試合レポート

八王子vs聖パウロ学園

2016.04.11

八王子9回サヨナラ逆転勝ち。聖パウロ惜しい序盤の逸機

八王子vs聖パウロ学園 | 高校野球ドットコム

好投の松尾(聖パウロ学園)

 ともに八王子市にある強豪同士。しかも聖パウロ学園の勝俣 秀仁監督は、八王子の出身で、両校は毎年練習試合を行っている因縁の対決は、劇的な幕切れで八王子が勝利した。

 9回表の聖パウロ学園の攻撃が終わった時点で、聖パウロ学園の安打数は12、対する八王子は3。この安打数の差にもかかわらず、1点しかリードできなかったことが、9回裏の逆転劇を呼んだ。 

 聖パウロ学園は、八王子の先発、背番号1の左腕・奥村 天を攻める。1回表は2本の安打と四球で一死満塁のチャンス。しかし5番の滝口 孝太は二ゴロで、併殺となり無得点。

 2回表は9番・前田 瑠伽の中前安打で聖パウロ学園が先取点を挙げ、八王子は投手を、奥村から同じく左腕の2年生・早乙女 大輝に交代。聖パウロ学園は、なおも一死一、三塁のチャンスが続いていたが、1番・山口 裕也は二ゴロで、またも併殺で1点止まり。波に乗り切れない。

 それでも聖パウロ学園は5回表、走者2人を置いて3番・菅野 岳史がセンターオーバーの三塁打を放ち2点を入れた。「つないでくれたので、応えなければと思いました」と菅野は語る。

 聖パウロ学園の先発、背番号3の松尾 奎吾は、フォークボールやスライダーなど、落ちる球が効果的に決まり、八王子打線を抑える。いい当たりが出ても野手の正面であったりしたため、5回まで死球が一つあるだけの無安打の好投が続いていた。

 ところが6回裏、松尾のボールが高めに浮きだし、連続四球。1番山口駿の投前バントを、松尾は三塁に投げたが間に合わず無死満塁に。2番・竹中 裕貴のこの試合チーム初安打となる中前安打で、まず1点を返す。続く途中出場の3番・椎原 峻は二ゴロで併殺となったが、その間に三塁走者が生還した。

 崩れそうになった松尾であるが、その後は持ち直し、7、8回は無失点で切り抜けた。それでも塁上を賑わすのは聖パウロ学園で、八王子は防戦に追われていたが、9回裏にドラマが待っていた。


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勝利の立役者・早乙女(八王子)

 一死後、5番・保條 友義は左前安打。6番・佐藤 天寅の三ゴロを聖パウロ学園の三塁手・大橋 純がしっかり体で止めて二塁はアウト。続く7番・櫻井 陸朗は左前安打で二死一、三塁とし、代打に神澤 俊介を起用。1回戦でも代打で適時打を打っている神澤に賭ける。神澤は期待に応えて左前安打。二塁走者の佐藤は、本塁を突き、クロスプレーとなったが、セーフとなり、土壇場で八王子が追いついた。

 打席には2回途中から登板し、我慢の投球を続けていた早乙女。「ストレートを狙っていました」と語る早乙女は、その通りの初球ストレートを流し、左前安打に。八王子が土壇場で逆転サヨナラ勝ちを収めた。「最後は選手たちの執念でした」と八王子の安藤 徳明監督。特に途中登板の早乙女は、粘り強い投球で試合を作り、最後は自らのバットで、サヨナラ勝ちした。

 昨年までは、左腕のエース・横森拓也拓殖大)というエースを中心にしたチームであった。早乙女も横森から腕の振り方などを学んだという。しかし今年は、「途中交代の選手がよく活躍している」と安藤監督が言うように、全員野球のチームになっている。

 この結果、西東京勢で準々決勝に勝ち進んだのは、東海大菅生八王子だけになった。八王子は、夏は事実上のトップシードである、四隅のシードが決まった。しかし、「今年はノーシードに力のあるチームがあまりに多い」と語る安藤監督は、「この大会を経験したことは、早乙女にも財産になっています。次は(二松学舎大附の)大江君を打つ練習をして、チームとして何かを掴んでくれれば」と語った。

 一方敗れた聖パウロ学園の主将である菅野は、「悔しい気持ちは残ります」と、感情をかみ殺すように語った。佼成学園などを撃破して勝ち進んできた聖パウロ学園は、秋よりは、間違いなくチーム力が上がっている。あとは勝俣監督が「ここ一番の集中力をいかにつけるかです」と語るように、点を取れる時に徹底して取り、ここ一番で守れる底力をいかにつけるかが、夏までの課題になった。

(取材・写真=大島 裕史

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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