山村学園vs水戸商
移り変わる流れを制した山村学園がサヨナラ勝ち!
サヨナラ勝ちに喜ぶ選手達(山村学園)
今日から開幕した、第71回春季関東大会。
[stadium]上尾市民球場[/stadium]で行われた山村学園vs水戸商の一戦は、流れが両校交錯する大熱戦となった。
まずマウンドに、山村学園先発の和田朋也が上がる。埼玉県大会では、要所の試合に先発してきただけにこの試合も大事な初戦とみた起用だろう。その和田は、決して調子が良いとは言えない立ち上がりとなる。
水戸商の1番・髙橋優太にライト線にツーベースを許すと、制球力には定評のある和田だが2四死球を与える。一死、満塁で5番・森田凌がセンター前にタイムリーヒット放ち出鼻を挫く。
対する水戸商先発は同じくエースの小林嵩が上がる。
166㎝と背は小柄だが、足腰の体つきは努力の証と見て伺える。左足を大きく上げて、降ろす反動でトップを作り投球していく。そして最大の持ち味は、抜群のコントロール。ストレートはもちろんスライダーやチェンジアップでカウントを稼いでいく本格派右腕と言っていい。投球に幅と奥行きがあり、打者は球種やコースを絞ることが難しい投手。
その小林の立ち上がりを山村学園も攻め立てる。
1番・平野裕亮が相手のエラーで出塁し塁を進めると、3番・小林匠の内野ゴロの間に同点に追いつく。
その後、3回表に4番・小林のタイムリーヒットで勝ち越しに成功する。
試合が目まぐるしく動き出したのは、整備後の山村学園の攻撃。
一死後、2番・横田修大がレフトオーバーのツーベースで出塁。続く、3番・小林がセンター前に弾き返し振り出しに戻す。振り返ると、1球前に小林の変化球は大きく前で跳ねて暴投。同点のランナーを背負った場面で2球同じ球は来ないと踏んだんだろう。まさしく、読みがちといったところであった。ピンチは、続き4番・橋本大樹を迎える。
前の2打席は、ストレートに差し込まれ2度センターフライに倒れている。確かに打撃フォームを見るとトップが、非常に浅く開き気味で速球にはどうしても詰まる。ただ、打席での雰囲気やタイミングの取り方は魅力を感じる打者。その橋本に、水戸商バッテリーは変化球で攻める。打ち気に走る橋本は、簡単に変化球で追い込まれてしまう。しかし、その4球目の高めに浮いた変化球の失投を逃さなかった。泳ぎながら放った打球は、ライナー性でスタンドに飛び込み2点勝ち越しホームランで山村学園が主導権を握ったと確信した。
勝ち越し本塁打を放った橋本大樹(山村学園)
茨城県を代表する水戸商も黙ってはいない。9番・中山大靖がヒットで出塁する。後続が続き一死、満塁とすると4番・小林は押し出しの死球をもぎ取り、まずは1点返す。そして、5番・森田がこの日2本目のタイムリーヒットで2者が還り勝ち越しに成功。シーソーゲームで流れが移り変わる試合は、9回に決着がついた。
8回裏に同点に追いつき、5対5で迎えた山村学園の9回裏の攻撃。
先頭の高野大斗が左中間へのツーベースで出塁。7番・和田は送りバントを決行するも送れずに一死となる。9番・川島優も繋げず、二死、一二塁で1番・平野との勝負。その平野は、コンパクトに振りぬいた打球はセンター前に抜けて勝負あり。見事なサヨナラゲームで、明日へ試合に繋いだ。
敗れた、水戸商だが和田のストレートに標準を合わせて振れる打者の多さが際立った。
決してバットを短く持ってコンパクトに振るわけではない。全員が長くバットを持ち、追い込まれてから軽打に切り替えていき単打を重ねていった。2本のタイムリーヒットを放った森田はその象徴だろう。打撃フォームに無駄な動きは一切ない。肩にバットを乗せて柔らかくバットを使う。2本目のタイムリーヒットでは、アウトコースのストレートに振り負けることなく右に押っ付けて打つ技術力の高さを見せた。要所の場面では、まともな勝負させてもらえないほど打撃力が上位にあるだけに、下位打線がチャンスを生かすかどうかで夏の順位が決まってくるだろう。
熱投を披露した小林嵩(水戸商)
勝利した山村学園も非常に投打のバランスの取れたチームであった。
打線の中軸である、小林・橋本・櫻澤一哉にはバッテリーも相当神経をすり減らしただろう。
中でも橋本は、守備としての貢献度も非常に目立つ。初回に相手のバントを瞬時に三塁へ送球する判断力。そして、イニング間の二塁送球は安定して1.9秒台を出す肩の強さ。この橋本の肩に加えて、和田の牽制術のおかげもあってか盗塁する機会すら与えなかった。このバッテリー中心にリズムを生み出し、ある程度の失点も想定に入れながら打線でカバーしていく戦い方になるだろう。
勝利した山村学園は、明日の第1試合で習志野との対戦が決まっている。
習志野の機動力を和田・橋本バッテリーがどう抑えていくかの構図となるだろう。
明日の[stadium]市営大宮球場[/stadium]も目が離せない1戦になることを予感させた試合であった。
(文・=編集部)