Column

埼玉栄高校相撲部が実践している 強靭さ・柔軟さを高める足裏基礎トレーニング 前編

2013.10.08

埼玉栄高校相撲部が実践している 強靭さ・柔軟さを高める足裏基礎トレーニング

 「野球」と「相撲」。並べてみると最も縁遠そうな2競技である。しかしながら「足裏」というキーワードでつなげてみるとどうだろう?

 野球は走・攻・守に渡り全て「足裏」がなければ成り立たないスポーツ。相撲も足裏の動きが勝敗に直結するスポーツ。そういえば、ベースランニングの動きも、相撲の土俵を回る動きも「円運動」。遠いようで実に近い関係が日本の伝統スポーツ競技間には存在しているのだ。

 では、相撲における足裏の動きとはいかなるものか?そこで私たちは今年のインターハイ団体戦で4年ぶり8度目の優勝を遂げた埼玉栄高校(埼玉)相撲部へと潜入。過去には高校球児を冬季トレーニングで受け入れるなど他競技への理解も深い山田道紀監督に、実際の動きも示して頂きながら、足裏の奥義を伝授してもらった。

栄光を勝ち取るための「足裏基礎トレーニング」

 去る9月29日に千秋楽を迎えた大相撲秋場所。東関脇は妙義龍。2度目の殊勲賞を獲得した西関脇・豪栄道(共に境川部屋)。西前頭13枚目で10勝の豊真将(綴山部屋)、西前頭14枚目で勝ち越しの常幸龍(木瀬部屋)。横綱・大関含めても44人しか入れない狭き門・幕内の中でも4人が埼玉栄高校相撲部である。

 プロだけではない。東京国体において成年男子個人で優勝した中村大輝(日体大3年)も出身は埼玉栄高。このように日本の相撲界をも牽引している高校相撲界屈指の強豪・埼玉栄高校相撲部は、さいたま市西区にある校内相撲道場において、日々激しい稽古に励んでいる。

 ただ、意外にも朝・放課後・夜と続く稽古の大半は基礎練習とウエイト、足首ストレッチ。「普段の練習でウチは10~15番くらいしか相撲は取りませんよ」と山田監督も語るように、取材日の稽古も相撲の王道「四股(しこ)」から始まった。

[pc]

[/pc]

 映像で見て頂ければ歴然だが、どの力士たちも見事な四股を踏んでいる。声で呼吸を合わせ高々と片脚を上げ、力強く大地を踏みしめる。ではなぜ、ここまで片脚だけでバランスを保てるのだろうか?そう思った瞬間、山田監督が秘訣を教えてくれた。

[page_break:走塁や守備での「一歩目」に通じる「すり足」]

走塁や守備での「一歩目」に通じる「すり足」

 「5本の指全体で砂を噛むようにして足裏で支えながら、立ち脚側のひざ内側に力を集中させるんです」

 これを聞いた高校球児の皆さんでピンと来た方はきっと投手経験者だろう。まず足を上げて立ち脚のひざ裏にパワーをため、体重移動しながら逆の脚を踏み込み、腕を振って投げる際に100%の力を出し切る。「ボールを持つ、持たない」の差はあるが、体の動かし方では相通ずる点が様々ある。

 四股に続き、指を当ながら、足全体を使いかかとを上げず、右手と右脚、左手と左脚を同時に出しながら土俵周りを周回する「すり足」もそう。相手の技に耐え、自分の力を相手に伝える下半身を作るために、まるでムカデのように上半身を平行移動させながら進んでいく原理は走塁や守備での「一歩目」に通じるものがある。

[pc]

[/pc]

 しかも、だ。この「すり足」は足裏全体を使っているがゆえに鍛えれば、映像にもあるように後ろ向きでも、右にも左でもスピード調整、急停止、急発進も自在にできる。現在、イチロー(愛工大名電→オリックス→シアトル・マリナーズ→ニューヨーク・ヤンキース)や中田翔大阪桐蔭→北海道日本ハム)など、多くの野球選手が「すり足打法」を採用しているが、自在な対応を出来る点において「すり足」は理に適った方法だといえるだろう。

(文=寺下友徳

このページのトップへ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.06.30

明徳義塾・馬淵監督が閉校する母校のために記念試合を企画! 明徳フルメンバーが参加「いつかは母校の指導をしてみたかった」

2024.06.30

突然の病で右半身が麻痺した「天才野球少年」が迎える最後の夏 あきらめなかった甲子園出場の夢、「代打の一打席でもいいから……」

2024.06.29

北海は道内29連勝なるか、東海大札幌VS札幌日大の強豪対決も、30日に札幌支部で代表決定戦【2024夏の甲子園】

2024.06.29

昨秋3位の豊橋中央が登場、享栄破った実力見せる!30日愛知大会【2024夏の甲子園】

2024.06.29

激戦区・愛知が開幕!ノーシードから4連覇狙う愛工大名電が17得点の圧勝発進、大府、愛知産大三河も初戦を突破【2024夏の甲子園】

2024.06.28

元高校球児が動作解析アプリ「ForceSense」をリリース! 自分とプロ選手との比較も可能に!「データの”可視化”だけでなく”活用”を」

2024.06.28

最下位、優勝、チーム崩壊……波乱万丈のプロ野球人生を送った阪神V戦士「野球指導者となって伝えたいこと」

2024.06.26

【北北海道】北見支部では春全道4強の遠軽が登場、クラーク記念国際と好勝負演じた力見せる【2024夏の甲子園】

2024.06.24

愛媛の組み合わせ決定!今春優勝の松山商・大西主将は「どのチームと闘っても自信をもってベストなゲームをしたい」シード4校主将が意気込み語る!

2024.06.27

高知・土佐高校に大型サイド右腕現る! 186cm酒井晶央が35年ぶりに名門を聖地へ導く!

2024.06.28

元高校球児が動作解析アプリ「ForceSense」をリリース! 自分とプロ選手との比較も可能に!「データの”可視化”だけでなく”活用”を」

2024.06.28

最下位、優勝、チーム崩壊……波乱万丈のプロ野球人生を送った阪神V戦士「野球指導者となって伝えたいこと」

2024.05.31

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在34地区が決定、佐賀では佐賀北、唐津商、有田工、龍谷がシードに

2024.06.26

【北北海道】北見支部では春全道4強の遠軽が登場、クラーク記念国際と好勝負演じた力見せる【2024夏の甲子園】

2024.06.24

愛媛の組み合わせ決定!今春優勝の松山商・大西主将は「どのチームと闘っても自信をもってベストなゲームをしたい」シード4校主将が意気込み語る!