試合レポート

大島vs鹿児島工

2021.09.27

大島vs鹿児島工 | 高校野球ドットコムこの試合のプレー写真は、記事の最終ページの下部に表示されています

好判断が勝機導く・大島

大島vs鹿児島工 | 高校野球ドットコム
大島・大野 稼頭央

 春4強、夏8強に導いた鹿児島大島の2年生左腕・大野 稼頭央に注目が集まる中、より目立っていたのは鹿児島工の左腕・椎原 稜斗(2年)だった。

 140キロ超の大野と対照的に直球の最速は120キロ台だが、独特な間合いとテンポで丁寧に緩急をつけた投球で鹿児島大島打線に的を絞らせない。8回までは散発5安打、二塁も踏ませなかった。

 椎原の力投に応えるように打線も奮起。3回は二死一塁からけん制悪送球で三塁まで進み、相手のエラーで先制した。8回には一死二、三塁として3番・折小野 隼斗(2年)の犠牲フライで貴重なダメ押し点を得る。

 8回まで三塁も踏めず、力投を続けるエース大野を打線が援護できなかった鹿児島大島だったが、土壇場9回裏に、ようやく粘りを見せる。

 4番・西田 心太朗(2年)がセンター前ヒット、5番・中 優斗(2年)がレフト前ヒットと連打で続き、6番・前山 龍之助(2年)の送りバントは内野安打となって無死満塁とする。

 途中出場の7番・白畑 勝喜郎(2年)が死球、押出しで1点を返し、9番・青木 蓮(2年)の一ゴロエラーで同点に追いついた。なおも続いたサヨナラの好機は生かせず延長へ。

 12回裏、二死から粘って満塁とし8番・田邊 瑛吉(1年)の四球押出しで3時間12分の死闘に決着がついた。

 鹿児島大島は劣勢の展開を辛うじて覆した。塗木哲哉監督は「選手個々の判断ミスが多かった。打者もきれいに打とうとし過ぎて、本来の打撃ができなかった」は反省や課題が多く見つかった薄氷の勝利を振り返った。

 エラーが失点につながり、練習で取り組んでいた内野の連係プレーがうまくはまらず、進塁を許した。打線は緩急を丁寧に使い分ける相手左腕を見極め切れず、8回まで三塁が踏めず攻略の糸口が見出せなかった。奪った3得点は2つの押出しとエラー。タイムリーは最後まで出なかった。

 反省しきりの内容の中で、指揮官が唯一勝因に挙げたのは、12回裏の三塁コーチャー・竹山 陸斗(2年)の好判断だった。

 二死から粘って一、二塁。7回から竹山の代打で出場した7番・白畑がセンター前ヒットを放つ。通常ならコーチャーは一か八か二走を本塁に突入させることが多い。ベンチの塗木監督も「回せ!」と指示を出していた。

 だが竹山は三塁で止めた。「センターはワンバウンドで捕球したから、バックホームで刺すには絶好のタイミング。自分も外野手だから、回してくれた方が逆に『ラッキー』と相手は思うはず」と考えた。センターからは案の定絶好球が返ってきた。微妙なタイミングだが、回していたらクロスプレーでアウトになっていた可能性は高い。二死満塁と好機は継続し、最後は4連続ボールの押出し四球で勝利が転がり込んだ。

 外野手としての自分の感性を信じ、勇気を持って下した竹山の判断が、最後の勝機を導いた。塗木監督は「ベンチの指示とは違っていたが、自分の判断がしっかりできたファインプレー」とたたえていた。

(取材=政 純一郎

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.06.21

なぜ高校野球の新たなリーグ戦は拡大し続けているのか?『チームのために個人がいる』ではなく『個人の成長のためにチームがある』~野球指導者・阪長友仁のビジョン後編~【『新しい高校野球のかたち』を考えるvol.7】

2024.06.21

「10年後、日本の野球界は行きづまる」一人の野球指導者の危機感が、アマチュア球界を変える新リーグを生んだ~野球指導者・阪長友仁のビジョン前編~【『新しい高校野球のかたち』を考えるvol.6】

2024.06.21

夏のベンチ入りを外れた千葉強豪2校の3年生が行う”涙の引退試合”、野球部以外の生徒たちも駆けつけて……

2024.06.20

大分の県立校にドラフト候補現る! この春急成長した148キロ右腕・金田龍乃介は2回戦で明豊と激突の可能性! プロ入りがかかる投球に期待<高校野球ドットコム注目選手ファイル・コム注>

2024.06.20

春夏連続甲子園出場をかける山梨学院は、初戦で笛吹と対戦【2024夏の甲子園】

2024.06.21

なぜ高校野球の新たなリーグ戦は拡大し続けているのか?『チームのために個人がいる』ではなく『個人の成長のためにチームがある』~野球指導者・阪長友仁のビジョン後編~【『新しい高校野球のかたち』を考えるvol.7】

2024.06.16

大阪桐蔭、山梨学院、慶應義塾…強豪校・名門校の昨年度卒業生はどの進路を歩んだのか?【卒業生進路一覧】

2024.06.18

今夏埼玉の注目野手18人! ドラフト1位級の花咲徳栄スラッガーを筆頭に浦和学院・昌平らに大型選手が揃う【埼玉注目野手リスト】

2024.06.19

夏の兵庫大会のヒーロー候補21人!報徳学園・今朝丸、神戸弘陵・村上の「151キロ右腕二人」が筆頭格!投打にタレント揃いの東洋大姫路にも注目

2024.06.18

激戦区・兵庫の組み合わせ決定!センバツ準V報徳学園は舞子と明石北の勝者と、3連覇狙う社、プロ注目右腕・槙野遥斗擁する須磨翔風など注目校の初戦は!?【2024年夏の甲子園】

2024.05.31

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在34地区が決定、佐賀では佐賀北、唐津商、有田工、龍谷がシードに

2024.05.25

首都2部優勝の武蔵大の新入生に浦和学院の大型左腕、左の強打者、昌平の主軸打者など埼玉の強豪校の逸材が入部!

2024.05.24

春季近畿大会注目選手17人! 智辯和歌山の大型右腕、大阪学院大高の全国トップレベル遊撃手、天理のスラッガーコンビら逸材がこぞって出場!

2024.05.23

【鹿児島NHK選抜大会展望】本命・神村学園、対抗馬・鹿児島実、2強の牙城を崩すのは?

2024.05.25

【長崎】長崎北、長崎日大、創成館などが勝利<NHK杯地区予選>