Interview

女子ソフト代表・上野由岐子投手 21年の現役生活に繋がった一流のコンディショニング術

2021.10.13

 東京五輪女子ソフトボールで、日本代表金メダル獲得の立役者と呼ぶに相応しいのが、鉄腕エース・上野由岐子投手(ビックカメラ高崎)だろう。

 大会では全6試合のうち4試合に先発と獅子奮迅の投球を見せ、特に決勝では1次リーグ最終戦で敗れたライバル米国と対戦。後藤希友投手(トヨタ自動車)に一度マウンドを譲ったものの、最終回に再登板してして無失点。13年前の北京五輪に続く大会連覇、そして胴上げ投手となった。

 上野投手は今年で現役21年目の39歳。ベテランでありながら、最前線でチームを引っ張り続けることができる背景には、若手時代から積み上げてきたメンタルコントロール術と日々のコンディショニングがある。

 vol.2の今回は、トップレベルのパフォーマンスを維持するためのコンディショニングについて語っていただいた。

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女子ソフト代表・上野由岐子投手 金メダルを引き寄せた柔軟なメンタルコントロール術

体の声を聞くことは怪我の防止にも繋がる

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優勝が決まった瞬間、仲間たちと喜びを分かち合う上野由岐子投手

 メンタルコントロールについて伺った前回、不確定要素の多いゲームの中で、いかにその場その場で柔軟に対応することの重要性を語った上野投手だが、コンディショニング術においても基本姿勢は同じだ。

 自身の体が何を求めているのかを常に意識し、決めごとは作らずその時その時に最も必要だと感じる行動を取っていく。

 東京五輪の試合前も、グラウンドコンディションや体調、筋肉の状態などを鑑みて調整を行った。
 「普段は土のグラウンドで練習をやっているのですが、今回は人工芝でのプレーだったので、体への反応が普段と全然違いました。事前練習の次の日も、背中やハムストリングといった体の裏側に張りを感じ、力の出し加減や重心の置き方を変えて、とにかく少しでも疲労感を残さず投球できるかを意識しましたね」

 また大会がスタートすると、連戦を勝ち抜いていくために普段以上に「体の声」には耳を傾けた。体の変化や筋肉の張りに応じて、ストレッチの時間、種類を変えていき、その時その時のベストコンディションを模索。

 またコンディショニング以外にも、課題の振り返りや次戦の相手選手のデータも頭に入れる必要があり、五輪に限らず大会期間中はやるべきことが山積みとなる。

 「地面が固いと普段より臀部が張りやすいなとか、意外と足首も固くなるなとか、そういったものを敏感に感じることでパフォーマンス向上だけでなく、怪我の防止にも繋がります。
 今回であれば、足首のストレッチや足の指をしっかり広げてから、パフォーマンスに入るように工夫して試合を迎えました」

[page_break:食事は知識がないとチョイスできない]

食事は知識がないとチョイスできない

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東京オリンピックで力投を見せた上野由岐子投手

 ここまでは、自らの感覚と向き合う部分を主にお話を伺っていったが、ここからは知識や用具といったプラスアルファの部分の考え方について紹介していく。

 まずは食事面だ。食事面も、自分の体の訴えにどれだけ気付くことができるかが大前提にはあるが、とは言え栄養学の基本的な知識も必要だ。特に今大会は、気温も湿度も高い真夏のグラウンドでの登板だったため、基本的な知識と感覚をすり合わせながら、食事メニューを決めていった。

 「食事は基本的に、自分で選べるビュッフェ形式でした。
 炭水化物であれば、芋、ご飯、麺類、パンと様々な形で用意されていて、たんぱく質も魚や鶏肉、牛肉、豚肉など、色んな種類のお肉が用意されていました。
 ただ、やはり知識がないとチョイスできません。口に入れるということは、必ずそれが身につくので、だからこそ何を口にするのかをしっかり選べないといけないと思っています。

 今回であれば、登板前は暑さ対策としてしっかり炭水化物を取って、体がエネルギー不足にならないようにすることを一番心掛けました。また胃が弱らないように、タンパク質を多く摂りすぎないことにも気をつけて、消化の良いものを食べるようにしましたね。
 逆に試合後は、疲労回復のためにビタミンBを多く含んだ食事や、高タンパク質のものを意識して食べました」

 またパフォーマンス向上のため、サポーターベルトも導入している。
 サポーターと言えば、怪我の予防や故障箇所の保護のためのものと思われがちだが、上野投手の場合は体のバランスを整えることが主な目的だ。体の軸を崩さないために、試合中も投げ手とは反対の左肘にサポーターベルトを身に付け、また普段から腰や膝、足首など、自身の状態に合わせて様々な箇所に巻いているのだ。

 「やっぱり投げ手の右側だけでなく、左側もとても大事です。左側を意識すれば軸がぶれないので、ボールもぶれないのです。軸が安定することで、余計な力を使わずにボールに力を伝えることができます」

 そんな上野投手は、9月5日に五輪後の初戦となる日本女子ソフトボールリーグ1部の後半開幕節・ホンダ戦にリリーフ登板し2回を1安打無失点と好投。リーグ3連覇に向け、奮闘を続けている。

 日本が誇る鉄腕エース・上野投手に、今後も目が離せない。

(記事:栗崎 祐太朗

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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