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暑熱馴化(しょねつじゅんか)の基礎知識【セルフコンディションニングお役立ち情報】

2024.05.21


暑熱馴化のトレーニングとともに適切な水分補給を行おう

夏の大会に向けて、コンディションをより良く保つために欠かせないものに「体を暑さになれさせる」=暑熱馴化※1(しょねつじゅんか)という方法があります。私たちの体は季節とともに外気温に順応していきますが、夏の大会を見据えた暑さ対策として、あらかじめ体を暑さになれさせることも大切です。ちなみに同じ「しょねつじゅんか」でも暑熱「順化」の場合は人工的に誘発された暑熱に対する適応のこと(たとえば環境制御室など、暑さをコントロールできる部屋の中で体を慣れさせる)、暑熱「馴化」の場合は自然環境下の中で練習内容や強度などを変えることによって暑熱に適応させることを指します。

熱中症が起こりやすいのは急激な外気温の上昇

暑い日に熱中症対策を行うことは当然のことですが、まださほど暑さが厳しい時期ではなくも熱中症になることがあります。急激な外気温の上昇などは熱中症のリスクが高まることが知られていますが、暑熱馴化が不十分であるときにも外気温の変化に体がついていかず、熱さによる体調不良を起こすことが考えられます。このようなことを未然に防ぐためにも、気温が高くなり始める5~6月頃から暑熱馴化対策を行うことが望ましいと言えるでしょう。

暑熱馴化のためのトレーニング

暑熱馴化の基本は「汗を多くかいて汗腺の働きをよくし、適切な水分補給を行う」ことです。具体的なトレーニングの方法や、必要な期間などをまとめておきます。

《トレーニング強度・時間・服装》
・最大酸素摂取量の50%程度(となりの人と話しながらできる強度)から75%程度(ややきついと感じる)運動を30~100分実施する(環境条件や体力的な個人差を考慮する)。
・導入期は短い時間から始めて、少しずつ増やしていく
・早朝や夕方など涼しく、体に負担が少ない時間帯から始めることも大切
・汗の蒸発を妨げない服装を選ぶ(ユニフォームよりも通気性の良いウエアで)

《暑熱馴化に必要な期間》
・トレーニングを開始して効果が現れるまでに最低5日間を要する(個人差があるため、およそ1週間から10日を想定する)
・トレーニング期間中は3日間以上間をあけずに行う
・トレーニングを中止すると1週間~1ヶ月でその効果は失われる

運動時の水分補給

暑熱馴化のトレーニングを行っていくと発汗量が増えるため、適切な水分補給が欠かせません。水分補給には0.1~0.2%の食塩と糖質を含んだものが推奨されていますが、あまり糖質が多く含まれていると胃での滞留時間(お腹にたまりやすい)が長くなり、運動に支障をきたす場合があります。運動中のエネルギーの補給という点から考えると、4~8%程度の糖質濃度のものを選ぶようにしましょう。

暑熱馴化は一週間~10日間を目安とし、事前の準備しておくことが大切です。また気温・天候などの外部環境や個人の基礎体力、体調によっても適応能力が違ってきますので、こうしたことを理解した上で無理のない範囲で進めていくようにしましょう。

※)暑熱馴化の「馴」は常用外漢字のため、暑熱順化の表記で統一して説明している場合もあります。

参考書籍)
・スポーツ活動中の熱中症ガイドブック(日本スポーツ協会)

文:西村 典子
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この記事の執筆者: 西村 典子

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