第85回選抜大会注目選手を紹介 【投手編】
第85回記念選抜高校野球大会が3月22日から開幕する。今大会に出場するチームにはどんな選手がいるのか。まずは注目投手から紹介してみたい。
スケールよりも完成度の高い右投手が揃う
乾陽平(報徳学園)
今回紹介する右投手は、スケールよりも完成度の高さで勝負する投手が多い印象だ。
その中で、注目されるのが乾 陽平(報徳学園)だ。
完成度の高いフォームから投じる140キロ前後のストレート、キレの有るスライダー、カーブともに精度が高く、投球を組み立てることができる好投手で、公式戦の防御率1.00、与四死球率は2.00。ただ奪三振は99イニングで55。1試合で5個を奪う計算で、若干の物足りなさは感じる。三振がすべてではないのだが、何か三振を奪える武器を習得すると投球の幅は広がるだろう。ただし、三振にこだわりすぎて、勝機を逃しては意味が無い。あくまで付加価値として、チームの勝ちに繋がるピッチングに期待したい。
下石 涼太(広島広陵)は先輩である野村 祐輔(広島)の再来と呼ばれる好投手。140キロ台のストレートと多彩な変化球をコーナー自在に投げ分ける好右腕で、投球以外の技術、打撃センスも高く、まさに野球センスの塊と呼ばれる。広陵は、2010年の選抜ではベスト4。下石が前回を超える優勝へ導けるかが注目だ。
九州大会で3試合連続完封を成し遂げた大野 拓麻(創成館)。130キロ台のストレート、スライダー、チェンジアップを内外角に投げ分けながら、投球を展開。防御率1.46と実に安定した数字を残している。一方で、気になったのは与四死球率4.23と彼の投球スタイルから意外に悪い数字であった。走者を出しても粘り強い投球ができる投手なのであろう。選抜でも持ち前の粘り強い投球で、勝利を導くことができるか。
敦賀気比の岸本 淳希は右サイドから140キロ台の速球を投げ込む速球派サイドハンド。シャープな腕の振りから投じる威力ある直球に加え、スライダー、シンカーの精度は高い。選抜でも秋以上の完成度の高い投球を披露できるかが注目だ。
復活が期待されているのは浦嶌 颯太(菰野)。1年秋に151キロを計測し、2013年度の目玉投手と注目されたが、その後は不調もあり、秋は5イニングにとどまった。与えた四死球は8で、制球を大きく乱す場面が多かったことが想像できる。潜在能力は高い投手だけに、選抜では復活した姿を見せてほしい。
2008年以来の選抜出場を果たした常葉菊川のエース・堀田 達也はがっしりした体型から下半身を使ったフォームから投じる右の本格派。135キロ前後の直球、スライダー、カーブを淡々と投げ分ける。選抜では140キロ超えも期待出来る投手。防御率1.67と数字面は安定しているが、決め球となる変化球を習得したいところ。
[page_break:技巧派が揃う左投手たち]他校の脅威となるのは大竹耕太郎! 技巧派が揃う左投手たち
大竹耕太郎(済々黌)
次に左投手。今年は技巧派タイプが目立つ
昨夏の甲子園を経験した大竹 耕太郎(済々黌)は他校にとっては脅威になる存在。180センチを超えて、投手らしい手足が長く、すらっとした投手体型。開きを抑え、長い腕から振り下ろす140キロ近い速球とベース上で鋭く曲がるスライダーのコンビネーション。秋季大会では防御率1.28。常に自分をコントロールし、実戦的な投球を展開する。優勝を狙う学校にとっては初戦では当たりたくない投手だ。
児山 祐斗(関西)は球持ちがよく、135キロ前後のストレートにはキレがあり、得意球のスクリューのキレが良い。だが勝負どころの制球力が甘く、捉えられると修正が効かないのが課題。選抜では粘り強い投球が求められる。
キレのある130キロ前後の直球とカーブ、スクリューを自在に投げ分ける左の技巧派・比嘉 健一朗(沖縄尚学)は防御率1.07と安定した数字を残す。
同じ技巧派である大串 和弥(北照)は防御率2.59とそれほど突出した数字ではないが、明治神宮大会では近畿屈指のスラッガー・榎本 和輝(京都翔英)を2打席目以降、完璧に抑え込んだ巧みな投球術がウリ。課題であるストレートのキレを磨いてより打ちにくい投手を目指す。
高橋 由弥(岩国商)は上半身を鋭く回旋させるフォームから投じる140キロ近い速球と曲がりの大きいスライダーが持ち味の好左腕。防御率は1.56と安定した数字を残している。すらっとした投手体型で、左腕ながら130キロ後半を計測する投手なので、一冬の成長に期待だ。
[page_break:スケール型の投手が揃う新2年生]安樂を筆頭にスケール型の投手が揃う新2年生
新2年生は完成度よりも、スケールが大きい投手が目立つ。
まずは安樂 智大(済美)。彼は今大会注目度NO.1ピッチャーと紹介してもいい。スケール、投球内容ともに、ずば抜けており、怪物というフレーズがこれほどふさわしい投手もいない。
入学時のマックスが144キロだった。それだけでも次元が違うが、彼はその後の成長速度も次元が違った。秋に152キロをマークし、8キロもレベルアップさせたのだ。さらに、それだけではなく、決め球に縦に鋭く落ちるスライダーを織り交ぜ、三振を奪うことが出来る投手なのである。奪三振率は11.61。いかにして彼のストレートの速度、威力、変化球の威力が際立っているかが伺えるだろう。
課題はピンチ時の対応、終盤の粘り強さ。防御率は1.74だが、鳴門戦で逆転負けを喫したように試合終了になるまで自分をコントロールして投球を組み立てられるか。この大会で、甲子園の主役になる可能性を十分に秘めている。
■安楽選手は独占インタビューに掲載中です!
第122回 済美高等学校 安樂 智大 投手
立田 将太(大和広陵)
立田 将太(大和広陵)は中学時代から騒がれた投手。1年時から登板機会を積んで、新チームからエースとして近畿大会出場に導いた。まさに大黒柱ともいっていい存在で、防御率0.62と素晴らしい成績を残し、奈良大会では27イニング無失点と県内では敵なしの投球を見せた。140キロ台を超える直球が注目されるが、むしろ自分のペースで淡々と投球を組み立てるマウンド捌きが印象に残る。その安定したマウンド捌きが数字につながっているだろう。初めてとなる大舞台で、彼の潜在能力がさらに引き出されるのかに注目したい。
松本 裕樹(盛岡大附)は最速143キロを誇る右の速球派。1年夏から登板を経験し、秋からはエースとして活躍し、東北大会4強まで導いた。防御率1.43安定した数字を残す。彼も是非注目したい投手。
190センチを超える長身から角度ある140キロ近い直球を投げ込む石川 直也(山形中央)も面白い。素材は安樂、立田、松本にひけをとらない素材だけに注目したい投手だ。
酒井 祐弥(高知)はチームでは三番手という扱いだが、公式戦では12イニングを投げて自責点0と安定感を誇る。彼は上半身を鋭く回旋させる右のオーバーハンド。最速は130キロ後半に達し、曲がりの大きいカーブも魅力的。まだ本格化していないが、この先が楽しみな逸材。
以上が今大会注目投手となるが、一冬越して驚くような成長を見せるのが高校生のすごい部分。多くの投手が活躍を見せることを期待したい。
(文:河嶋宗一)