試合レポート

水戸工vs藤代

2014.05.03

水戸工vs藤代 | 高校野球ドットコム

水戸工・後藤

昨秋関東大会出場の水戸工が延長戦を制し、準決勝進出!

 準々決勝第二試合は、昨秋県3位となり関東大会に出場(1回戦で健大高崎に2-3と惜敗)した水戸工と、昨秋県8強(準々決勝で霞ヶ浦に0-8とコールド敗退)となった藤代の公立校同士の対戦となった。
 水戸工は前の試合で茨城県を代表する下館工の140キロ右腕・谷中 規彦( 3年、大和中)から3番郡司 祐稀(3年、常澄中)が初回に2点本塁打を放つなど5得点。投げてはエースの後藤 凌太(3年、佐野中、164センチ)が9回を完封。完璧な試合運びで5対0と勝利し、秋県3位の実力を遺憾無く発揮した。

 
 一方、藤代は前の試合(下妻二戦)で打線が大爆発し、14対4と5回コールド勝ち。攻撃面は見事な結果を残した。
 しかし、守備面ではエースの左腕・竹内 悠(3年、中根台中)が下妻二から5回11安打4失点と打ち込まれ、今回、課題をいかに修正してくるかが注目された。

 1回表、水戸工は一死後、2番弓野 宗敬(3年、大宮中)が四球で出塁。藤代の先発の左腕・竹内 悠のボークで二進し、3番郡司 祐稀の投前ゴロで二死三塁とする。迎える4番赤沼 健太(3年、常澄中、右打ち)は、カウント2-1から外角高めのストレートを逆らわず、右中間フェンスにワンバウンドで到達する強烈な適時二塁打を放ち、水戸工が1点を先制する。

 先制を許した藤代は、2回裏、先頭の4番飯塚 幸大(2年、野田二中)が左前安打が出塁し、5番濱渡 遼(3年、取手シニア)のエンドランで一死二塁とするが、水戸工先発の右腕・鈴木 智之(2年、岩間中・中央選抜)に6番小平 賢二郎(3年、都和中)と7番小林 慧太(3年、守谷シニア)を連続三振に切って取られ、反撃できない。

 この試合、水戸工は疲れの残るエースの左腕・後藤 凌太(3年、佐野中、164センチ)の先発を回避し、2年生の鈴木 智之に先発マウンドを託した。鈴木はベンチの期待に応え、強豪・藤代を相手に4回1/3を球数58球、最速132キロ、被安打3、奪三振5、失点0とその大役を見事に果たす。

 4回一死、鈴木は藤代の7番小林に左前安打を許したところで、3年生の後藤にマウンドを譲る。遂に140キロ左腕・後藤の登場だ。
 1対0で水戸工がリードして迎えた6回裏、強力・藤代打線が水戸工・後藤に襲いかかる。藤代は二死無走者から2番文成 文紀(3年、城西中)が中前安打で出塁すると、3番根本 文弥(3年、取手シニア)が初球を狙い打ち右前安打で二死一、三塁とする。迎えた4番飯塚 幸大も右前安打と続き、上位の三連打で1点を返し同点となる。


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力投を見せた藤代の先発・竹内

 その後は9回まで1対1のまま試合は動かない。
 藤代のエース・竹内は水戸工打線から9回までに実に9本もの安打を浴び、6回以外の全てのイニングで、得点圏に走者を背負うという苦しい状況が続く。しかし、竹内は気迫の投球で毎回のピンチを凌ぎ切る。

 試合は延長戦へ。
 粘投する竹内を何とか援護したい藤代打線であったが、連打を浴びた6回以降は緩急の効いた変化球で、的を絞らせない投球の水戸工・後藤を打ち崩すことができない。そんななか、先に勝ち越したのは水戸工だった。

 延長11回表、水戸工の先頭の8番梅田 祐太朗(2年、勝田シニア)が二塁手の脇を強烈なバウンドで抜く安打を放つと、藤代の右翼手が後逸し無死二塁とする。続く9番羽石 柊太(3年、大宮中)が三塁手前に転がす上手いバントで送って一死三塁。迎える打者はここまで5打数2安打と当たっている1番中村 太一(3年、東海南中)だ。中村は、本塁を踏ませない前寄りの守備位置に切り替えた藤代の野手陣の狙いを見透かしたかのごとく、低く強烈な弾道で遊撃手の脇を抜く適時中前安打を放ち、水戸工が2対1とリードする。

 追いかける藤代はその裏、3番根本が遊ゴロ、4番飯塚が左飛で万事休すとなり、代打に柳 沙都史(2年、高崎中、オール県南)が起用されるが中飛に打ち取られゲームセットとなった。
 水戸工にとって、2年生の鈴木智之が先発し藤代に勝利できたことは、夏につながる大きな財産となるゲームであった。エースの左腕・後藤 凌太だけでは、夏に勝ち上がることは難しい。鈴木 智之にとってもこの勝利は自信につながるだろう。

 一方、藤代は好投手を前に、自慢の強力打線を封じ込められる形となったが、6回に見せた上位打線の集中打は見事だった。一発で試合をひっくり返す打力を持つ中軸は非常に魅力だ。試合後、ベンチで泣いている選手もいたことを筆者は見逃さなかった。この敗北が藤代をまた強くさせるだろう。

(文=伊達 康

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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