試合レポート

浦和学院vs浦和実

2020.08.19

浦和学院、浦和実業・豆田へのリベンジ達成

 浦和学院の前に2年連続で立ちはだかるのはプロ注目・浦和実豆田泰志だ。[stadium]県営大宮球場[/stadium]で行われた南部地区の雌雄を決する一戦は1点を争う好ゲームとなった。

 浦和学院美又王寿(3年)、浦和実豆田泰志(3年)のプロ注目の両エースが登板したこの試合、浦和実はいきなり大きなチャンスを掴む。

 初回、浦和実浦和学院・美又の立ち上がりを攻め、先頭の山田虎太郎(3年)がセンター前ヒットを放ち出塁すると、続く松村裕大(3年)がきっちりと送り一死二塁とする。さらにここで、3番・吉田浩隆(3年)、4番・熊谷宇哲(2年)が連続四球を選び一死満塁とチャンスを広げると、浦和実ベンチは続くこの日スタメンの板垣孝太(3年)の所でスクイズの指示を出す。だがこれが空振りで失敗に終わると、その後板垣自身も三振に倒れ結局この回無得点に終わる。

 これが後々まで大きく響くこととなる。

 一方の浦和実・豆田は初回まずまずの立ち上がりを見せていたが、2回裏・浦和学院打線に早くも捉えられる。浦和学院はこの回先頭のオコーリ・ジャスティン・健(3年)がレフト前ヒットを放ち出塁すると、続く齋藤知哉(3年)の犠打がファーストの拙い守備もあり内野安打となり無死一、二塁となる。
 一死後8番・美又のボテボテのピッチャーゴロの間にそれぞれ進塁し、二死二、三塁とすると、続く樋口結希斗(3年)がセンター前へ先制タイムリーを放つ。だが、二走・齊藤はこの打球で三塁自重し後続も倒れ1点でこの回の攻撃を終える。

 浦和学院・美又だが2回以降も毎回走者を背負い3イニングで4四球を与えるなどピリッとしない。走塁面や美又の出来もあったか思わず3回裏攻撃中に浦和学院・森監督はベンチ内で選手を集め一喝する。

 すると、効果覿面。4回表は浦和学院・美又が目を覚まし、この回3つのアウトを全て三振に取るなど徐々にエンジンがかかり始める。

 迎えた5回裏、浦和学院は先頭の里飛鳥(3年)がセンター前ヒットを放ち出塁すると、続く池田龍心(3年)に対し浦和学院ベンチは一旦強攻の指示を出すが追い込まれると一転スリーバントで送り一死二塁とする。ここで3番・小櫻耕介(3年)の打球はファーストの手前でイレギュラーしライト前タイムリーとなる。貴重な追加点が浦和学院に入る。


 このままでは終われない浦和実は6回表、前日まで5番を打ちながらこの日スタメンを外れていた佐藤晴(2年)が4番への代打で出場すると期待に応えレフト前ヒットを放ちチャンスメイクする。だが、続く板垣は送れず、二死後7番・古川武蔵(3年)がセンター前ヒットを放ち二死一、二塁とするが後続が倒れまたしても無得点に倒れるなどどうしても1点が遠い。

 このまま2対0で終わるかと思われた最終回、浦和学院ベンチは、完封ペースの美又をライトに回し、マウンドに左腕の廣咲悠雅(3年)を送る。

 おそらく左打者が5人続くということで代えたのであろうが、大宮東の左腕・河内を左打者が攻略していった経緯のある浦和実打線は浦和学院・廣咲を苦にしない。

 この回先頭の今井健太郎(2年)が四球を選び出塁すると、続く山田もレフト前ヒットを放ち無死一、二塁と絶好の同点機を迎える。だが、2番・松村が送れず続く吉田も三振に倒れ二死一、二塁とチャンスが萎む。それでも、途中出場の4番・佐藤があわやホームランというライトフェンス直撃のタイムリー二塁打を放つ。そしてこの試合のハイライトを迎える。

 一走・山田も本塁を狙うが、ライトでクッション処理した美又が中継を介さず何と本塁までのワンバウンドで返球する大遠投を見せる。結果は本塁憤死でゲームセット。結局、2対1で逃げ切った浦和学院が南部地区大会の優勝を決め、各地区の優勝校が集まるメットライフドームへ進出した。


 まずは敗れた浦和実業だが、如何せん今回の大宮東埼玉栄に勝利しても連戦で浦和学院を迎えるという南部地区のブロックは厳しかった。昨夏浦和学院打線を2安打完封した豆田もさすがに昨日終盤リリーフしての連投ではこの日フルスロットルとはいかなかった。
 それでも昨夏見せたような徹底したインコース攻めではなく、相手がその対策を立ててくると見るや、この日は時折変化球を交えた投球を見せるなど成長した姿は見せた。打線もこの日は浦和学院を上回る9安打を放ったが、初回のスクイズ失敗に始まり、毎回のように得点圏に走者を進めながら、他にも犠打失敗が2つとなかなかスムーズに走者を進められず、この日は持ち味である試合巧者ぶりが影を潜めた。

 とはいえ、時期的な問題もあり3年生が主力級3人を含め9人が退部というピンチの中、最激戦区を突破したこれまでの戦いぶりは立派だ。今大会で佐藤や熊谷、今井など2年生の好打者達がこの大会を経験し活躍できたことは大きな収穫であろう。今年の2年生の代はいきなり秋の大会へ突入するだけに、公式戦の経験という面での優位性は特に今秋に関しては保てるであろう。

 一方の浦和学院は、この日は満を持して登板したプロ注目・美又であったが、今大会初先発ということもありピリッとしなかったが要所は締めた。打線もヒット数では相手に上回られながらも勝負所で1本が出る勝負強さは健在だ。

 結局3年生だけで好投手・豆田擁する浦和実に競り勝ち昨夏のリベンジを果たす結果となった。
 そして何より、最終回のダイレクト返球のシーンはセオリーを考えても外野手経験者ではないピッチャーの美又だからこそできたプレーであろう。何はともあれ勝ちは勝ちだ。

 これでメットライフドーム行きを決めた浦和学院の次の相手は昌平だ。昌平打線はとにかく強力で完成度が高い。特に旧チームから不動の上位打線はどこからでも一発が飛び出す。この試合もエース美又が頭から行くしかないであろうが、もし美又が打ち込まれるようなことがあると浦和学院といえども苦戦が予想される。試合は美又対昌平打線という構図になるであろう。

(記事=編集部

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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