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大打者・張本勲も発展に寄与した韓国高校野球草創期【韓国の高校野球事情①】

2024.05.18


SK監督時代の金星根(写真提供:大島裕史)

2024年、高校野球の聖地である甲子園球場は100周年を迎え、1915年にスタートした夏の甲子園は第106回を迎える。この長い期間で高校野球は日本の大きな文化となった。一方、お隣の韓国の高校野球事情はどのようなものなのだろうか。一時期は3万人の観客も詰めかけるほどの一大ブームを迎えた時期もあった。今回は韓国野球を長年、取材してきた大島裕史氏に韓国の高校野球の歴史を振り返ってもらった。

韓国野球の発展に寄与した日本出身の野球人

2017年に韓国プロ野球のキウムに入団した時からスター選手であった李政厚(イ・ジョンフ)が今年、メジャーリーグのサンフランシスコ・ジャイアンツに入団した。彼がメジャーリーグでどこまで通用するかに韓国では、関心が高まっている。
李政厚はソウルにある高校野球の名門・徽文(ヒムン)の出身だ。実はこの学校、戦前に夏の甲子園大会に出場したことがある。戦前の甲子園大会には日本の支配下にあった朝鮮、台湾、満州からも代表が出場した。1931年の第12回大会で準優勝した台湾の嘉義農林の活躍は、映画にもなりよく知られている。

朝鮮からも1921年の第7回大会の釜山商業(現釜慶〈プギョン〉)を皮切りに、戦前最後となった40年の第26回大会の平壌一中まで、毎年出場していた。そのほとんどが京城中に代表される日本人が通う学校であったが、1923年の第9回大会に出場した徽文高普だけは、選手全員が朝鮮人だった。高普とは高等普通学校のことで、主に日本人が通う中等教育機関は中学、朝鮮人が通う学校は高普となっていた。
徽文高普は大会では、初戦は9-4で大連商を破り、準々決勝で立命館中に5-7で敗れた。この大会は鳴尾球場で行われていたので、厳密にいえば甲子園大会ではない。しかし100年を超す高校野球の歴史で、日本人が1人もいないチームが全国大会に出場したのは、徽文高普だけだ。

第9回大会に出場した徽文高普(写真提供:大島裕史)

戦前の甲子園大会には、日本の学校の選手として出場し、解放後の韓国球界に大きな役割を果たした人物もいる。38年のセンバツに横浜商の主将として出場した崔寅哲(チェ・インチョル)は、大韓野球協会の会長など要職を歴任し、韓国野球の発展に貢献し、日韓交流の架け橋になった。既に亡くなっているが、筆者が20年ほど前に会ったときは、センバツの思い出や、日本高校野球連盟の会長だった佐伯達夫など、日本球界の重鎮との交流を懐かしそうに語ってくれた。

30年代半ば平安中(現龍谷大平安)の内野手として活躍した朴点道(パク・トムド)は、63年にソウルで開催された第5回アジア野球選手権で韓国代表監督になり、韓国に初優勝をもたらした。40年のセンバツで準優勝した京都商(現京都先端科学大附)の内野手であった姜大中(カン・デジュン)は、解放後の韓国代表として活躍した後、指導者としても多くの人材を育てた。第1回、第2回のWBCで躍進した韓国代表の監督であった金寅植(キム・インシク)もその一人だ。

41年の夏の大会は、全国大会は戦争のため中止になったが、地方大会は行われた。東京大会は14―0で帝京商(現帝京大高)が京王商(現専大附)を破ったが、この時、帝京商には金光、京王商には高澤という選手がいた。金光の本名は金永祚(キム・ヨンジョ)という。戦時中のプロ野球に存在した朝日軍というチームにも所属しており、日本のプロ野球史上初の初打席本塁打を記録した人物でもある。解放後は韓国代表の捕手として活躍した後、韓国代表監督も務め、韓国野球ではボス的な存在だった。なお帝京商の1年後輩には、昨年亡くなった元祖フォークボールの杉下茂がおり、2人の交流は生涯続いた。
高澤は本名を高光籍(コ・グァンジョク)という。解放後は釜山の慶南(キョンナム)高校の監督を務め、全国大会で相次いで優勝した。慶南はソフトバンクなどで活躍した李大浩(イ・デホ)の母校であるが、慶南を韓国高校球界屈指の強豪に育てたのが、高光籍である。

次のページ:張本勲も参加した在日僑胞学生野球団の母国訪問試合

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この記事の執筆者: 大島 裕史

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