試合レポート

市立川越vs正智深谷

2014.07.26

市立川越が逆転勝利!16年ぶりの決勝進出!

 波乱など激戦が多かった埼玉大会も、準決勝を迎えた。[stadium]大宮公園球場[/stadium]は内野席がほぼ埋まる盛況ぶりであった。

 第1試合は県立川口、西武文理狭山ヶ丘などの強豪を破った正智深谷準優勝、ベスト4市立川越の一戦だ。

 先制したのは正智深谷。2回裏、7番大澤 竜哉(2年)が四球で出塁すると、大澤が盗塁を仕掛け成功。さらに8番渡部 拓幸(2年)が中前適時打を放ち、1点を先制する。

 正智深谷の先発は高荷 優(3年)。球速は125キロ前後の直球、スライダー、シンカー、チェンジアップを投げ分ける右サイドハンド。微妙にボールを動かすので、打ち難い。
しかも球を低めにしっかりと集めることができており、市立川越打線は攻略に手を焼いた。連打が無理ならば、足を使って、高荷のリズムを崩そうとするが、捕手・大澤の好返球もあり、攻略の糸口をつかむことができない。

 だが市立川越も、5回表、9番前村 英樹(3年)が死球で出塁すると、1番平田 聖和(3年)が右前安打で、一死一、二塁のチャンスをつくる。ここで2番松本 竜生(3年)の犠打が相手内野手の失策を誘い、1対1の同点に。
投手を崩せないならば、野手の失策を誘えばいい。しかし仕掛けなければ何も起こらない。ラインぎりぎり、絶妙に転がした松本の犠打。アウトにしたい正智深谷内野陣は焦りが見られた。その精神的な隙をついた見事な攻撃であった。

 その裏、エース上條 将希(3年)がマウンドに上がる。自分たちに流れを持っていきたいところでのエースの登板。
その上條はいきなり2奪三振と期待通りの立ち上がり。エースが好投すれば、チームも勢いに乗る。


 そして6回表、5番丹羽 功太(3年)の安打で出塁すると、6番澤田 瑞城(3年)の右前安打で無死二、三塁。さらに一死二、三塁となったところで、8番岡本 涼(3年)がスクイズ。正智深谷はウエストをして、外すが、岡本が飛びつきながらもバットに当ててフェアグラウンドに転がした。

 岡本の執念のスクイズで勝ち越しに成功した市立川越。さらに相手野手の敵失もあり、二塁走者も生還し、3対1とする。

 勝ち越した市立川越は8回表も、二死一、三塁のチャンスから、1番平田の右前適時打で、4対1。なおも二死一、三塁から、2番松本の内野安打で、5対1に。松本の盗塁もあり、二死二、三塁とチャンスを広げ、3番奈良 龍之介(3年)が中前2点適時打を放ち、7対1とする。こうなると市立川越の勢いは止められない。4番冨岡 弥夏(3年)が二塁強襲安打を放ち、8対1と点差を広げる。これでコールドの点差に。

 後がない正智深谷は8回裏、1番相馬 直弥(3年)が死球で出塁。二死になって追い込まれたものの、4番藤村 聖哉(3年)の安打で二死一、三塁とすると5番小林 圭人(3年)が高めに入った直球を逃さず、左中間を破る二塁打を放ち、8対3とコールドを阻止する。

 しかし反撃もここまで。市立川越がリードを守りきり決勝進出を決めた。
犠打で仕掛け、正智深谷の守備を乱し、リードしてからはエース上條で逃げ切りを図る市立川越らしい試合運びであった。

 ただ気になったのは、上條が9回表に犠打の際にファールになった打球が、左ひじに当たるアクシデントがあった。大事を取って9回裏は冨岡がマウンドに登ったが、そこが気がかりである。

 こうして決勝進出を決めた市立川越。勝てば甲子園出場は1989年以来、実に25年ぶりの快挙になる。また1989年は旧校名の川越商での出場で、現校名での出場はない。
また公立校としては、1998年に出場した滑川(現・滑川総合)以来の甲子園出場がかかっている。

 市立川越にとっては歴史に名を刻む大きなチャンスを迎えた。

(文=河嶋宗一

【僕らの熱い夏2014 第40回】市立川越高等学校(埼玉)
打てるチームと思っているのですが、守り勝つ精神的に強いチームを!一点差で勝つ野球が目標です!

【野球部訪問:第115回 市立川越高等学校(埼玉)】

市立川越vs正智深谷 | 高校野球ドットコム

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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