Interview

最下位、優勝、チーム崩壊……波乱万丈のプロ野球人生を送った阪神V戦士「野球指導者となって伝えたいこと」

2024.06.28


平下 晃司氏

「星野仙一さん、野村克也さん、日南学園の小川茂仁監督、中学の有田勝則先生……。これまで僕を育ててくれた多くの指導者から学んだことをいま、子供たちに伝えています。
有田先生は僕を褒めてやる気にさせてくれました。高校では絶対的な練習量の大事さを知りました。野村克也さんからは緻密な野球観の土台となる日常生活の大切さ、星野仙一さんからは圧倒的な人望、多くのコーチの方々からはずっと練習に付き合ってくれる優しさを学びました」
元プロ野球選手・平下晃司氏(46)は言う。

現在、平下氏は野球指導者として、東大阪市にある「ブリスフィールド東大阪 スポーツアカデミー」のベースボールスクールのヘッドコーチを、「東大阪長田ボーイズ」の監督を務めている。

豪快な“いてまえ打線”を誇った近鉄、F1セブンの一人として注目され、リーグ優勝も経験した阪神、バレンタイン政権下のロッテ、暗黒時代真っ只中のオリックス……。波乱万丈なプロ野球人生を経て、今、平下氏はどんな思いで選手を育てているのか。

<前回を読む:「喧嘩最強」を目指した中学時代……元阪神外野手が再び野球の道を目指したのは「心奮い立つ恩師の言葉」>

「厳しいだけ」「優しいだけ」ではダメ

今のスクールが開設されてから、今年で8年目。生徒は今では160人、多い時には200人にもなりました。
やはり昨年WBCで日本が優勝してから「野球をやりたい」という子がかなり増えましたね。大谷(翔平)くんに憧れる子が本当に多いんです。

うちには小学校低学年、中学生向けのコースがあります。小学校低学年には野球の楽しさを教えるのが目的です。
中学生には高校で活躍することを目標に掲げる選手がいるため、彼らにはとにかく厳しく練習させています。1日500回以上の素振りをさせるとか、とにかく量をこなしてもらいます。量の多さに泣き出す子もいます。でも、量をこなして身体が反応して覚えるまでにならないといけません。

優しいだけの指導でうまくなった選手はいません。一方で怖いだけの指導では選手は萎縮してしまい、言われたことをこなすだけになってしまいます。
私がかかわった指導者の方々は厳しい人が多かったですが、しっかりと選手を見てアドバイスはしてくれましたし、選手がやりたい練習に、最後まで付き合ってくれる方々でした。それを大事にしています。

「技術」ではなく「練習の仕方」を教える

私が教えるのは技術というより「練習の仕方」です。なぜなら「絶対にうまくなる技術」というのはないからです。
人によって能力を発揮できる打撃フォーム、感覚は全然違います。選手には「良い感覚があったときは教えて」と伝えています。そして、なぜそれができるのか、動きも解説して覚えてもらっています。

練習の仕方を教える理由は「良い形を染み込ませるためのドリル」、そして「悪い形を修正できるドリル」を持っているべきだからです。プロで活躍した選手は、不調を修正できる練習法が分かっている人ばかりでした。練習の仕方さえわかれば、スクールを卒業しても対応できますから。技術だけになってしまうと、スクールにいる期間しかできない。

次のページ:未経験の分野は教えない、“本物”に聞く

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この記事の執筆者: 河嶋 宗一

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