試合レポート

佐野工科vs太成学院大高

2016.09.11

部員16人の佐野工科が金星!コールドで太成学院大高を破る

佐野工科vs太成学院大高 | 高校野球ドットコム

1番・前川瑞樹(佐野工科)

 初回、一気に試合を決めるチャンスが太成学院大高に訪れた。

 先発の小西 康平(2年)が立ち上がりを無失点に抑えると、裏の攻撃ではキャプテンの田中 裕祐真(2年)が先頭打者本塁打。2球で先制に成功すると俊足の大財 翔汰(2年)がセーフティバントを決め、3番・上田 拓歩(2年)と4番・森村 蒼汰(1年)が四球で歩き無死満塁と追加点の大チャンス。3年生が引退し部員16人となった佐野工科にとってはいきなりの大ピンチとなった。しかしここは5番・玉川 翔(1年)はライトフライ、6番・水木 速杜(2年)がセカンドライナーに倒れると一走の森村も戻り切れずにゲッツーに。

 攻め切れなかった太成学院大高は次の回、小西が突如4四球と制球を乱し逆転を許すと、リリーフした田中 孝雅(1年)も代わり端に佐野工科の3番・岩月 雄大(2年)に適時打を浴びる。3点を失った太成学院大高は2回に田中の適時二塁打で1点差に迫り、3回に水木の内野ゴロの間に追いつくが、4回、先頭打者に与えた四球からピンチを招きまさかの4失点。

 一方、リードをもらった佐野工科の先発・岩月は中盤から尻上がりに調子を上げる。「最初は球、走ってなかったんですけどみんなが点取ってくれてリズム作ってから力み取れました」勝ち越した後の大事な4回のマウンドでは一死一塁で本塁打と適時二塁打を打たれていた田中を打席に迎えるが、2ボール2ストライクと追い込むと最後はアウトコースいっぱいのストレートが決まり見逃し三振。続く大財もセンターフライに打ち取り、つかんだ流れを相手に渡さない。

 この攻撃中に田中の打順で代打・那須 聖矢(2年)を送った太成学院大高の仲辻 宏之監督は、5回からエースの城 雄大(2年)を投入。細身の左腕が繰り出す球はキレがあり先頭打者を空振り三振に切って取る。三者凡退に抑え流れを変えたいところだったが、打順がトップに返り前川 瑞樹(1年)に二塁打を打たれると2番・林 昌吾(1年)には四球。3打数3安打と当たっていた岩月には左中間を破る適時二塁打を浴びてしまう。


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投手・田中孝雅(太成学院大高)

 相手エースから1点を奪った佐野工科の奥野 博基監督は一死二、三塁から4番・齋藤 陽斗(2年)の打席でスクイズを敢行。しかし、三走・林はスタートを切っておらず、打球が転がってから走り出すが本塁タッチアウト。4番にスクイズをさせてでも欲しかった追加点が奪えずアウトカウントが1つ増えた。実は林は練習試合でも同じようなサインミスを犯しており、その試合では逆転を許してしまっていた。

 流れが変わりかけたがこの日は違った。続く東浦 圭太(2年)が四球で歩き満塁とすると下元 勇人(2年)、土原 伸太(2年)が連続でレフト前に適時打を放つ。どちらも会心の当たりではなかったが打球は三遊間の真ん中を抜けて行った。この回、1点で終わるか追加点を奪えるかではその後の展開は大きく違う。計10失点した投手陣については「城が出てからの失点が誤算だった。ランナー背負ってからのピッチンングが投手陣の課題。点取った後も次のイニングに簡単に先頭出してしまったり、大きな守りのミスはなかったと思うけど制球であったり流れ止める三振取れなかった。そういうところかな」とは仲辻監督。流れが変わる可能性のあった最後のポイントで佐野工科のスコアボードに3点が刻まれると、太成学院大高はそこから3回続けて三者凡退。初戦でまさかのコールド負けとなった。

 エースで3番でキャプテンと佐野工科の中心である岩月は打っては4安打3打点、投げては7回4安打3失点。抜群の成績でチームを勝利に導いた。夏も背番号1を付けたが6月頃から調子を落とし、結局は夏も登板することなくチームも初戦敗退。それだけにこの日に懸ける想いも強かったはず。その岩月対策として太成学院大高は待ち球作戦を敢行したが機能せず。「ワンストライクを見逃して球数を放らせようと。あの子のリズム崩すことで何とか逆転出来ると思ったんですが、ツーストライク目を簡単に見逃してしまった。甘い球を見逃して結果、追い込まれて苦しくなって。あの子の気迫に負けたと言っていいぐらい」(仲辻監督)

 失うものは何もない、とチャレンジャー精神で白星をつかんだ佐野工科だがすぐ近くには関大北陽大阪桐蔭大阪偕星学園と強豪が顔を揃える。それでも奥野監督は「自分らがどんだけ力あるか私立ゾーンで試せるんで。足りないのは間違いないですけど、足りなかったら練習しようと。この子らが持ってる力ぶつけてくれたらいいかな。一戦一戦出来たらと思います」次戦もチャレンジャー精神で金星を狙う。

(文・写真=小中翔太

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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