  (主将)
7浜田健太
1上賢志郎
9杉野滉樹
8川本諒介
2井上貴博
5道利大海
4村原大介

(文=沢井史)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.06.30

明徳義塾・馬淵監督が閉校する母校のために記念試合を企画! 明徳フルメンバーが参加「いつかは母校の指導をしてみたかった」

2024.06.30

突然の病で右半身が麻痺した「天才野球少年」が迎える最後の夏 あきらめなかった甲子園出場の夢、「代打の一打席でもいいから……」

2024.06.29

北海は道内29連勝なるか、東海大札幌VS札幌日大の強豪対決も、30日に札幌支部で代表決定戦【2024夏の甲子園】

2024.06.29

昨秋3位の豊橋中央が登場、享栄破った実力見せる!30日愛知大会【2024夏の甲子園】

2024.06.29

激戦区・愛知が開幕!ノーシードから4連覇狙う愛工大名電が17得点の圧勝発進、大府、愛知産大三河も初戦を突破【2024夏の甲子園】

2024.06.28

元高校球児が動作解析アプリ「ForceSense」をリリース! 自分とプロ選手との比較も可能に!「データの”可視化”だけでなく”活用”を」

2024.06.28

最下位、優勝、チーム崩壊……波乱万丈のプロ野球人生を送った阪神V戦士「野球指導者となって伝えたいこと」

2024.06.26

【北北海道】北見支部では春全道4強の遠軽が登場、クラーク記念国際と好勝負演じた力見せる【2024夏の甲子園】

2024.06.24

愛媛の組み合わせ決定!今春優勝の松山商・大西主将は「どのチームと闘っても自信をもってベストなゲームをしたい」シード4校主将が意気込み語る!

2024.06.27

高知・土佐高校に大型サイド右腕現る! 186cm酒井晶央が35年ぶりに名門を聖地へ導く!

2024.06.28

元高校球児が動作解析アプリ「ForceSense」をリリース! 自分とプロ選手との比較も可能に!「データの”可視化”だけでなく”活用”を」

2024.06.28

最下位、優勝、チーム崩壊……波乱万丈のプロ野球人生を送った阪神V戦士「野球指導者となって伝えたいこと」

2024.05.31

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在34地区が決定、佐賀では佐賀北、唐津商、有田工、龍谷がシードに

2024.06.26

【北北海道】北見支部では春全道4強の遠軽が登場、クラーク記念国際と好勝負演じた力見せる【2024夏の甲子園】

2024.06.24

愛媛の組み合わせ決定!今春優勝の松山商・大西主将は「どのチームと闘っても自信をもってベストなゲームをしたい」シード4校主将が意気込み語る!