試合レポート

山村学園vs水戸商

2019.05.18

移り変わる流れを制した山村学園がサヨナラ勝ち!

山村学園vs水戸商 | 高校野球ドットコム
サヨナラ勝ちに喜ぶ選手達(山村学園)

【熱戦の模様をギャラリーでチェック!】

 今日から開幕した、第71回春季関東大会。
[stadium]上尾市民球場[/stadium]で行われた山村学園vs水戸商の一戦は、流れが両校交錯する大熱戦となった。

 まずマウンドに、山村学園先発の和田朋也が上がる。埼玉県大会では、要所の試合に先発してきただけにこの試合も大事な初戦とみた起用だろう。その和田は、決して調子が良いとは言えない立ち上がりとなる。

 水戸商の1番・髙橋優太にライト線にツーベースを許すと、制球力には定評のある和田だが2四死球を与える。一死、満塁で5番・森田凌がセンター前にタイムリーヒット放ち出鼻を挫く。

 対する水戸商先発は同じくエースの小林嵩が上がる。
166㎝と背は小柄だが、足腰の体つきは努力の証と見て伺える。左足を大きく上げて、降ろす反動でトップを作り投球していく。そして最大の持ち味は、抜群のコントロール。ストレートはもちろんスライダーやチェンジアップでカウントを稼いでいく本格派右腕と言っていい。投球に幅と奥行きがあり、打者は球種やコースを絞ることが難しい投手。

 その小林の立ち上がりを山村学園も攻め立てる。
1番・平野裕亮が相手のエラーで出塁し塁を進めると、3番・小林匠の内野ゴロの間に同点に追いつく。

 その後、3回表に4番・小林のタイムリーヒットで勝ち越しに成功する。

 試合が目まぐるしく動き出したのは、整備後の山村学園の攻撃。
一死後、2番・横田修大がレフトオーバーのツーベースで出塁。続く、3番・小林がセンター前に弾き返し振り出しに戻す。振り返ると、1球前に小林の変化球は大きく前で跳ねて暴投。同点のランナーを背負った場面で2球同じ球は来ないと踏んだんだろう。まさしく、読みがちといったところであった。ピンチは、続き4番・橋本大樹を迎える。

 前の2打席は、ストレートに差し込まれ2度センターフライに倒れている。確かに打撃フォームを見るとトップが、非常に浅く開き気味で速球にはどうしても詰まる。ただ、打席での雰囲気やタイミングの取り方は魅力を感じる打者。その橋本に、水戸商バッテリーは変化球で攻める。打ち気に走る橋本は、簡単に変化球で追い込まれてしまう。しかし、その4球目の高めに浮いた変化球の失投を逃さなかった。泳ぎながら放った打球は、ライナー性でスタンドに飛び込み2点勝ち越しホームランで山村学園が主導権を握ったと確信した。


山村学園vs水戸商 | 高校野球ドットコム
勝ち越し本塁打を放った橋本大樹(山村学園)

 茨城県を代表する水戸商も黙ってはいない。9番・中山大靖がヒットで出塁する。後続が続き一死、満塁とすると4番・小林は押し出しの死球をもぎ取り、まずは1点返す。そして、5番・森田がこの日2本目のタイムリーヒットで2者が還り勝ち越しに成功。シーソーゲームで流れが移り変わる試合は、9回に決着がついた。

 8回裏に同点に追いつき、5対5で迎えた山村学園の9回裏の攻撃。
先頭の高野大斗が左中間へのツーベースで出塁。7番・和田は送りバントを決行するも送れずに一死となる。9番・川島優も繋げず、二死、一二塁で1番・平野との勝負。その平野は、コンパクトに振りぬいた打球はセンター前に抜けて勝負あり。見事なサヨナラゲームで、明日へ試合に繋いだ。

 敗れた、水戸商だが和田のストレートに標準を合わせて振れる打者の多さが際立った。
決してバットを短く持ってコンパクトに振るわけではない。全員が長くバットを持ち、追い込まれてから軽打に切り替えていき単打を重ねていった。2本のタイムリーヒットを放った森田はその象徴だろう。打撃フォームに無駄な動きは一切ない。肩にバットを乗せて柔らかくバットを使う。2本目のタイムリーヒットでは、アウトコースのストレートに振り負けることなく右に押っ付けて打つ技術力の高さを見せた。要所の場面では、まともな勝負させてもらえないほど打撃力が上位にあるだけに、下位打線がチャンスを生かすかどうかで夏の順位が決まってくるだろう。

山村学園vs水戸商 | 高校野球ドットコム
熱投を披露した小林嵩(水戸商)

 勝利した山村学園も非常に投打のバランスの取れたチームであった。
打線の中軸である、小林・橋本・櫻澤一哉にはバッテリーも相当神経をすり減らしただろう。
中でも橋本は、守備としての貢献度も非常に目立つ。初回に相手のバントを瞬時に三塁へ送球する判断力。そして、イニング間の二塁送球は安定して1.9秒台を出す肩の強さ。この橋本の肩に加えて、和田の牽制術のおかげもあってか盗塁する機会すら与えなかった。このバッテリー中心にリズムを生み出し、ある程度の失点も想定に入れながら打線でカバーしていく戦い方になるだろう。

 勝利した山村学園は、明日の第1試合で習志野との対戦が決まっている。
習志野の機動力を和田・橋本バッテリーがどう抑えていくかの構図となるだろう。

 明日の[stadium]市営大宮球場[/stadium]も目が離せない1戦になることを予感させた試合であった。

(文・=編集部

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.06.30

明徳義塾・馬淵監督が閉校する母校のために記念試合を企画! 明徳フルメンバーが参加「いつかは母校の指導をしてみたかった」

2024.06.30

突然の病で右半身が麻痺した「天才野球少年」が迎える最後の夏 あきらめなかった甲子園出場の夢、「代打の一打席でもいいから……」

2024.06.30

【夏の甲子園・四国地区好カード一覧】いきなりビッグ右腕対決!?徳島では阿南光と生光学園が2回戦で対戦か!?

2024.06.30

【夏の甲子園・近畿地区好カード一覧】京都国際 vs.京都成章、市立和歌山vs.田辺! 初戦から激戦必至

2024.06.30

北海が道内29連勝!9大会連続46回目の南北海道大会出場を決める【2024夏の甲子園】

2024.06.28

元高校球児が動作解析アプリ「ForceSense」をリリース! 自分とプロ選手との比較も可能に!「データの”可視化”だけでなく”活用”を」

2024.06.28

最下位、優勝、チーム崩壊……波乱万丈のプロ野球人生を送った阪神V戦士「野球指導者となって伝えたいこと」

2024.06.26

【北北海道】北見支部では春全道4強の遠軽が登場、クラーク記念国際と好勝負演じた力見せる【2024夏の甲子園】

2024.06.27

高知・土佐高校に大型サイド右腕現る! 186cm酒井晶央が35年ぶりに名門を聖地へ導く!

2024.06.30

明徳義塾・馬淵監督が閉校する母校のために記念試合を企画! 明徳フルメンバーが参加「いつかは母校の指導をしてみたかった」

2024.06.28

元高校球児が動作解析アプリ「ForceSense」をリリース! 自分とプロ選手との比較も可能に!「データの”可視化”だけでなく”活用”を」

2024.06.28

最下位、優勝、チーム崩壊……波乱万丈のプロ野球人生を送った阪神V戦士「野球指導者となって伝えたいこと」

2024.06.26

【北北海道】北見支部では春全道4強の遠軽が登場、クラーク記念国際と好勝負演じた力見せる【2024夏の甲子園】

2024.06.24

愛媛の組み合わせ決定!今春優勝の松山商・大西主将は「どのチームと闘っても自信をもってベストなゲームをしたい」シード4校主将が意気込み語る!

2024.06.23

プロ注目の大阪桐蔭・徳丸が大学生相手に決勝アーチ!直近3週間5本塁打と量産態勢!2年ぶり夏甲子園へ強打者の勢い止まらず!