試合レポート

鹿児島玉龍vs沖永良部

2023.07.09


仲間の存在「頼もしく思えた」・沖永良部

<第105回全国高校野球選手権鹿児島大会:鹿児島玉龍3ー0沖永良部>◇8日◇1回戦◇鴨池市民

鹿児島玉龍は初回、安打と2つの四死球で1死満塁とし、5番・山中 悠暉(3年)の右前2点適時打で先制する。

2回以降追加点がなかなか奪えなかったが、7回、代打・川畑 陽介(3年)が中前打で出塁。2番・鮫島 颯翔(3年)の左前適時打で3点目を挙げた。

沖永良部は2回以降、粘り強く守って追加点を与えなかったが、鹿児島玉龍の先発左腕・鮫島の緩急を生かした投球を崩し切れず、本塁が遠かった。

7回からリリーフした鹿児島玉龍のエース川畑は6連続三振を含む8奪三振と3イニングをパーフェクトで抑え、大会屈指の好左腕の片鱗を見せつけた。

エース木下 慎喜主将にとって、8四死球を与えたのは「不甲斐ない投球だった」後悔がある。一方で「仲間に助けられた。仲間が頼もしく思えた」と感じたマウンドでもあった。

初回から3回までに3併殺でピンチを切り抜けた。4回には捕手・永吉 歩が盗塁を刺し、1年生二塁手・冨岡は難しい飛球を2度好捕してチームを盛り上げた。

鹿児島玉龍スタンドの大声援にも浮足立つことなく、守れたのは「1年生11人の加入が大きい」。ここ数年は部員不足に悩まされていた中で、1年生の加入で部員数22人となった。紅白戦や走者をつけた守備練習など「実戦を想定した質の高い練習を積めた成果」と遊撃手・坂井 幸太は胸を張る。

部員不足、野球人口減少は離島に限らず、全国共通の課題である中でも「島の支えに感謝しかない」と坪内真吾監督。中学野球の指導者らが連携し、中体連の大会が終わった後も、定期的に硬式の練習会を開くなどして野球を続ける環境を作ってくれたことが、今年の部員増につながった。

木下主将は中学時代、本土の学校への進学も考えていたが「昔からの仲間と野球を続ける」道を選んだ。「木下がいくなら」と坂井ら計8人の現3年生が島に残って野球を続けた。1年生から公式戦に出て様々な経験を積み、この試合でも随所に成長の跡を見せていただけに「もう少し長く一緒に野球がしたかった」(坪内監督)と惜しまれる3年生たちだった。

木下主将にとっては「苦しいことの方が多かった」高校野球だったが「仲間と一緒に野球ができたことが一生の思い出。人生の宝物になる」と確信していた。

取材=政純一郎

この記事の執筆者: 田中 裕毅

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