試合レポート

明徳義塾vs健大高崎

2014.10.17

明徳義塾で始まり、明徳義塾で終わった長崎国体 


【4回表のクロスプレー】

 3日間、爽やかな秋晴れの中、行われた長崎がんばらんば国体。主役の座を掴んだのは明徳義塾だった。

 国体の開幕戦で登場した明徳義塾沖縄尚学戦(試合レポート)で、エースで4番の主将・岸潤一郎(3年)がサイクル安打を達成。岸は敦賀気比戦(試合レポート)でも本塁打を放ち、打者として大活躍。さらに岸の前後を打つ選手たちも活躍を見せ、攻守ともに完璧な内容を残し、決勝進出を決めた。四国勢では2007年の今治西以来の優勝を狙う。

 対する健大高崎東海大四戦(試合レポート)で7盗塁、日本文理戦(試合レポート)でも4盗塁を決め、自慢の機動力を発揮。ここ数年で、知名度を一気に高めた新興勢力として、このままの勢いで頂点を掴みたいところだ。

 試合は決勝戦に相応しい緊張感のあるものとなった。
先制したのは明徳義塾。2回裏、敵失、四球で一死一、二塁のチャンスから9番高野 航平(3年)の二ゴロで健大高崎の守備の乱れの間に1点を先制する。

 1点を先制した後、明徳義塾の先発・岸、健大高崎の先発・松野 光次郎(3年)が粘り強い投球で、お互い点を与えない。

 5回まで1対0と明徳義塾リードで試合を折り返す。
明徳義塾にとって大きかったのは、4回表。一死三塁の場面で、5番柘植 世那(2年)の投ゴロで、三塁走者を挟殺でアウトに打ち取り、二死二塁。続く6番山上貴之(3年)の中前安打で、二塁走者の柘植が本塁に突っ込むが、センター・大谷 勇希(3年)の好返球で、タッチアウト。ピンチを凌いだ。
もし1点を許していたら、その後の展開は違っていたかもしれない。守備で流れを渡さなかったことは大きかった。

第69回国民体育大会~長崎がんばらんば国体2014~

【力投を見せる岸潤一郎(明徳義塾)】

 反撃したい健大高崎は6回表、一死から2番星野 雄亮(3年)が左翼線二塁打で、一死二塁。ここで2打数2安打の脇本直人(3年)。明徳義塾バッテリーは脇本を歩かせて、4番長島 僚平(3年)と勝負する。
ここで健大高崎はダブルスチール。星野は三塁を陥れる。さらに捕手の送球の乱れで、星野が生還し、同点!一塁走者の脇本は三塁へ。長島の中犠飛で勝ち越しに成功する。足で逆転に成功する。

 逆転を許すも、その後はしっかりと締める岸。やはり今までの相手とは違い、簡単に流れを渡さない投球に、健大高崎の青柳監督も、
「さすが百戦錬磨の投手。全く違いますね。こちらがプレッシャーをかけても、全く動じないです。素晴らしかった」と脱帽した。

 反撃したい明徳義塾は7回裏、一死から敵失、6番水野 克哉(3年)の左前安打で、一、二塁のチャンスを作ると7番森 奨真(3年)が右翼線適時二塁打を放ち、同点。二死二、三塁となって、9番大西 主将(3年)の二塁内野安打で勝ち越しの1点を挙げる。

 自分のペースを乱さない投球を続ける岸。
昨日の試合後、2戦連続の完投に何度も「しんどいです、しんどいです」と口にしていただけに疲労度はかなりのモノ。昨日の夜は酵素風呂に入るなどして、疲労回復に努めてきた。まさに気力を絞って投げているといっていいだろう。

 そして9回表、いよいよ優勝まであと3人。
先頭は俊足強打の3番脇本。岸は最後の力を振り絞り、全力投球。140キロを超えるのがやっとだったが、ここにきて常時140キロを計時。脇本も岸の速球に押され、最後は140キロのストレートがインローに決まり見逃し三振!4番長島は左飛、5番柘植を二ゴロに打ち取り、試合終了。明徳義塾が初優勝を収めた。

第69回国民体育大会~長崎がんばらんば国体2014~


【優勝を決めた明徳義塾ナイン】

 攻守ともに素晴らしい内容を残し、優勝を見せた明徳義塾。ここまで打撃で勝ち上がってきたが、最後は非常に緊張感のある試合内容であった。

 勝利を収めた馬淵監督は
「勝ちたいという気持ち、執念が少しだけうちが上回っていたのかな。あとは投手。そこの差はあったと思う」
1点差のゲームでも、投手の力量の差は大きいと説明する馬淵監督。試合について振り返ってみると、決勝までの3試合は打撃で勝ち上がってきた明徳義塾だったが、決勝戦では盤石な試合運びと緻密な守備で、改めて試合巧者ぶりを見せてくれた。

 健大高崎の青柳監督は、
「岸君が9回にきて140キロを連発。本当に底力のある投手だと思いました。試合では明徳義塾さんが12安打に対し、うちは6安打。そして失策も明徳義塾さんは1つに対し、うちは3つ。倍以上の差がつけられている。全国優勝するためにはまだ大きな差を感じました」
淡々と試合について振り返った。
とはいえ、あと一歩で明徳義塾に勝てると思わせる試合内容を見せた健大高崎も十分に素晴らしかった。

 そして今大会は、岸の活躍が目立つ大会であった。
投げては3試合に登板し、27イニングで、自責点2。防御率0.66と抜群の安定感を示し、打者としては19打数12安打と大当たり。打率.631、2本塁打、9打点とまさに文句なしの成績である。

 岸はこの内容について「出来過ぎ」と振り返り、今大会について
「夏は負けて終わっていたので、国体で勝ち進むうちに、最後は勝って終わりたいと思うようになりました。とにかく連戦だったので、体は限界でしたが、こうやって勝つことが出来て本当に嬉しいです。僕はまだ野球を続けますが、高校野球に関しては良いイメージで完全燃焼することが出来ました」

 勝って高校野球を終われた喜び。多くの球児がそうありたいと思い、日々励んできただろう。
まさに今大会は明徳義塾で始まり、明徳義塾で終わった。攻守ともに強烈なインパクトを残した明徳義塾の活躍ぶりは、長崎の、いや全国の高校野球ファンに強烈な印象を与えたに違いない。

(文=河嶋宗一

第69回国民体育大会~長崎がんばらんば国体2014~

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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