済美vs松山聖陵
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5回表松山聖陵二死二・三塁から147キロ直球を右前同点適時打した9番・古賀優(2年)
豪腕攻略した松山聖陵、それを凌駕した済美
延長14回で済美・安樂智大(1年)218球。松山聖陵・嘉陽宗一郎(2年)229球。実に3時間45分に渡る死闘。
ただしその内容は大方の観客が戦前に予想していた愛媛県を代表する両右腕による投手戦ではなく、済美20安打、松山聖陵11安打に象徴される激しい打ち合いであった。
その口火を切ったのは松山聖陵打線である。この4日間、安樂を攻略すべく「速いボールに振り負けない」(荷川取秀明監督)バッティング練習に取り組んできた彼らは、打順が2順目に入ると一気に持ち前の強打が覚醒。
5回には二死二・三塁から安樂の自己最速タイとなる149キロを振り抜いてファウルにした直後、147キロ直球をはじき返した9番・古賀優(2年)の適時打をはじめ3安打を集中させ、安樂に秋季大会初の自責点をお見舞いすると、6回には1点、7回には2対4で迎えた二死満塁から3番・山城健人(2年)が一二塁間を鋭く破る2点適時打と、計3度同点に追い付く粘りを見せた。
延長戦に入っても松山聖陵は決して屈しなかった。10回には安樂に1年生秋としては過去の高校野球史で記憶にない「151キロ」をマークされるなど三者三振を喫しても好機をうかがっていた彼らは、12回表に代打・森崎大地(1年)が奪い取った四球から得た一死二・三塁から1番・国吉翔平(1年)が執念の遊撃内野安打でついに勝ち越し。ついに豪腕を攻略し土俵際まで追い詰めたのである。
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延長14回218球で毎回21奪三振の力投を見せた済美・安樂智大(1年)
が、済美の反発力はここからであった。その裏・二死二塁となりながら、主将・町田卓大(3年)の三盗と「安樂が頑張っているので絶対返そうと思った」4番・藤原弘気(2年)の一塁内野安打で同点とすると、14回裏二は二死二塁から6番・光同寺慎(2年)が詰まりながら中前に落としサヨナラ勝ち。歴戦の名将・上甲正典監督ですら「勇気が要った」三盗サインから一気に流れを引き戻す辺りは、流石の一言だ。
では最後に、毎回の21奪三振で済美を3年ぶり7度目の秋季四国大会に導いた安樂のコメントを紹介しよう。
「夏は松山聖陵さんと当たって先制されましたし、(準々決勝の)宇和島東戦をスタンド見てもバットが振れていたので、打たれるかもしれないとは思っていました。今日はスライダーを見送られていたので途中からはストレート主体に変えたのですが、自分の調子が悪い中で自分の真っ直ぐを信じて、粘り負けしないようにして、みんなが助けてくれて四国大会に出場できたことは自分にとってもチームにとっても大きな階段を昇れたと思います。14回を投げたのははじめてでしたけど、素晴らしい経験ができました」。
素晴らしい経験ができたのは安樂だけでない。勝った済美はもちろん。敗れた松山聖陵も。3位決定戦、ないしは決勝戦の勝敗は時の運にも左右されるが、彼らがこの試合を通じてまた一歩野球人として成長したことだけは間違いない。
(文=寺下友徳)