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2006年夏にあった斎藤佑樹“もうひとつの激闘”!早稲田実vs.日大三、西東京大会決勝【東西東京大会50周年物語⑤】

2024.06.16


早稲田実時代の斎藤 佑樹氏

強打の三高 全国制覇を果たす

西東京大会では94年と95年に創価が連続優勝を果たしていたが、96年は2-4で東海大菅生に敗れた。決勝戦に進んだ東海大菅生は決勝戦で東亜学園を7-5で破り、悲願の初出場を果たす。2年生の牧野竜晶が決勝戦までの6試合すべてで完投してつかんだ栄光だった。
97年は堀越が優勝し、98年は桜美林が準決勝で國學院久我山との延長11回、10―9の熱戦を制し決勝戦に進出。初めて決勝戦に進出した八王子を4-3の逆転で破り21年ぶりに優勝した。甲子園でも2回戦で智辯学園を逆転サヨナラで破り3回戦に進出するなど粘りをみせた。
99年の西東京大会は、後にマリナーズなどで活躍する堀越の岩隈久志が速球投手として評判になっていたが、準決勝で日大三の猛攻を受け、0-7でコールド負けした。
決勝戦に進出した日大三は、國學院久我山と対戦。國學院久我山にはその年のドラフト1位指名で広島に入った河内貴哉がいた。日大三は河内に13三振を喫しながらも粘り強く攻め、延長12回に杉本邦彦のランニング本塁打で2点を入れ、8-6で勝ち、小倉監督になり、初めて甲子園出場を決めた。
岩隈、河内という好投手を攻略する打線の迫力に、これまでの日大三にない力強さを感じた。なおこのチームの主将で捕手の白窪秀史は現在母校のコーチをしている。

2000年は東海大菅生が、決勝戦で明大中野八王子を破って優勝している。決勝戦で敗れた明大中野八王子のエースで4番の椙原貴文は、現在母校の監督である。
01年から早稲田実が西東京大会に加わったが、準々決勝で創価に敗れている。この大会を圧倒的なパワーで優勝した日大三は、甲子園に行っても優勝候補に挙げられ、実際打ちまくった。大会通算打率.427という記録を打ち立て、全国制覇を果たした。現立正大立正監督の内田和也がヤクルト、都築克幸が中日、近藤和樹が近鉄、千葉英貴が横浜と、4人が同時にドラフト指名されるという豪華メンバーであった。

都立高初のドラフト指名選手現る! 春季一次予選開始でモチベーションに変化

02年は準決勝で早稲田実を延長10回3-2で破った桜美林が、決勝戦で日大鶴ヶ丘を4-0で破り優勝した。
03年、04年、05年は日大三が大会3連覇を果たした。05年のチームは甲子園で準々決勝に進出している。また04年の西東京大会の準決勝では、都立昭和日大三に敗れたものの1-3と善戦。都立の新たな強豪に台頭してきた。
なお、05年の春季大会から1次予選が行われるようになった。それまでは秋の1次予選の各ブロックの上位4校しか春季大会に出場できなかった。当時の秋季都大会は24校しか出場できなかったので、春季都大会は96校となる。半分以上の学校は、秋季大会の1次予選の後、夏まで公式戦がなかった。これですべてのチームが年3回、公式戦に出場できるようになった。選手のモチベーションの面でも、重要な変化であった。
また02年のドラフト会議で都立日野の捕手・横川雄介が現役の都立の選手として初めてドラフト指名され巨人に入団した。05年には都立府中工の投手・高洲江拓哉が中日からドラフト指名され入団した。都立校からもプロに入る人材が育つようになってきた。

斎藤佑樹、中村晃、杉谷拳士、福田秀平…伝説の2006年、役者はそろっていた

01年から西東京大会に参加することになった早稲田実であるが、甲子園にはなかなか届かなかった。校舎の国分寺市移転を前に、練馬区武蔵関にあった練習場は売却されており、各地の練習場を転々としなければならなかった。そして04年、八王子市の南大沢に待望の専用練習場、王貞治記念グラウンドが完成した。斎藤佑樹はこの年に入学した。
斎藤は2年生でエースになるが、夏の準決勝で日大三に1-8の7回コールドで敗れた。ここから斎藤の練習に取り組む姿勢が変わったという。この年の秋、準決勝で日大三を2-0で破り、早実はセンバツ出場を決めた。

06年の帝京は、ソフトバンクの中村晃が2年生、元日本ハムの杉谷拳士が1年生の豪華メンバー。しかし前年の秋は準々決勝で東海大菅生に0―10の5回コールドで敗れている。東海大菅生は決勝戦で早稲田実に敗れたものの、センバツに出場している。この時の一塁手の石黒隼は、現在大森学園の監督をしている。
06年のセンバツ、斎藤佑樹を擁する早稲田実は、2回戦で関西に延長15回、引き分け再試合の熱戦を勝ち抜き、準々決勝に進出している。春季都大会で帝京は、日大鶴ヶ丘に敗れ、4強はすべて西東京勢になった。準決勝で早稲田実日大鶴ヶ丘に9回サヨナラ逆転負けをしている。4強のもう一つの試合では日大三多摩大聖ヶ丘に12-2で圧勝し、日大鶴ヶ丘とともに関東大会に出場した。なお多摩大聖ヶ丘にはその年のドラフトでソフトバンクに1位指名される福田秀平がいた。そして関東大会では日大三が優勝している。

次のページ:早実vs.日大三、ハンカチ王子・斎藤佑樹“あの夏もう一つの激戦”

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この記事の執筆者: 大島 裕史

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