試合レポート

加治木工vs大島

2012.07.22

心が成長

1回の攻防が終わると、晴れ間なのに雷が鳴っている。慌てて審判団が選手を引き上げ、様子を見た。この試合が何か劇的な展開になる予兆のようにも思われた。
そこから土砂降りの雷雨となり、2時間34分も待たされた。午後0時33分に始まった試合が終わったのが午後5時32分。4時間59分にも及んだ熱戦を制したのは加治木工だった。

加治木工の左腕・上原滉平(3年)、鹿児島大島の右腕・松下勇一(2年)の両先発が好投し、1点を争う緊迫した展開になった。
両チーム無得点で迎えた5回表、加治木工は一死から8番堀切丈一郎(3年)が左中間へ二塁打を放ち、9番上原のレフト前タイムリーで1点を先取する。
8回には二死から中村将太朗(3年)、稲葉学志(3年)の3、4番が連打で待望の追加点を挙げた。

このまま加治木工が逃げ切るかと思いきや、9回裏の土壇場で大島が粘りをみせる。
8回まで散発4安打、特に左打者が全く打てていなかった中で、先頭の左打者・松田賢斗(2年)が一塁方向へ意表を突くセーフティーバント。続く2番濱崎健輝(3年)が強攻してセカンドライナーに倒れるも、松田が判断良く戻って併殺を逃れる。
途中出場の1年生・重原龍成が四球を選ぶと、前の打席で二塁打を放った4番藤原光寿(2年)が1ストライクからの2球目を強振。高々と舞い上がった打球はセンターの頭上を越える起死回生の同点二塁打となった。この回は後続を断たれて、勝ち越し点は奪えなかったが、流れは一気に鹿児島大島に傾く。


延長10回表も9回からリリーフした鹿児島大島・池田優也(3年)が3人で片づけて、劇的な逆転サヨナラへのお膳立てはできた。
その裏、これまで好投を続けた加治木工・上原が連続四球。上野力監督は福倉康記(2年)をマウンドに送る。9番・池田は送りバントのサインだったが3球とも失敗して三振。「バントの心構えはできていたつもりだったが、気持ちの弱さを克服できなかった」と池田は悔やむ。

後続を打ち取ってピンチを脱すると加治木工が一気に盛り上がった。先頭の中村が右中間を深々と破る三塁打を放つ。稲葉は死球。すかさず二盗を仕掛けると、悪送球を誘い難なく勝ち越しに成功した。
バッテリーの心の揺れを見透かしたように6番大迫啓太、堀切、福倉、1番有村卓朗が畳み掛けてタイムリーを放ち、一挙5点を挙げて熱戦にケ着をつけた。

「勝つことに集中できていた」と上野監督は勝因を話す。
昨秋、今春と勝てなかった頃は「逆転されたり、終盤競ってくると自分たちから崩れて負けてしまっていた」。その頃のままなら9回同点に追いつかれ、10回の場面を踏ん張れなかったチームだったが「監督ではなく、選手たちから気持ちを切り替えて雰囲気を盛り上げようとしていた。心が成長したと思う」と指揮官は力強く言い切った。

(文=政純一郎)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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