Column

ノーシードのダークホース本命?!翔凜がノーサインで大躍進を狙う!

2024.06.28


シャカサインを見せる飯田悠太主将

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千葉県は13日、夏の大会の組み合わせが決定。
例年よりも、大会序盤から見逃せない試合が増えることが予想されるなか、君津市に学校を構える翔凜の戦いぶりにも注目したいところ。
2022年には千葉大会で4回戦まで進出。2023年の夏はCシードで大会を迎えるなど、県内でも有数の実力校という立ち位置といっていいだろう。

片耳にイヤホンつける独特すぎる練習法

春は県大会まで勝ち上がるも、初戦で市立千葉に敗れてしまい、夏はノーシードからスタート。大会序盤から盛り上げてくれるであろうチームの練習を取材に行くと、その風景に驚かされた。

ランナーを付けたケースノックが行われていたが、守備に就く選手たちの耳を見ると、何やら白いものが片耳だけ見える。街中でもよく見かけるBluetoothイヤホンだ。

ランナーをやっている選手たちがスマートフォンを管理している姿を見て、「スマホから何を流しているんだろう」と気になり、主将・飯田悠太に話を聞くと、「監督の提案で春季大会が終わってから始めました」と経緯を語る。

夏に向けて片耳にはイヤホンを付けて練習する

「夏の大会はどの学校も吹奏楽部など、応援が凄いです。そういった状況でプレーするとなると、コミュニケーションが取れないこともあり得るので、練習はもちろんですけど、練習試合でも相手チームに許可をもらって、片耳にイヤホンを付けてプレーしています。
実際、大音量で流してもらっているので、本当に声が聞こえにくいんですけど、春まで自分たちのプレーができずに負けているので、良い練習です」

流しているのは習志野木更津総合専大松戸など強豪校の応援歌ばかり。「こちらが集中したい時に、応援が邪魔してくるので、決してプレーしやすい状況ではありません」と苦笑いをする。しかし、斬新ながら根拠のある練習だと感じさせられたし、選手たちも妥協をせずに、必死に練習している姿が印象的だった。

少しでも気の抜けたプレーがあれば、選手間で厳しい声が飛び交い、必要であれば飯田主将自らが全員を集めて、「苦手ですけど、主将なのでチームを引っ張るために言わなきゃダメだ」と覚悟をもって遠慮なく指摘。チーム全体の気を引き締めていた。

絶対がない野球だからこそ自主性は必要だ

近年は多くのチームで「ノーサイン野球」を採用するケースが増えているなか、五十嵐監督がここでノーサイン野球を実践しているのは、大きく2つの理由があると話す。

「野球って絶対がないスポーツだと思っています。たしかに状況に応じたセオリーは存在します。ですが打率や防御率といった確率に基づくことであって、相手によって数字は変わりますよね。
そこが野球の面白さなので、大人が少し野球を知っているからと言って張り切って前に出ていって指揮をするのは少し違うかと思うんです。監督の勘や経験によって、選手たちの最後の夏が左右されるのは残酷だと思うので、普段培った練習の成果を大会で出してもらうためにも、選手たちに任せたい。その方が納得して戦えると思いますし、大学以降のステージになれば個々の能力に任されるところも多いので、ノーサイン野球は良いと思うんですよね」

五十嵐監督の指導を聞く翔凜ナイン

五十嵐監督が話すように、ある程度パターン化された攻め方などは存在する。しかし所詮は型にはめられたものなので、もちろん対策は練られてしまう。それを超えようとすると、「ノーサインで私たち指導者の考えを超えないといけない」と五十嵐監督は話す。

大会を勝ち上がっていくためにも、ノーサイン野球が有効な形だということだが、もう1つは教育的観点だという。

「とにかく選手それぞれの性格がプレーに出てきます。臆病な選手は慎重な選択をするでしょうし、勢い任せの選手は、雑な野球をやってしまう。自分の好きな野球で、弱みが見えてきます。大人になってからだと、『仕事だから』と言い訳できますけど、選手たちがやっているのは好きな野球です。だから言い訳が出来ないはずです。
いまの子どもたちって、弱みを他人に見せたり、指摘したりするのが苦手で、何かあれば環境のせいにしているように日々感じています。けどノーサイン野球にすれば、自分の判断、主体性を持って動くことがテーマになるので動くので、環境のせいにできない。素の自分を表現できると思うんです。
そうすれば、本当の意味で周りの仲間たちの思いを背負ってプレーするだけの覚悟が決まるはずなんです。どうしても目の前の勝利は気になりますけど、ノーサイン野球って教育的に凄く良い取り組みだと思うんですよね」

自主性の野球が持つ教育的効果

「野球の上手さが、その人の価値を決めるわけではない」と五十嵐監督自身、現役時代に経験して学んだこともあって、翔凜はノーサイン野球をやっている。そのためのポイントに挙げるのは、観察力だという五十嵐監督はいう。

練習に打ち込む翔凜の選手たち

「相手はもちろん、仲間も含めて観察することが大事ですね。
いまの時代、野球塾が誕生したことで、選手個々が通って技術力向上に努めますけど、私が現役の時は『どんな配球でくるだろう。どこが狙いどころはないか』と相手の隙をつく野球をやっていました。そのうえで対応していく、観察力がポイントでしたし、野球の面白さの1つだと思っています。
だから練習試合から、よく選手たちとベンチで話をして勉強させていますし、これまではある程度メンバーを固定して、『この状況だから、こう動こう』と考えて動くチャンスを積んできました。
そのときにミスがあっても、あまり叱らないようにしています。野球は確率のスポーツですし、選手たちに判断をゆだねているので、選択した行動を指摘してやらせたら、主体性じゃないです。だから『もっとこうした方が成功したんじゃないか』と選んだプレーが成功になるように導いています」

エースである小島蒼河は、「考えることが多くなると、やはり難しい」と話すが、その分、成長出来ている部分も多いと話す。

エース・小島蒼河

「どのプレーを選択するか、自分たちで考えて動けるように試合毎にミーティングしますし、練習でも指摘し合うようにしています。その時のプレーに対して指摘することが最初多かったですけど、次のプレーに繋がる声を掛け合うようになり、周りを観察する余裕が出来ていたと思います」

ノーサイン野球で千葉を沸かせる!

秋季大会、翔凜は地区予選こそ順調に突破。「秋は打力のある選手がそれほど多くないはずなので、野手の間の打球もしっかり捕れるようにしよう」と連携を含めて、守備力強化に焦点を置いた成果を見せた。

しかし県大会では成田の前に敗戦。3対6と競り合ったものの、あと一歩及ばず、オフシーズンは、「守り勝つ野球を実現するために、細かなプレーにもこだわって練習してきた」と守備力強化に時間を割いてきた。

飯田悠太主将

同時に、打撃が武器となる選手は、「(バッティングに)集中して取り組んでもらった」と、それぞれがチームの勝利に貢献できるように、時間を有効活用して、春に備えた。

迎えた春、予選を突破して県大会に乗り込んだ翔凜だったが、初戦・市立千葉の前に敗戦。「いつもやらないようなミスもあったことで、焦りが生まれてしまった」と余裕がなくなり、2対6で敗れ去った。

こうした経験を踏まえて、冒頭で触れたように夏の大会をイメージして、イヤホンを片耳につけてプレー。夏の大会独特の緊張感のなかでも、余裕をもって動けるように準備をしている。

また練習終わりには校歌を歌い、全員で歓喜の輪を作る。「夏の大会では勝った後に校歌をうたうので、そのイメージを作るためにやっている」と小島が意図を説明するが、夏に向けて飯田主将はこんなこともしているという。

全員でシャカサインをする翔凜ナイン

「良いイメージを作るのに、好プレーが出た時にやるポーズを作りました。流れを変えたり、勢いを作ったりできたらと思ってやるんですが、サーフィンのジェスチャーであるシャカサインをやっています。
たまたま見かけたので、興味を持って調べたら、『頑張れ』とか相手を鼓舞する意味があったので、みんなに話して、やるようになりました」

先日の抽選会の結果、翔凜の初戦は東葛飾に決まった。飯田主将は、「不安な状態で大会に入ればパフォーマンスにも影響が出るので、『あとはやるだけだ』というくらい練習して準備したい」と語ったうえで、夏への意気込みを話す。

「技術が格段に上がることは難しいと思いますが、試合で100%のパフォーマンスを発揮できるかどうかが大事です。なので、試合をイメージして練習するなどして、準備をしたいと思います」

来る夏へ、最善の準備を続ける翔凜。選手主体のノーサイン野球で、千葉を沸かせることが出来るか。ノーシードからの快進撃を期待したい。

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この記事の執筆者: 田中 裕毅

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