Column

秋・春の苦戦を糧に。逆境も跳ね返して、浦和実の快進撃を夏にみせる

2024.06.30


ノックを受ける浦和実の選手たち

例年安定した成績を残す浦和実。埼玉西武ライオンズ・豆田泰志投手の母校でもある。
2022年、2020年(独自大会)の夏は、ベスト8進出を果たし、この夏も注目が集まる。

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練習時間2時間程度、実戦練習が出来ない限られた環境

浦和実はさいたま市南区に校舎はあるが、グラウンドは自転車で40分ほど離れた場所にある。授業が終わってから、アップも兼ねて自転車でグラウンドに向かい、16時半から練習を開始。

ただ、グラウンドの環境上、打撃練習はほとんどできない。
グラウンドを囲うネットが低かったり、住宅が周りにあったりすることもあり、ゲージ内でのバッティングのみで実戦練習がほとんどできない。他の学校と比較すると決して練習環境は整っているとは言えない。それでも、主将である齊藤雄心は、「それを理解して入学してきています。環境や時間によって練習メニューに限りがあっても、素振りやノックなど練習量を積み、時間を注ぐことが出来ます。
たしかに実戦練習ができないので、練習試合でしか試合感覚は養えません。だから練習試合は大事ですし、普段の練習から試合を想定することは意識しています。ノックなら前に攻める。バッティングなら初球から強く振るといったことを1つずつ意識して、丁寧にちゃんとやるべきことをやりきることが大切だと思います」と語る。

トレーニングに打ち込む浦和実の選手たち

齊藤主将の話す、「やるべきことをやりきる」という姿勢。これは、チームを20年以上率いる辻川正彦監督も選手たちに伝えている浦和実の根幹の部分でもある。
辻川監督が浦和実に就任した当初、部員は12人。現在3学年80人で、控えチームも編成できる大所帯からは想像もつかない規模だったが、就任5年目には県大会でベスト8進出に導き、秋には関東大会の切符を掴んだ。

辻川監督いわく、「当時は厳しく指導しながら、選手を鍛えてきました」と振り返るが、そこには県内のライバルである大宮東上尾のように、「やるべきことをしっかりやる雰囲気を目指したい」という思いがあったから。

さらに選手たちに対して、「学校の看板を背負っている」ことを自覚させるためにも、練習のみならず、学校生活もきちんと過ごさせるようにしたかった。だから、「やるべきことをやりきる」ことを伝えてきた。

大事なことは「やるべきことをやりきる」

齊藤主将に改めて話を聞いても、「学校で挨拶をしたり、勉強したり。そこは野球に繋がると思いますし、実際にプレーにも影響が出ている選手もいます」と話す。

また、2年前の夏の埼玉大会でベスト8入りした先輩たちへの憧れも強い。
「先輩たちの代は、練習時間も早めにスタートしていたり、意識が高かったと思います。真剣に野球に対して話し合いもできていて、切磋琢磨できる関係に感じました」

集中した面持ちで素振りをする浦和実の選手たち

辻川監督も、「甲子園に出場するチャンスをつかむには、常にベスト8以上まで勝ち上がり続けることが必要だと思う」とベスト8には強くこだわっている。

激戦区・埼玉を勝ち抜いて甲子園出場のためにも、辻川監督のなかでは8強まで勝ち上がり、そこからの熾烈な勝負を勝ち抜くことがポイントの1つなのだ。

目の色を変えて集大成の夏へ

しかし、昨秋と今春は苦戦を強いられた。
秋はプロ注目の好投手・冨士大和を擁する大宮東と地区予選代表決定戦で対戦。0対1で惜敗すると、春も注目右腕・宇田川健を擁する川口市立と対戦。4対7で惜敗し、県大会に進むことなく、最後の夏を迎えてしまった。

練習試合が解禁された3月。県外の強豪と練習試合をすると、チームは無敗。地区予選へ順調に準備ができていたと思っていた辻川監督のなかでは、「投手陣をピークに持っていけず、打線も勝負所で打てなかった」と予選を振り返る。

齊藤主将に聞いても、敗因は辻川監督と同意見だ。
「チャンスで1本が出せませんでした。冬場は1日800スイングするなど自信を深めていたんですが、『勝てば県大会』とか『夏まで時間がない』とか『シードを取るためにも落とせない』とプレッシャーを自分たちでかけてしまって、勝負所で1本が出ませんでした。
監督は普段メンタルの大切さを話していたので、試合前に緊張を和らげようとミーティングもしました。それでも勝負所で出せないのは、自信がないからだと思うので、もっと練習しないといけないです」

齊藤雄心主将

齊藤主将は夏に向けて、「練習はもちろん、練習試合など、もっと目の色を変えてしっかりやらないといけないと思いますが、最終的には勝ちたいと思います」と話す。

限られた環境でも出来ることを全力でやり切ること。その姿勢をもって、地道に積み重ねてきたものが浦和実の強さを作っているのだろう。
取材後に辻川監督はこう話してくれた。
「実は今日、夏に向けて真剣にミーティングをやりました。選手たちが本音で話し合ったのですが、こういうことをやってチームを強くなると思います。それだけ真剣に選手たちが夏に向けて考えているっていう証拠だと思うので。だから見ててください。この夏は、やってやりますよ」

辻川監督の声色からは、どこか気持ちの高ぶりを感じた。浦和実が埼玉を沸かせるような戦いぶりを見せてくれることを期待せずにはいられない。

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この記事の執筆者: 田中 裕毅

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