県立銚子vs成東
先発・今関(成東)
第6ブロック変遷の時期
高校野球は5年、10年と経てば強豪校は変遷するもので、一時期強かったチームと長いことを低迷してしまうとすぐに古豪扱いをされてしまう。それだけ強豪校でいることは難しい。
第6ブロックも変遷の時期に入ってきている。甲子園出場1回で、鈴木孝政、中村勝広とプロ野球選手を輩出した成東と2007年に共学になり、創部6年目の県立銚子の対決だ。県立銚子は昨年に秋季県大会で初のベスト16に進出。春季大会シードまであと1勝と迫った。成東も公立校として実力ある選手が揃い、第6ブロックでは屈指の好カードであろう。
先制したのは成東。1回裏、1死三塁から3番牛玖のタイムリーで1点を挙げる。だが2回表、県立銚子が成東の先発・今関を捕える。
4番木村が高めの直球を叩き、レフトへ二塁打。5番小嶋が犠打を仕掛け、1死三塁。ここで投手の暴投で三塁走者が生還し1点を返す。。
さらに6番高木のレフト前ヒットと7番弥勒院の相手エラーによる出塁、8番浅野のライト前ヒットで満塁とすると、9番小野がスクイズを決めて逆転に成功。この後、二死二、三塁から1番山田の2点タイムリーで4対1とした。
3回表にも3番並木がレフト前ヒット、4番木村の二塁打で無死二、三塁となり、5番小島のセカンドゴロの間に追加点。相手のミスなどでもう1点を追加し、6対1とする。予想外の試合展開となった。
今関は左の本格派。真っ向から振り下ろす角度ある直球は中々の、近年の成東の投手では1,2を争うぐらいの素材。それだけの魅力を持った投手だと思う。今関に対し、どう攻略したのか。
「どこかで甘い球が来るので、それを見逃さず打つだけでした」と 澤田監督は答える。ただ甘く入った球を逃さず打つというのは選手がそれなりのレベルに達していなければ難しい。今関に対しても捉えられる県立銚子打線は高いレベルに達している。
先発・彌勒院(みろくいん)(県立銚子)
3回裏に成東は舘石の犠牲フライで1点を返して、6対2とするが、後が続かず、試合は6対2のまま進む。県立銚子の先発はエースの加瀬ではなく、左腕の彌勒院(みろくいん)だ。彌勒院はがっしり体型の左腕。球速はそれほどないのだが、ボールが手元で動くクセ球の投手で、上手い具合に低めに決まって、凡打の山を築いた。
3回以降、今関が立ち直って、試合が落ち着いた。6対2のまま進んだ9回裏。彌勒院は三者凡退で締めてゲームセット。二季連続の県大会出場を決めた。澤田監督は2失点に抑えた彌勒院を評価する。
「しっかりと自分の実力を出せば、このぐらいの投球はできる子だと思っていましたが、9回2失点は上出来ではないでしょうか」
加瀬は疲労が溜まり先発で投げさせる状態ではなかったので、代役として登板した彌勒院が2失点完投。これほど首脳陣にとっては嬉しいことはないだろう。加瀬も県大会になって本調子で投げられるか分からない。エースとして投げられるチャンス、彌勒院は逃したくないだろう。本人もそのつもりだ。
「僕も試合で投げたいので、加瀬の控え投手と言われたくはないです。でも加瀬との二枚看板と呼べるような投手になれるように頑張ります」
投手らしい意地をのぞかせるコメントを残してくれた。目指すは春季大会ベスト8。この冬はこの目標を達成するためには取り組んできた。
これで成東を倒しての二季連続県大会出場。昔の第6ブロックからすれば考えられないことだった。わずか6年で秋ベスト16、二季連続県大会出場を達成した県立銚子の成長ぶりは素晴らしい。第6ブロックは県立銚子だけではなく、八街も力をつけてきており、第6ブロックも変遷の時代に入ってきていると感じたゲームであった。
(文=河嶋宗一)