骨癒合を食事から支えるには
魚にはカルシウムにくわえてタンパク質も含まれているので積極的に食べよう
野球に限らずスポーツでは「予防可能なケガ」とアクシデントによって起こる「予測できないケガ」があります。特に予測しがたいケガの一つにアクシデントによる骨折が挙げられます。デッドボールの当たり所が悪かったり、自打球で自らボールを当ててしまったり。スライディングやバントでボールとバットの間に指が挟まったりすることでも骨折することがあります。骨折は年齢や痛めた部位にもよりますが、骨折部位が癒合(ゆごう:骨がくっつくこと)するまでに数ヶ月程度はかかるため、選手にとってはその期間、通常練習を休んだり、試合に出場できなかったりといったことが起こります。
骨の構造を考えると「骨折を早く治すためにはカルシウムをたくさん取ればいい」というのはもちろん間違いではありません。骨の強度を表す指標として骨密度がありますが、これは骨に存在するカルシウムなどのミネラル分がどの程度あるかという単位面積あたりの骨量を示しています。骨密度が高いほど、物理的なストレスに強い骨であると言えるので、カルシウムが多い骨=骨が強いという目安にもなります。一方、骨はカルシウムのみで構成されているものではないことも覚えておきましょう。骨にはカルシウムを定着させるための構造の土台となるコラーゲンが必要不可欠です。たとえば骨粗しょう症の骨はスポンジ状の細かい線維が少なくなることで骨が弱くなりますが、コラーゲンはこの部分を担っています。やや乱暴な言い方ですが、鉄筋コンクリートでいえば鉄筋部分がコラーゲン、セメント部分がカルシウムと考えると、どちらもより多く集まって密度を高めることが強い骨を再生することにつながります。
コラーゲンはタンパク質の一つですので、骨折からの早い骨癒合を期待するときはカルシウムにくわえて、タンパク質を多く含む食品を意識してとるように心がけましょう。また骨の再生を促すようなさまざまなビタミン(ビタミンD=キノコ類や魚など、ビタミンC=果物や野菜など、ビタミンK=納豆やパセリなど)やカルシウム以外のミネラル分(マグネシウム=ゴマ、ナッツ類等)もあわせてとるようにします。これを食べたら骨癒合が早くなるという魔法の食材はありませんが、栄養バランスの良い食事を心がけることが、骨折からの競技復帰を早めることにつながることを覚えておきましょう。
文:西村 典子
球児必見の「セルフコンディショニングのススメ」も好評連載中!