Column

「就職率100%」のエンジニア養成機関から甲子園へ! 近大高専(三重)が貫く“文武両道”

2024.07.10


重阪俊英監督(近大高専)

高等専門学校、略して“高専”——。工業や商船などの分野の実践的・創造的技術者を養成することを目的とした高等教育機関である。中学卒業で受験資格を得られる点は高校と同じだが、5年制だ。専門の技術者が養成されるため、求人倍率は高く、就職率はほぼ100%だという。
野球部がある学校も少なくなく、高専3年の夏までは高校野球の大会に出場している。しかし、これまで高専が甲子園に出場したことはない。

【トーナメント表】夏の三重大会 これまでの結果

全国に58ある高専の中で最も甲子園に近い存在が、三重県名張市にある近大高専だ。
2019年秋には県大会で優勝して、翌春に開催予定だったセンバツの21世紀枠東海地区推薦校に選ばれている。昨秋も県大会で4位になっており、県で上位に顔を出すことも珍しくない。

過去には鬼屋敷 正人捕手(元巨人)や今年のドラフト候補である石伊 雄太捕手(日本生命)などが在籍。定期的に力のある選手を輩出しており、今年も最速155キロ右腕の𠮷留 勇太投手(3年)を擁する。
“高専初の甲子園”を狙う近大高専とはどんなチームなのだろうか。

𠮷留 勇太(近大高専)

エンジニア育成が目的、部員の48人中46人が県外生

午後4時前にグラウンドに到着すると、選手たちがノックを行っていた。学年やコースによって授業の終わる時間が違うため、先に来た選手から各自で自主練習をしているそうだ。16時になると全体練習が開始。アップ、キャッチボール、シートノック、シート打撃、フリー打撃……。普通の高校でも見られるような野球部の練習の光景がそこにはあった。

チームを率いるのは就任6年目の重阪俊英監督。上宮、近畿大でプレーし、大学の同期には藤田一也(現DeNA育成野手コーチ)がいた。大学卒業後は近畿大の職員となり、系列校での勤務を歴任。現在も職員として働きながら野球部の指導にあたっている。

近大高専の野球部の在り方について重阪監督はこう語ってくれた。
「学校はエンジニアの育成が目的です。野球部員も工業に興味を持ち、技術を習得することを目的に進学してくる子が多いですね。まずは勉強に力を入れてもらうことが高専生の本科です。あくまでも野球部は課外活動として、自分に付加価値をつけるためにやっていくのものだと思っています」

部員の割合は県外生が7割。三重県内でも名張市外からの選手は寮に入っており、48人中46人が寮生活を送っている。近畿地区のクラブチームから力のある選手が進んでくることもあるが、一般の高校よりも学業面で求められるハードルが高いため、ハイレベルで文武両道を実践する必要がある。

主将を務める三塁手の倉好 英徳内野手(3年)は学業との両立を図るために「メリハリという部分を意識しています」と話す。どちらも集中して取り組むことで学業、野球の両面で優れた成果を出している。
高専は5年制ということもあり、3年生の多くはそのまま4年生に進級。一部の生徒が近畿大などの4年生大学に編入する。都市環境コースの土木系に所属して、将来は建築関係の仕事を志望している倉好は4年生に進級、将来的にプロ入りを目指す𠮷留は4年制大学の進学をそれぞれ希望している。

倉好 英徳(近大高専・主将)

次のページ:守りから攻撃へ

固定ページ: 1 2

この記事の執筆者: 馬場 遼

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.08.03

侍ジャパンU-23代表が決定! 甲子園のヒーローが続々選出!前川右京と同期・智辯学園左腕、近江の大型捕手ら社会人、大学の大物がそろう

2024.08.03

24年秋季東海高校野球三重大会の組み合わせが決まる!鈴鹿は久居農林と対戦

2024.08.03

明日抽選会!夏の甲子園「絶対に見てみたい」対戦カード4選!

2024.08.04

【甲子園注目選手リスト】“世代No.1”たちがこぞって聖地にやってくる!センバツ準V右腕、“大型スラッガー四天王”、出場校最速は春夏連覇を狙う健大高崎・石垣の153キロ!

2024.08.03

24年愛知の秋季東三河地区高校野球1次リーグ戦の組み合わせが決定!開幕は11日

2024.07.31

甲子園を逃した“超高校級”逸材リスト 超進学校に現れた二刀流、サイクルヒットの名門校捕手、佐々木朗希二世らが聖地を踏めず

2024.07.31

2024年夏の甲子園「地方大会勝ち上がり表付き」全49代表一覧

2024.07.30

【24年夏の甲子園49代表】最多出場は早稲田実業の30度目、初出場は5校、最大ブランクは32年ぶりの大社、公立校は12校、常連も新鋭も多彩な顔ぶれ

2024.07.31

決勝戦完封の世代NO.1右腕、センバツから覚醒した152キロ右腕などこの夏で評価を上げた超高校生投手13選!

2024.07.29

鳴門渦潮が10回サヨナラで徳島V!阿南光の吉岡を打ち崩して7年ぶり甲子園【2024夏の甲子園】

2024.07.08

令和の高校野球の象徴?!SJBで都立江戸川は東東京大会の上位進出を狙う

2024.07.25

まさかの7回コールドで敗戦...滋賀大会6連覇を目指した近江が準決勝で涙【2024夏の甲子園】

2024.07.14

甲子園通算19度出場・享栄が初戦敗退 1点差でまさかの敗戦【2024夏の甲子園】

2024.07.24

享栄、愛工大名電を破った名古屋たちばなの快進撃は準々決勝で終わる...名門・中京大中京に屈する

2024.07.09

下町の実力都立校・紅葉川が“本拠地”で初戦突破!エース8安打を浴びながらも完封勝ち【24年夏・東東京大会】