福田幸之介(中日4位)「今までで一番の投球だった」前田悠伍(ソフトバンク1位)に投げ勝った日<年末特別企画・ドラフト指名5投手の成長物語②>
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福田 幸之介(履正社)
中日4位指名を受けた履正社の左腕・福田 幸之介(3年)は最速151キロの速球を武器に増田 壮(3年)との左腕Wエースとして活躍。夏の大阪大会決勝では明治神宮野球大会優勝、センバツ4強の大阪桐蔭を3安打完封してチームを甲子園出場に導いた。中日ファンの期待も大きい福田の成長の裏側やライバル前田 悠伍投手(大阪桐蔭-ソフトバンク)への想いも語った。
最初はベンチ外で同期に遅れを取るも、自慢の速球でベンチ入りを掴み取る
中学時代は大阪柴島ボーイズに所属。同期には龍谷大平安の4番として今春の甲子園に出場した山下 慶士(3年)がいた。
当時の球速は130キロ前後で、「中学時代は全然上手くなくて無名な選手だった」と振り返るが、声をかけてもらえたこともあり、履正社に進学。日本一を目指して高校野球の舞台に飛び込んだ。
「周りの人もデカい人が多くて、自分のプレーを発揮する場面が少なかったので、1年生の時はあまり目立てなかったと思います」と話すように入学直後から結果を残せたわけではない。
同期の投手では増田、今仲 巧投手、渡邊 陽軌投手が1年夏からベンチ入りする一方、福田はベンチ入りすることができなかった。
「1年生から増田や今仲がメンバーに入っていて、追いつかないと履正社では出られないと思っていたので、必死に練習頑張って追いつこうと思いました」とこの状況が福田の心に火をつけることになる。そこでメンバー入りに向けて取り組んだのが球速アップだった。
「下半身の線が細かったので、下半身のトレーニングだったり、ウエイトトレーニングをして上半身も下半身もバランスよく筋肉つけました。ピッチングフォームも変えたりとかして、球速を上げました」
投球フォームに関してはこれまで横回転になることが多かったが、縦回転になるように工夫し、ボールも縦にスピンがかかるように改良を重ねてきた。
こうした努力もあり、1年秋にベンチ入り。2年秋の時点で143キロにまで球速を伸ばし、履正社投手陣に欠かせない存在となった。
そして、今春の甲子園では初戦の高知戦で先発を任される。1点を失いながらも7回まで無安打に抑えていたが、「コントロールが安定しなくてチームにリズムを持っていけなかった」と6四球と不本意な投球に。1点リードの8回裏に一、二塁のピンチを作って増田にマウンドを譲った。その増田は逆転打を打たれてしまい、2対3で敗戦。初めての甲子園は苦い思い出となった。
センバツの反省を活かし、ついに150キロ到達
制球力に課題を残したセンバツを踏まえ、夏に向けて取り組んだのがフォームの改良だ。これまではノーワインドアップで投げていたのをセットポジションからの投球に変更。これにより、「コントロールやリリースが安定するようになりました」と確かな手応えを感じられるようになっていた。
すると、6月には紅白戦で視察に訪れていたNPB球団のスピードガンで150キロを計測。「努力してきたことが出たんじゃないかなと思います」と練習の成果が数字となって表れたことに喜びを感じていた。
夏の大阪大会に入っても福田の活躍は続く。増田とともに投手陣の柱となり、決勝の大阪桐蔭戦で先発の大役を任された。
「準決勝で増田が完投してくれたので、自分しかいないと思って投げました」と強い決意を持ってマウンドに上がった福田は一世一代の快投を見せる。
強力打線の大阪桐蔭を相手に凡打の山を築き、3安打7奪三振で完封。「今までで一番良いピッチングだったんじゃないかなと思います」という会心の投球で、世代ナンバーワン左腕と呼ばれていた前田 悠伍(3年)に投げ勝った。
「真っすぐでカウントもファールも空振りも取れていたので、そこが良かったかなと思っています」と福田は好投の理由を語る。生命線のストレートが好調だったことで、スライダーなどの変化球も生きていた。
ついに最大のライバルに投げ勝った福田。その時の心境をこう振り返ってくれた。
「1年の時から世代ナンバーワン左腕と言われていて、1年の時から追いかける存在となっていたんですけど、3年生になってやっと対等な立場になれたのかなと思っています」
前田に投げ勝ったという評判を引っ提げて甲子園行きを決めた福田は「期待されている分、自分も結果を出さないといけないと思ったので、また練習しようと思いました」とより一層、気を引き締めた。
甲子園では2回戦で先発、1回戦と3回戦でリリーフ登板し、9回3分の2を投げて自責点3という結果。「思ったように自分のピッチングができなくて、最後も僕が投げて負けてしまったので、少し悔いの残る形で終わってしまったなと思います」と本人の中では満足のいく内容ではなかった。
大阪桐蔭戦の投球を100とするなら甲子園の投球は50だったと自己評価する。「体の調子自体は良かったんですけど、周りの雰囲気やプレッシャーもあったので、自分のピッチングができなかったのかなと思います」と分析していた。
夏の甲子園を終えた後、9月19日にプロ志望届を提出。「入学した時からプロを目指して履正社に進学したので、初めから決めていました」と早くからプロ志望届を出すことを叶えていたそうだ。
そうした点でいえば、この夏は福田の野球人生を大きく変えた期間になったことだろう。実際に福田も「春までの評価だったら、全然育成にもかからないと思っていたので、少し評価を上げられたんじゃないかなと思います」と認めている。それだけに150キロを出し、大阪桐蔭を抑えたことは大きな転機となった。
現在は体作りに取り組んでいる。これまではアウターマッスルの強化をすることが多かったそうだが、今はインナーマッスルの強化に力を入れているという。
ドラフト前の心境について「何があるかわからないので、練習するだけかなと思っています」と平常心を貫こうとしていた福田は中日から4位指名を受け、高卒プロ入りを叶えた。
そしてどんな投手になりたいのかを語った。
「菊池 雄星投手(ブルージェイズ)のような真っすぐで押せて、スライダーもキレ良くて、というピッチングスタイルを真似したいと思っています。1年目から1軍に入っていけるようにガツガツ行きたいと思います」と将来を思い描く福田。
大阪桐蔭を完封した実力は確かなものなだけに1年目からしっかりとアピールしたい。
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