Interview

シンクレア ジョセフ 孝ノ助(西武育成1位) MLBを目指していた逆輸入の大型左腕はなぜ徳島を選んだのか?<インディゴソックス ドラフト指名6人全員インタビュー⑤>

2023.12.19


今年のドラフトで「11年連続指名」と史上最多の「同時6人指名」を成し遂げた四国アイランドリーグplusの徳島インディゴソックス。この圧倒的な実績はどこから生まれるのか。
今年指名を受けた6人のインタビューからその秘密に迫るこの企画。5人目は西武育成1位・シンクレア ジョセフ 孝ノ助投手である。

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シンクレア ジョセフ 孝ノ助は大学までをアメリカで過ごしたいわゆる「逆輸入選手」だ。タイプとしてはオリックスから日本ハムへ移籍した山﨑 福也投手(日大三)に似たタイプで、縦振りの投球フォームから最速151キロの速球、鋭く曲がるスライダー、ツーシームのコンビネーションで、打者を詰まらせる投球を得意とする速球派左腕だ。

これまでNPBに入団した逆輸入選手といえば、昨年の日本ハムドラフト3位・加藤 豪将(ランチョバーナード高 – ブルージェイズ)や、松坂世代の一人・多田野 数人(八千代松陰-立教大-インディアンス)、鉄腕・山口鉄也(横浜商高-ダイヤモンドバックス傘下マイナー)などがいるが、MLBのマイナーリーグなど“プロ”を経験しての入団が多かった。

シンクレアは、MLB入団という夢が叶わず、海外でのプロ経験のないまま日本にやってきた。
「野球を続けたい――」
その思いで入団したインディゴソックスで実力が開花。11試合で、防御率0.56の好成績を残し、半年足らずでNPB入りを叶えたのだ。

徳島で何がシンクレアに起きたのだろうか。それを語る前に、まずは彼の経歴から振り返っていこう。

高校時代は州選抜に選出される投手だった

シンクレア ジョセフ 孝ノ助

日本で生まれたシンクレアは、生後6ヶ月にして、カナダにわたった。野球との出会いはMLB中継だった。
「カナダに住んでいた時にメジャーリーグの中継を見ていました。イチロー選手だったり、松坂大輔選手が活躍していた時期でした。その時に母が『あの人たちは日本人なんだよ』と教えてくれて。それで自分は親子ソフトボールみたいなものからまず始めたんです」

小学2年生の時には一時的に日本に住み、少年野球チームでプレーした。当時はショートを守っていたが、本格的に投手を始めたのはカナダに戻った小学校4年生のころから。ジョンオリバー高校では、最速143キロを計測するまでの左腕へ成長する。
「当時は、三振が多く、フォアボールも多く、点はそんなに取られないけど、ちょっと試合が長い投手でした。それでも州選抜、地域選抜で選ばれていました。あとは、スカウトチームといいますか、MLB側から招待されるチームにも選ばれましたね」

州内でも注目される左腕だったが、U-18カナダ代表には選考漏れ。韓国で開催された2019年のU-18ワールドカップに出場できなかった。
「友だちが結構選ばれていたんですよ。日本戦でカナダ代表は奥川 恭伸投手(星稜-ヤクルト)から17奪三振。仲間も『(奥川のボールは)やばい、やばい』といっていたのを覚えています(笑)」

MLBを目指して

高校を卒業時にMLB入りを目指したが、ドラフト指名はなかった。シンクレアはアメリカ・アリゾナ州にあるコチス短大に進んだ。
「高校でドラフトされませんでした。『大学で野球をやろう』と気持ちを入れ替えて、コチス短大に行ったんです。めちゃくちゃ野球に力を入れているチームでした。施設がすごいというより、コーチ陣やOBがすごかった。コーチにはMLBを経験している方がいて、OBにはフィリーズでプレーしているメジャーリーガーがいました。アリゾナ州の短大のリーグではかなり強いチームでした。そこで目立って、より強い大学に編入したかったんです。コチス短大で2年間頑張って、ディビジョン1(一部リーグ)のすごい名門大学に編入する計画でした」

アメリカの大学野球は、一部リーグに相当するディビジョン1に逸材が集結し、そこでスター選手になれば、MLBの道も切り開かれるのだ。

就職を断って徳島へ

シンクレア ジョセフ 孝ノ助

しかし、シンクレアの計画はうまくいかなかった。ディビジョン1の大学に編入ができず、ディビジョン2(二部リーグに相当)のメアリー大(アメリカ・ノースダコタ州)でプレーすることになったのだ。
「カトリックの大学なんですけど、野球で有名というわけではなく、ディビジョン2なんで、そんなに強くもなく……MLBを目指すというより、チームに勝たせるようとプレーしていたし、勉強をしっかりと頑張っていた大学生活だったなと思います」

シンクレアは最速151キロをマークするまでの左腕へ成長していたが、メジャーのドラフトにかかる可能性は低くなっていた。
「自分はビジネス学部だったんですけど、大学の教授たちとも、結構仲良かったんです。『就職したいなら、アメリカの企業、カナダの企業も紹介できなくはないよ』とは言われていました」

しかし、シンクレアは野球を続けたかった。
「就職の話は全部断らせてもらいました。MLBが無理ならば、日本で野球をやるのは子供の時から夢だったんです。知り合いに聞いて、『今、NPBに1番近い独立球団を紹介してあげるよ』といわれて、それが徳島インディゴソックスさんだったんです。 球団に映像を送ったり、トレーニングについて相談したり、球団の方とテレビ電話で話したあと、入団という形になりました」

「奨学金のことなどいろいろあったので、大学はしっかり卒業したかった」というシンクレアの意向を汲んで、インディゴソックスに入団したのは今年5月。すでにシーズンは開幕していた。
ドラフト会議まで5カ月ほどしかなかった。

取材・文 河嶋宗一(編集部主筆)

後編はこちら
シンクレア ジョセフ孝ノ助(西武育成1位) 「徳島入団半年」でドラフト指名!「将来は菊池雄星のような投手に」<インディゴソックス ドラフト指名6人全員インタビュー⑤後編>

【徳島インディゴソックス指名6人全員インタビュー】他の記事はコチラから

この記事の執筆者: 河嶋 宗一

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