Column

「考えたことのない発想ばかりで新鮮です」甲子園を知る名将が就任した新生・明星の夏に注目

2024.06.29


選手指導にあたる明星・永田昌弘監督

この夏の西東京大会で注目したい一校が、明星だ。この春から、国士舘で指揮を執っていた永田昌弘氏が監督に就任した。国士舘といえば、2018、2019年の秋季東京都大会で優勝。過去にはセンバツベスト4を2回経験。その永田監督が明星に就任して、初めて迎える夏となる。

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前任校から大きく変わった練習環境

2023年に学校の経営母体である明星学苑が創立100周年を迎えたことを受けて、学校の改革の1つとして永田監督を招へいした。

これまで指導してきた国士舘とは練習環境が大きく異なる点について、永田監督は、
「練習は16時頃から始まって、19時には下校しないといけません。時期によっては20時半まで練習できる時もありますけど、最初はサッカー部とグラウンドを共用します。ですので、全面を使って練習できる時間は限られています」

ノックを打つ明星・永田昌弘監督

確かに取材日は、最初はサッカー部が外野の一部を使っていた。そのため外野ノックは一ヶ所に集めて、永田監督自ら打って選手たちを指導。頃合いを見てバッティング練習に切り替えたが、それでも全員が同じ練習を同時にやるには厳しい。

「主力組が今日はやりましたけど、控え組は明日グラウンドを使います」(永田監督)
と主力組が練習試合で遠征に行く日を利用するなどして工夫を図っている。
指導者もコーチ陣を含めて少数のため、永田監督が汗を流して選手たちの指導にあたる。身振り手振りを交えつつ、厳しい声をかけながら選手たちを鍛えていた。

勝ち方を知る名将が伝える、強者の心と体

主将・大澤健人が、「結構、厳しいです」といいながらも、永田監督の指導に食らいつく。そんな永田監督にはこのような思いがある。
国士舘の時は、最終的にプロで頑張りたい選手など、上のステージも意識した選手たちがいました。その人数に違いがあるので、戦うための気持ちだったり、そのために必要な声が欲しいんですよね。そもそも野球って極端な話、併殺とか補殺とかって記録するようにやるか。それともやられるかくらいのスポーツですから、声が出ていないとか、そこから指導するというのは、国士舘の時よりは物足りないと感じます。伝え方を工夫しながらですが指導していますけど難しいですね」

新生・明星は体に対して細心の注意を払っている

また、永田監督はメンタル以外にも、体作りにも積極的に取り組んできた。
「1年間通じてウエイトトレーニングはやるつもりです。ただ、アップやダウンも大事にしたいと思っています。
ここ(明星)に来た時、すでにケガ人がたくさんいたんですよね。考えてみたら、練習が終わったら、ダウンをやらずに解散してしまっていたんです。技術とフィジカルで勝負するには時間がかかるので、まずはケガをしない体を作らないと大会を勝ち上がれないことをわかってもらうためにも、アップやダウンに時間を費やすようにしています」

取材日は個人アップだったが、「1日練習だったら、アップだけで50分くらい時間を使っています」永田監督はいう。かなりの徹底ぶりなのは、使っている時間だけでも伝わってくる。

大澤主将も、「時間をかけてアップをするようになり、腰のケガが気になることが減りました」と身をもって永田監督の意図を感じているようだった。

目指すはベスト8

また、足を使った野球を明星で取り入れている。
「ホームランがどんどん出るような打線ではありませんので、ピッチャーを中心に守備を大事にする野球しかできません。そのなかで、少ないヒットで点数を取る。ランナーが塁上にいれば、1つでも先に進める。当たり前のことかもしれませんが、『そういうチームを目指そう』と話しています」(永田監督)

明星の練習模様

永田監督の熱い指導に内野手の大澤主将は、「聞いたこと、考えたことのない発想ばかりで新鮮です」と話す。
「永田監督からは『エラーを恐れるな』とはよく言ってもらっています。そのうえで感覚的には追いこすというのが近いかもしれないですが、とにかく細かく足を使って、早く正面で捕球できるようにしています。そうすれば早く捕球すればスローイングに使える時間も増えます。
カットプレーも今までと全然違いますね。最近は外野に投げさせるために、カットマンを1人にしていますが、その人数を何でもかんでも2人にしないようにしたり、体内時間を計算して投げる場所を考えたりしています」

春の都大会は初戦・都立雪谷に3対13と悔しい敗戦となった。永田監督のなかでも投手陣をキチンと見切れなかったことを反省していたが、大澤主将も「投手陣が崩れて、野手がカバーできずに完全に後手に回ってしまった」と振り返る。

明星主将・大澤健人

チームとして完成度が低い状態で春が終わってしまったが、夏は違う。しっかりとゲームを積んで準備をしてきた。「無駄な時間を作らずに、日々の練習を大事にしてきた」と自信を持っている。

そのうえで、「ベスト8に行って、神宮球場でプレーできるように、団結してチーム力で戦いたい」と意気込みを残した。

過去3年を振り返ると、2023年、2022年は4回戦、そして2021年は5回戦と、あと一歩ベスト8には届いていない。永田率いる新星・明星ナインの戦いに注目だ。

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この記事の執筆者: 田中 裕毅

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