試合レポート

春日部共栄vs叡明

2018.04.15

春日部共栄、苦しみながらも県大会進出

春日部共栄vs叡明 | 高校野球ドットコム
内藤(春日部共栄)

 

 経験、バリエーション共に豊富な投手陣を誇る春日部共栄対旧チームから主力がごっそりと抜けた叡明との一戦、試合は戦前の予想に反し終盤まで僅差の展開となる。

 

 先発は叡明が背番号7の石川、一方の春日部共栄は大型左腕・渡部 太陽(3年)が登板し試合が始まる。

 

 石川はオーソドックスな右腕で直球はMAX130km前半ほどだが、これにスライダーと縦変化の球を交ぜコンビネーションで打ち取っていく。一方の渡部も直球はMAXで130km中盤程だが、角度があり、これにチェンジアップを交えられるとなかなか判別が難しそうな投手だ。

 

 初回、春日部共栄・渡部が叡明打線を三者凡退に抑え、まずは無難な立ち上がりを見せると、その裏春日部共栄叡明・石川の立ち上がりを攻め立てる。先頭の田中 翔太郎(3年)が初球を捉えセンター前ヒットを放ち出塁すると、続く髙橋 和希(3年)がきっちりと送り一死二塁とする。3番・田山 駿(3年)も四球を選び一死一、二塁とチャンスを広げるが、続く塩野 閣也(3年)は凡退、さらに5番・渡部の所でキャッチャーがややファンブルする間に各走者が果敢に次の塁を狙うが三塁で刺され先制機を逃す。

 

 対する叡明も2回表、二死から6番・石原が四球を選ぶと、続く中村 康の所でエンドランを仕掛ける。これが見事に決まり二死一、三塁とチャンスを広げるが後続が打ち取られ無得点に終わる。

 

 春日部共栄は3回裏にもこの回先頭の宮崎 裕人(3年)が四球で出塁すると、続く片平 進(2年)がきっきりと送り一死二塁とする。さらに1番・田中がセンター前ヒットを放ち一死一、三塁とチャンスを広げるが後続が倒れ無得点に終わる。

 

 すると叡明も4回表、この回先頭の松浦 怜(3年)が四球を選び出塁すると、続く三部 佑樹(2年)が送り一死二塁、さらに5番・石川がレフト前ヒットを放ち一死一、三塁とチャンスを広げるが、相手の攻守もあり後続が倒れ前の回の春日部共栄と同じような形で無失点に終わる。


春日部共栄vs叡明 | 高校野球ドットコム
エースナンバーを背負う清宮(叡明)

 

 両チームなかなか先制点が奪えず、何か両チームの凌ぎ合いのような展開の中4回裏ついに均衡が破れる。春日部共栄はこの回先頭の塩野がセンター前ヒットを放ち出塁すると、続く渡部も四球を選び無死一、二塁とする。続く髙橋 和の犠打は失敗に終わるが、7番・伴野 司(3年)がセンター前タイムリーを放ちまず1点、さらに続く宮崎が四球を選び一死満塁とチャンスを広げると、二死後1番・田中も押し出しの四球を選び2点目を奪い石川をマウンドから引きずり降ろす。

 その後の満塁のピンチは代わったエースナンバー清宮が抑え事なきを得るが、石川とすれば先制された直後、8番・宮崎に四球を出し満塁としたのが痛恨だった。これにより好打者・田中と勝負せざるを得ない状況を作ってしまい田中にも勝負しきれなかった。

 

一方の叡明もすぐに反撃を開始する。5回表、この回先頭の清宮がセンター前ヒットを放ち出塁すると、続く中がバントの構えで初球を見送り様子を見る。だがその際、一走・清宮の第2リードが大きくなりキャッチャー伴野に刺されてしまう。それでも二死後、1番・坂本 和也(3年)がセンター越えの三塁打を放ち再度チャンスメイクするが、後続が倒れ無得点に終わるなどややチグハグな攻撃となってしまった。

 

それでも叡明は6回表、この回先頭の松浦がライト越えの二塁打を放ち無死二塁とすると、続く三部のレフトフライで三進する好走塁を見せ一死三塁とする。二死後、6番・石原がレフト前タイムリーを放ち1点を返すが、続く中村 康の所でまたしても一走・石原の第二リードを狙われキャッチャー伴野に刺されてしまう。

 一方、5回以降2番手・清宮のスローカーブを交えた緩急自在のピッチングにやや苦しめられていた春日部共栄だが8回裏ついに捉える。この回先頭の伴野がセーフティーバントを決め出塁すると、続く宮崎がきっちりと送り一死二塁とする。ここで9番・片平、1番・田中が連続四死球を選び一死満塁とチャンスを広げると、続く髙橋和がレフト前2点タイムリーを放ち3点差をつけ試合の大勢は決した。

 

 投げては先発・渡部がこの日は再三ピンチを招きながらも7回途中1失点と粘り強く投げ、その後はエース内藤 竜也(3年)がMAX138kmの直球を中心にテンポ良く投げ叡明打線を寄せ付けず4対1で春日部共栄が勝利し県大会へ駒を進めた。


春日部共栄vs叡明 | 高校野球ドットコム
この試合全打席出塁の田中(春日部共栄)

 

 まず叡明だが、この日は石川、清宮の両投手が春日部共栄打線に長打を1本も許さず良く投げた。だが、9四死球はやや多い。もちろん状況によっては四球やむなしという場面もあるが、夏に向けてはカウントが悪くなった時にどう組み立てて抑えるが課題となるか。あとは走塁面であろう。この日も離塁の大きさを狙われ二度キャッチャーに刺されたが、バント、エンドランの状況下での第二リードなど走塁の状況判断は夏へ向けての課題だ。だが、旧チームの経験者がごっそりと抜けながらも昨夏の経験者・坂本、三部、松浦を中心とした打線は、やや小粒だがこの日も長打で春日部共栄を上回るなど悪くない。夏までの伸びしろもあるだけに、今後も注視して行きたい所だ。

 

 一方の春日部共栄だが、最後は叡明を振り切ったが決して褒められた試合内容ではなかった。もちろんエース内藤、左サイドの大木 喬也(3年)に左の本格派渡部、他にも村田(2年)、森田 幸樹(3年)、石川 翔矢(3年)と投手陣は素晴らしい陣容だ。今大会は既に計算の立つ内藤、大木よりも、やや仕上がってきた渡部を1イニングでも長く投げさせることに重きを置いている印象すら受ける。渡部は時折簡単に四球を与えるなど、まだまだ安定感という部分でチームの信頼を完全に掴む所までは至っていないが、今後の成長次第では今大会屈指の左腕になる可能性も秘めている。それだけに彼の仕上がり次第では、益々バリエーションに富んだ投手陣が完成し、場合によっては調子や対戦相手別に投手を使い分けることも可能だ。

 むしろ問題は、まだ春先という点を差し引いても昨秋から最重要課題となっている打線が、一冬を越してもスケールアップできていないことだ。そんな打線の中、際立ったのが、リードオフマンの田中とやはり渡部か。田中は、ミート力がある上にツボに来れば一発もある。結局この試合全打席出塁するなど1番打者として最高の結果であった。一方の渡部はこの日ノーヒットであったが、ほぼ捉えており強烈な打球を飛ばしていた。この日は相手の守備位置も良く正面を突いた打球ばかりであり、おそらく彼の日ではなかったということであろう。彼が投打の中心であることに疑いの余地はない。今後は田中、渡部が目立たなくなるくらい他の選手、特に田山や塩野の奮起に期待したい。

(取材・写真=南 英博

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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1 Comment

  1. 須田和城(ボラギノール)

    2024-06-20 at 3:38 PM

    田中翔太郎、世田谷西リトルシニア卒団
    早大に進まれたのだね

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