試合レポート

昌平vs春日部共栄

2020.09.30

接戦を物にした昌平、秋は初の関東へ!

昌平vs春日部共栄 | 高校野球ドットコム
3回に4番・古賀智己が先制の2ランホームランを放つ

【熱戦の模様をギャラリーでチェック!】

 県営大宮球場の第一試合Bシード・春日部共栄対プロ注目の吉野創士(2年)を擁する昌平、共に打線が好調な両チームの一戦なだけにハイスコアになるかと思われたが、試合はロースコアで進んだ。

 まずスタメンだが、春日部共栄は前の試合と全く同じ布陣、一方の昌平は地区予選初戦の鷲宮戦から比べると2番・川田悠貴(2年)が6番に、6番・後藤壮太(2年)が8番と打順はかなり変わっている。そして吉野創の前を打つ重要な2番には前の試合スタメンを外れていた大熊颯平(2年)が復帰する。

 先発は春日部共栄がエース左腕の髙橋正吾(2年)、一方の昌平は前の試合で好投した背番号18の右サイド吉川優一朗(1年)が先発し試合が始まる。

 この試合どうしても注目が集まったのは吉野創だ。今大会打率が8割近く目下絶好調のプロ注目吉野創に対し春日部共栄・髙橋がどう抑えるのかが鍵となる。

 昌平は1回裏、春日部共栄・高橋の立ち上がりを攻め先頭の寺山太陽(2年)がサードゴロエラーで出塁すると、続く大熊がきっちりと送り一死二塁とし吉野創を迎える。
 この日の高橋は前の山村学園戦とは別人のようにストレート中心の投球となった。しかも右打者のインコースに投げる割合が多い。だが、昌平ベンチもそれは織り込み済みだったようで、黒坂監督は特に右打者にはインコースを狙い、回転で打つ、つまりドアスイングにならず巻き込むようにインサイドアウトの軌道でバットを出す指示を出す。


 吉野創に対してもそれは変わらない。吉野創の第一打席、春日部共栄バッテリーは基本的に内角を攻める。
 ストレートやスライダーを投げ込み最後は外角、打球はフェンス付近で飛んでいくがライトフライに倒れると、後続も倒れ得点を奪えない。

 対する、春日部共栄も、2回表一死から、6番・長谷川亮輔(2年)、7番・髙橋が連続四球を選び一死一、二塁とする。ここで8番・山口叶翔(1年)はヒット性の打球を放つが、セカンド寺山にうまく回り込まれ凡退すると後続も倒れ得点を奪えない。

 春日部共栄は3回表にもこの回先頭の吉村颯(1年)が四球で出塁すると、続く篠崎匠(2年)がきっちりと送り一死二塁とする。だが、3番・増田凛之介(3年)の三遊間寄りのショートゴロに対し、二走・吉村が三塁を狙い結局挟殺されると後続も倒れ無得点に終わる。

 先制したのは昌平であった。
 3回裏、二死から3番・吉野創が2打席目を迎える。春日部共栄・高橋に徹底して内角を突かれるが最終的には投球が足先に当たり死球で出塁する。そして、4番・古賀智己(2年)を迎える。古賀はレフトスタンドへ飛距離は十分、ポールを巻けば文句なしという打球を放つが結果はファール。その後追い込まれフルカウントとなる。

 フルカウントから春日部共栄・髙橋が投じたストレートは「インコースを狙ったんですが失投でした」(髙橋)と逆球となる。古賀はこれを見逃さなかった。

 「インコースは詰まってもいいから後ろにファールを打つ練習をしてきた。ファールの時は体の開きが早かったので修正しセンター方向を意識していました」(古賀)
 打球は左中間の高い[stadium]県営大宮球場[/stadium]のフェンスを越えていき先制2ランとなる。


昌平vs春日部共栄 | 高校野球ドットコム
先発の吉川優一朗(昌平)

 投げては昌平の先発・吉川がインステップ気味の投球フォームから繰り出すナチュラルシュートする直球と90キロほどの変化球で強打の春日部共栄打線を封じる。
 「前半は三振を取りに行くようなピッチングで押して行って、後半は打たせて取るピッチングを意識していました」(吉川)

 春日部共栄はこの試合とにかく内野ゴロが多かった。特に多かったのがセカンドゴロで9個を数える。つまりそれだけ内野陣特にセカンドの寺山が良く守っている。
 試合は2対0のまま終盤戦へと進む。

 春日部共栄の反撃は8回表であった。
 一死から2番・篠崎がセンター前ヒットを放ち出塁すると、続く増田はフルスイングするが、打球はボテボテのピッチャーゴロになる。その間に一走・篠崎は二進し二死二塁で4番・石崎慶太郎(2年)を迎える。石崎は期待に応えセンター前へタイムリーを放ち1点を返す。

 だが、昌平はその裏、前の打席三振を喫したこの回先頭の吉野創が1ボールからの2球目、左中間へ二塁打を放ち出塁すると、続く古賀がきっちりと送り一死三塁とする。ここで、5番・福地基(2年)がレフトへきっちりと犠飛を放ち再び2点差とする。

 最終回はエース田村蓮(2年)がマウンドへ上がりきっちりと3人で抑える。結局昌平が3対1で春日部共栄を下し秋は初となる関東大会出場を決めた。

 まずは春日部共栄だが、エース髙橋は良く投げた。
 「負けた気がしない。緩急を付けられるピッチャーに弱かったということ。ストレート狙いで変化球が来た時に打たされているしボール球を振っている。ボールの見極めっていうのは常日頃からずっと言って来たんですができていない。他にも同じ球を2球見逃すとか、負けているのにバットを振らないとか」と本多監督も首を傾げていたが、吉野創はある程度封じていただけに無念であろう。


 今大会競ったゲームを戦っていないことによる弊害、奇しくも前の試合危惧していた点が当たってしまった形だ。当面はこの日浮かび上がった課題を潰す作業になっていくであろう。だが、エース髙橋は安定しており、打線は増田、石﨑を中心とし特に上位打線は破壊力がある。来春以降は、髙橋以外の投手陣の充実と、打線がより破壊力が増すことを期待したい。

 一方の昌平だが、同じ東部地区のライバル春日部共栄を破っての関東大会出場に感激もひとしおであろう。この日はとにかく好投した吉川のピッチングに尽きるであろう。さらに吉川のピッチングに内野陣が良く守った事も大きい。ここ3試合攻撃が活発であったが、あくまで今年のチームは投手陣を中心とした粘りのチームだ。

 それを考えると、吉川という一つの柱ができたことは今後へ向け明るい材料であろう。打線も地区予選の時とは見違えるぐらいそれぞれが経験を積み一戦一戦伸びを見せ吉野創の前後を打つバッターというのもある程度固まってきた。あとは関東レベルの相手に対し投打にどれだけ対応できるのかそれが関東大会上位進出への鍵だ。初戦で勢いに乗れば波に乗っていけるのではなかろうか。

(取材=南 英博)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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