Interview

ベストナイン5回、GG賞4回受賞の名手が共同開発 超一流の持つ独特な感性とグラブ愛に驚き「本当にグラブが大好きなんです」

2023.12.26


茂木結矢さん

(この記事にはプロモーションを含みます。)
幼い頃、「○○モデル」の道具を店頭で見つけたとき、胸が躍った球児たちが多いだろう。憧れのスター選手と同じ道具が目の前にあることにドキドキ、ワクワクしたに違いない。

この高揚感は第一線から退いた元球児も同じだ。当時のことに思いを馳せながら、笑顔で道具を手に取るはずだ。そんな野球人たちの心をくすぐる共同開発の新作グラブが販売しているのをご存じだろうか。

大手スポーツメーカー・ミズノは近年、イチロー氏や宮本慎也氏と共同開発でグラブを販売している。球界のレジェンドである2人に続く形で、ゴールデングラブ賞4回、ベストナイン5回受賞の名手・石井琢朗氏との共同開発グラブが、販売されている。

新たな提案をするため、求めたのはグラブ愛

石井琢朗さんとの共同開発グラブ

イチロー氏、宮本氏同様に、球界を代表するレジェンド。かつ現在も石井氏はプロ野球でチーフ打撃コーチを務めている。こうした経歴はもちろんだが、それだけの理由で共同開発が始まったわけではない。

「一番は、グラブに対して強いこだわりを持たれている方だからです。誰もが認める守備の名手であるのはもちろんですが、共同開発を通じて『野球界に新たな提案をしたい』という思いがあります。だから、こだわりを持たれている方と共同開発したい、というのがあって、こちらからオファーをさせていただきました」

そう話す茂木結矢氏は、スポーツメーカー・ミズノでグラブの企画担当を務める。グラブ企画の責任者として、共同開発への想いを本人へ直談判。一緒になってより良いグラブを野球界に提案してくれることを願っての相談だったが、期待通りのグラブ愛の持ち主だった。

「企画趣旨自体は、すごく賛同してくれました。ただ石井さんにとっては初めてのことなので、多少戸惑われていたと思います。話しながら方向性を見出していきましたが、本当にグラブが大好きなんですよね。
そもそも、初めてサンプルをお見せしたときから高く評価して下さって。『いいね、いいね』という感じで反応が良かった。そうするとやっぱりグラブに関しての話がどんどん出てきました。
開発に関することはもちろん、『俺の時はこういうものがあった』とか、『こういうのがあったらいいんじゃないか』とか。とにかくやっぱりグラブを手にはめながら、楽しそうに話してもらったんです。だから完成した時は『できた!』みたいな感じで喜んでくださり、企画開発としては、とても嬉しかったです」

超一流ならでの愛情表現

石井琢朗の共同開発グラブ

超一流として活躍した石井氏でも、グラブへの愛情は、一般の野球人と変わらない。ただその愛情の強さは、名手ならではなのだ。

「石井さんの理想はグラブに球がおさまれば、自然に閉じるグラブです。そのために、まず間口を広くとれるようにこだわりました。
最初は土手(親指の付け根~小指)のとじ方や、グラブそのものの大きさ変更などを試してみました。そのうえで現役の時に使っていた形をベースに作り始めました。
ただ、それだとヒンジのところ(小指の付け根)に、紐革が縦に2本通っていて、グラブが上手く閉じない。間口が広がり過ぎて難易度が上がってしまう。市販用として販売するなら、紐を1本にしようということで、間口の広さを確保しました」

工夫はまだ終わらない。指の部分にも普段は採用しない超一流ならではの加工を施した。

「ポケットを広げる意味でも、『とにかく指を丸めたくない。特に人差し指は常に立てて欲しい』と仰ったんです。
たしかに指の部分を丸めてしまうと、球が入りにくくなります。それを石井さんは気にされたので、使い慣れて柔らかくなっても立った状態を保つために、部分的に一番硬い芯材を入れています。普通はこういった加工はやりませんので、超一流のこだわりだと思います」

二遊間らしくない縦型グラブ

当時のエピソードについて語る茂木結矢さん

実際に手に取ってはめてみると、微動だにしない硬さに驚いた。新品であることを差し引いても芯材が硬くなっているのがすぐにわかる。この硬さは、石井氏のグラブ対する強いこだわりを表現するものだったのだろう。
また、今回のグラブはミズノ社で設定しているサイズ※では「10」に相当する。内野手用のなかでも大きい設計。加えて間口を広げるために、2つの工夫を凝らした。
※人差し指から土手の端までを直線で繋いだ長さを計測

その影響か実物を見ると、「大きくて深みがある」印象だ。名手・石井氏のポジションだった二遊間のみならず、サードも十分できそうなほどだ。担当者・茂木さんも「(ポケットは)浅めなんですけど、サードでも十分使えると思います」と話すと、続けてこう語った。

「石井さん自身、投手でプロに入られています。それもあってか、投手のときにグラブを縦に使っていたのが、野手に転向しても球をがっちり掴むような使い方が基本になっているんです。
なので、同じ二遊間で以前共同開発した宮本さんとは、同じ当て捕りでも、グラブの設計が違うんです。球界の超一流同士であり、イメージしているグラブ、そしてグラブへの愛情は同じようにあるんですが、完成したら違う形が生まれてくる。本当にグラブは奥深くて、難しい。けど面白いところだと、改めて認識させてもらいました」

見た目は至ってシンプル。だが、手にはめて使って初めて、その性能やグラブの良さが十分伝わってくる。名手・石井琢朗のこだわりが詰まった共同開発グラブは、野球界に新たな気づきを与えるに違いない。

◆茂木結矢氏が企画・開発した他のグラブのエピソードはこちら
ベストナイン5回、GG賞4回受賞の名手が共同開発 超一流の持つ独特な感性とグラブ愛に驚き「本当にグラブが大好きなんです」
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この記事の執筆者: 田中 裕毅

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